放浪戦記

アブナイ羊

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プロローグ

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地球とほとんど同じ種類の原子で構成された星があった。唯一それにあって地球にない原子は「魔素」。希ガスだ。太陽から光や熱と共に魔素が放出され、その星、カイヴに降り注がれた。

カイヴは生命を育み、カイヴに育まれた生命の一部は魔素を無理矢理イオン化させる際の微量なエネルギーを使って魔術を使うなど地球とは異なる成長をした。それは魔物と呼ばれる存在になる。
魔物の一部が希ガスであるはずの魔素を偶然、体内で無理矢理結合させ、安定して保存できるように進化した。その内の猿の魔物が後に人間となった。

話を戻そう。魔素が二つ結合したものは魔力と呼ばれる。無理矢理結合させられた魔力は魔素に変わるときに莫大なエネルギーを産み出し、さらにその分離した魔素がイオン化するエネルギーをもを使った、魔術とは比べ物にならない強力な魔術ーー魔法ーーを行使できるようになった。

望めばどんなことでもできる世界が実現した。………魔素がカイヴから枯渇するまでの間は。人類が成長するにつれ、ひとつの大きな問題が生じた。イオン化した魔素は現存するどの分子よりも圧倒的に軽く、カイヴの大気圏外に出てしまうのだ。そうするとどうなるかは明白だ。カイヴの魔素枯渇だ。

人類は考えた。考えに考えた末、魔素の浸透率が異常に高い種類の木に目をつけた。遺伝子の改造をし、そのうちの一本が木の先端が大気圏を越えても、直径が10000kmを越えても、尚成長し続けるようになった。そして多少のムラはあれどカイヴのほぼ全域にその根を伸ばした。
根は魔素イオンを吸収し、主に葉、一部は根から還元することで魔素枯渇を解消した。
その木は世界樹とよばれ、特に世界樹の辺りは魔素で溢れていた。

だが、一難去ってまた一難とはこのことか。魔素枯渇問題が解決したそのわずか数年後、世界中の天体望遠鏡や魔法のレーダーをかいくぐってきた巨大隕石が世界樹の真裏に衝突した。クレーターは世界樹の根をも吹き飛ばし、その大きさはカイヴの表面積の5%にもなった。
さて、その事件に慌てた人類は、津波が到達する前に、巻き上げられた粉塵が空を覆い尽くして太陽を隠す前に、カイヴ中の魔法使いを集めて二日は持つバリアでカイヴの世界樹側半分を覆った。

二日の猶予で、魔法使いの掘った地下深くに逃げ込んだ人間と、巻き上げられた粉塵も届かない世界樹の上に逃げた人間に別れた。
地下深くに逃げ込んだ人間は身体が小さく太くなり、ずんぐりとした身体になった。さらに、暗い中で生活するために感覚がよくなった。それは後に、ドワーフと呼ばれた。

世界樹の上に逃げた人間は肉をほとんど食べなくなり、脂肪がほとんどなくなって女性的な特徴も薄まった。そして樹上という不安定な環境ですごすため身体能力が大幅に向上し、薄い空気に耐えられるようになった。また、空気が薄いために音が伝わりにくく、集音性を高めるために耳が伸びた。それは後に、エルフと呼ばれた。

長い長い年月が過ぎ、エルフとドワーフがお互いのことを忘れた頃。粉塵が晴れ、語り継がれてきた地上というものに生命が進出し始めた。

また長い年月が過ぎ、世界樹のある北は魔素の豊富な肥沃な土地。クレーターのある南側は根がないために魔素のほとんどない過酷な土地となっていた。
人間たちは様々な国を作り、魔物や他国と覇権争いを繰り広げた。

そしてこれは、とある国の首都の貧民街に捨てられた一人の女の子の物語。それはまた次の話で。
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