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2、勝負のクリスマス!
第27話 残る問題は――
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というわけで、どったんばったんの営業所閉鎖騒動はこれにて一件落着――、ではあるんだけど、その後のお話をもうちょっとだけ。
あの翌日、三尋木君の報告書が戻って来たんだけど、やっぱり、というか、売り上げはとんでもないことになってた。何せ、裏のプレゼントをしっかり渡せただけではなく、使用道具は『サンタクロース七つ道具』のみ。後はトナカイ達のサポートだから。それで、そもそもその『売り上げ』って何なの? とアドじいに突っ込んで聞いてみたところ――、
「これはね、このプレゼントをもらったことで変化した未来から、その人の人生がよりよくなりました、っていうことで、その『よくなった分』の何パーセントかをもらってるんだよ」
とのことだった。
えっ、つまりどういうこと?
「ええと、こないだの理玖君を例にあげてお話するとね」
「うん」
「理玖君はプレゼントをもらう前は、普通の会社員になる予定だったんだ」
「うん」
「だけど、あの時、積み木をきれいに積めて、それを大好きなママにたくさん褒めてもらったことで、自信をつけたんだね。小さい頃のそういう自信ってものすごく大事でね、理玖君はその後も失敗を恐れないでどんどんいろんなことにチャレンジする青年に育つんだ」
「へぇ!」
そういえばあの時、トナカイ達が「そういうのが大事」とかなんとか言ってたっけ。
「それでね、ものすごく有名な建築家さんになって、素敵なパートナーと出会って結婚するんだ。それでもっともっと頑張るぞーってなって、いくつも素晴らしい建築物を作って、社会に貢献するんだよ。それで、それは『あの時のプレゼントがきっかけでいい方向に変わった未来』だから、その分をお金に換算して、ウッキ達に支払われるんだ」
「そうなんだ。それじゃあ、三尋木君もそうなの? 私達のプレゼントで、未来がもっとよくなったってこと?」
「そういうこと。もしかしたら、冬休み明けの駿介君もちょっと違うかもね。前より優しくなってるかも」
「そういうことだったんだ」
サンタの――私達の働きで、関わった人の未来を、ちょっとずついい方に変えていける。そう考えると、ほんとに素敵な仕事だ。
「私、やっぱりサンタやる。絶対、この仕事やるよ」
「うふふ、ノンノがやる気になってくれるとウッキも嬉しいよ。でも、焦らずね」
とりあえず、一つ目のミッションはクリア、ってことでいいのかな。閉所ではなかったわけだし。それに、アドじいにお休みもプレゼントできるし。あとは、他の営業所に行っちゃった五人のトナカイ達を――
「ああそうそう、フミ。お正月が明けたらあの子達戻ってくるから、よろしくね」
「えぇっ!?」
はいはい、なんて軽い返事をしていたフミが、いままでに聞いたこともないような声を上げて、しゃかしゃかとこちらに駆け寄ってきた。それにつられてレラとワッカも慌てて集まってくる。
「も、戻って?! えっ!?」
「あいつら戻ってくんのか、おやっさん!」
「大丈夫なんですか?! 五人も一気に戻って来ても!?」
必死の形相で詰め寄られ、さすがのアドじいも「えっ、何何?!」と困惑している。
「だって、八人もトナカイを抱えんの無理だから他にやったんじゃねぇのかよ!」
「えぇーっ!? そうなのぉ?!」
「そうなのぉ?! って何でアディ様がそんな初耳みたいな反応なんですかぁっ!?」
「そもそも他の営業所に行けって言ったのアードルフ様ですよね?!」
「そ、そうだけど。だって、他の営業所が急にトナカイが足りなくなっちゃったから、本社から補充されるまでの間、五人ヘルプでよこして、って……」
ほら、ここが一番トナカイの数、多いから、とアドじいがもにょもにょ言う。
「はぁぁぁぁぁぁっ?!」
三人のトナカイと私の声はしっかりとそろった。そのボリュームと圧で、大きな大きなアドじいの身体がのけ反る。
「え、ええええ? 何、ノンノまで」
「ちょっともう、早く言ってよ、アドじい!」
「紛らわしいんだよ、色々と!」
「普段ぽやぽやしてるくせに、変なとこ演技派なのやめてもらえます!?」
「私達みんな、ここの売り上げが悪いせいで他の営業所に売られたんだと思って! 思ってぇぇぇ!」
「えぇぇぇ――?! ウッキ、そんなことしないよぉ! みんなここの大事な仲間だよぉ?! それにここ、そんなに危なくないよ! 大丈夫だよぉ!」
結局のところ、閉鎖もちび達のことも、ぜーんぶトナカイ達の早とちりだった。だからきっと、私が来ても来なくても、結果は変わらなかったと思う。
だけど、この営業所で得た経験は、確実に私を変えた。
週一サンタは毎日大変。
だけど、ただ大変なだけじゃない。
その時に出会えるたった一人の未来をもっともっといいものに変える、素敵な仕事なのだ。
神居岩暖乃、立派なサンタになるため、これからも頑張ります!
あの翌日、三尋木君の報告書が戻って来たんだけど、やっぱり、というか、売り上げはとんでもないことになってた。何せ、裏のプレゼントをしっかり渡せただけではなく、使用道具は『サンタクロース七つ道具』のみ。後はトナカイ達のサポートだから。それで、そもそもその『売り上げ』って何なの? とアドじいに突っ込んで聞いてみたところ――、
「これはね、このプレゼントをもらったことで変化した未来から、その人の人生がよりよくなりました、っていうことで、その『よくなった分』の何パーセントかをもらってるんだよ」
とのことだった。
えっ、つまりどういうこと?
「ええと、こないだの理玖君を例にあげてお話するとね」
「うん」
「理玖君はプレゼントをもらう前は、普通の会社員になる予定だったんだ」
「うん」
「だけど、あの時、積み木をきれいに積めて、それを大好きなママにたくさん褒めてもらったことで、自信をつけたんだね。小さい頃のそういう自信ってものすごく大事でね、理玖君はその後も失敗を恐れないでどんどんいろんなことにチャレンジする青年に育つんだ」
「へぇ!」
そういえばあの時、トナカイ達が「そういうのが大事」とかなんとか言ってたっけ。
「それでね、ものすごく有名な建築家さんになって、素敵なパートナーと出会って結婚するんだ。それでもっともっと頑張るぞーってなって、いくつも素晴らしい建築物を作って、社会に貢献するんだよ。それで、それは『あの時のプレゼントがきっかけでいい方向に変わった未来』だから、その分をお金に換算して、ウッキ達に支払われるんだ」
「そうなんだ。それじゃあ、三尋木君もそうなの? 私達のプレゼントで、未来がもっとよくなったってこと?」
「そういうこと。もしかしたら、冬休み明けの駿介君もちょっと違うかもね。前より優しくなってるかも」
「そういうことだったんだ」
サンタの――私達の働きで、関わった人の未来を、ちょっとずついい方に変えていける。そう考えると、ほんとに素敵な仕事だ。
「私、やっぱりサンタやる。絶対、この仕事やるよ」
「うふふ、ノンノがやる気になってくれるとウッキも嬉しいよ。でも、焦らずね」
とりあえず、一つ目のミッションはクリア、ってことでいいのかな。閉所ではなかったわけだし。それに、アドじいにお休みもプレゼントできるし。あとは、他の営業所に行っちゃった五人のトナカイ達を――
「ああそうそう、フミ。お正月が明けたらあの子達戻ってくるから、よろしくね」
「えぇっ!?」
はいはい、なんて軽い返事をしていたフミが、いままでに聞いたこともないような声を上げて、しゃかしゃかとこちらに駆け寄ってきた。それにつられてレラとワッカも慌てて集まってくる。
「も、戻って?! えっ!?」
「あいつら戻ってくんのか、おやっさん!」
「大丈夫なんですか?! 五人も一気に戻って来ても!?」
必死の形相で詰め寄られ、さすがのアドじいも「えっ、何何?!」と困惑している。
「だって、八人もトナカイを抱えんの無理だから他にやったんじゃねぇのかよ!」
「えぇーっ!? そうなのぉ?!」
「そうなのぉ?! って何でアディ様がそんな初耳みたいな反応なんですかぁっ!?」
「そもそも他の営業所に行けって言ったのアードルフ様ですよね?!」
「そ、そうだけど。だって、他の営業所が急にトナカイが足りなくなっちゃったから、本社から補充されるまでの間、五人ヘルプでよこして、って……」
ほら、ここが一番トナカイの数、多いから、とアドじいがもにょもにょ言う。
「はぁぁぁぁぁぁっ?!」
三人のトナカイと私の声はしっかりとそろった。そのボリュームと圧で、大きな大きなアドじいの身体がのけ反る。
「え、ええええ? 何、ノンノまで」
「ちょっともう、早く言ってよ、アドじい!」
「紛らわしいんだよ、色々と!」
「普段ぽやぽやしてるくせに、変なとこ演技派なのやめてもらえます!?」
「私達みんな、ここの売り上げが悪いせいで他の営業所に売られたんだと思って! 思ってぇぇぇ!」
「えぇぇぇ――?! ウッキ、そんなことしないよぉ! みんなここの大事な仲間だよぉ?! それにここ、そんなに危なくないよ! 大丈夫だよぉ!」
結局のところ、閉鎖もちび達のことも、ぜーんぶトナカイ達の早とちりだった。だからきっと、私が来ても来なくても、結果は変わらなかったと思う。
だけど、この営業所で得た経験は、確実に私を変えた。
週一サンタは毎日大変。
だけど、ただ大変なだけじゃない。
その時に出会えるたった一人の未来をもっともっといいものに変える、素敵な仕事なのだ。
神居岩暖乃、立派なサンタになるため、これからも頑張ります!
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