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幼少期 盗賊団時代
盗賊団
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物心ついたときには、すでに貧民街の少年盗賊団の一員だった。15年前に盗賊団を立ち上げたときから2代目のリーダーである、18歳のケルヴィンが、死んだ妹に似てるということでタオル一枚で捨てられていたところを拾ってくれたのだ。
…と言っても、死んだ妹に似てるというのは方便だろう。わたしは白髪で、エルフ側の血が濃いのか耳が若干長い。そして同年代で金髪の純ドワーフの女の子も同じ理由で拾われているからだ。血が半々のヒューマンも、魔物の血が混じったドラゴニュートや鬼人だって、死んだ弟妹に似てると言われて拾われている。
要するに、捨てられた子供はみんな拾ってしまう性分なのだ。
「今日も仕事いくぞー」
根城にしている廃倉庫の奥から副リーダーがやる気のない声をあげる。
「おい、もっと元気出せよ!ほら笑って!あっはははははははは!!」
副リーダーの肩をつかみながらケルヴィンの空回りする元気にみんなの心がちょっとだけ明るくなった。いや、副リーダーだけは煩わしいというような表情をしていたが。
入団して既に10年が経っている。もう10歳になる(ということになっている)わたしは新入りを脱した。
団では、7~9歳は下の子の世話をしつつ団の雑用係り。10歳からは武器を持ち、一週間に一度程度の仕事に駆り出されるようになる。
仕事とは、盗賊稼業だ。街の外壁の外に作られた貧民街からは街道に出やすく、街道で待ち伏せをして馬車や旅人を襲って金や物資を略奪する。2回に1回は怪我人が出るし、たまには死人も出る。でも、リーダーが言うにはこれしかできることがない…らしい。
街の人は真面目に働いて金を稼げと言うが、そもそも貧民街の住人を雇ってくれるところなどほとんどないし、赤ちゃんのころから育ててもらった恩義が団にある。そんなことはできない。
「さて?えーと、今日からはラヴィとアルトが仕事に参加する!」
だいたい10歳になった私ラヴィと、鬼人の男の子のアルトが今日から仕事に入ると言うことは、前もって知らされていた。そのときからわたしたちにちょっとボロい抜き身の短剣が渡されていた。早く武器に慣れるようにと常に携帯していることも義務づけられた。
最初は慣れなくて、腰に差しているだけなのに鞘がないせいで手を切ることもよくあった。
けど、今では短剣を使ってなんでもできる自信がある。…まだ自分以外の人を傷つけたことはないけど。
「今日は仕事場マルサンだぞー。各自正午までにくること」
「ラヴィとアルトは僕についてきてくれ!いろいろ教えることがあるからね!」
名指しされてなんとも言えない気持ちになっていると、アルトが手招きをしているのに気が付いた。
「なに?」
「俺さ、カインさんから聞いたんだけどさ、仕事のときに2人か3人で一緒にいたら、あんまり怪我しなくて済むんだってさ!だから、俺と一緒に仕事しようぜ!」
断られるとは微塵も思っていない目でみてくる。なんなら鬼人の馬鹿力でわたしの手首を握られているから、「わかった」以外のことを言えない圧力を感じてすらいる。
まぁ、断る理由もないから頷くんだけど。
アルトはパアッと顔をほころばせて、わたしの手を握ったままリーダーの方へ走っていった。
「ちょっと!痛い!痛いよ離して!」
「ラヴィがおせーんだよ」
「あっははははは!!元気がいいな2人とも!」
ケルヴィンが二人の頭をポンポンと叩いた。二人は下を向いていたし、他の団員もケルヴィンには目を向けていなかったので気付いた者はいなかったが、この時のケルヴィンはとても悲しそうな顔をしていた。
…と言っても、死んだ妹に似てるというのは方便だろう。わたしは白髪で、エルフ側の血が濃いのか耳が若干長い。そして同年代で金髪の純ドワーフの女の子も同じ理由で拾われているからだ。血が半々のヒューマンも、魔物の血が混じったドラゴニュートや鬼人だって、死んだ弟妹に似てると言われて拾われている。
要するに、捨てられた子供はみんな拾ってしまう性分なのだ。
「今日も仕事いくぞー」
根城にしている廃倉庫の奥から副リーダーがやる気のない声をあげる。
「おい、もっと元気出せよ!ほら笑って!あっはははははははは!!」
副リーダーの肩をつかみながらケルヴィンの空回りする元気にみんなの心がちょっとだけ明るくなった。いや、副リーダーだけは煩わしいというような表情をしていたが。
入団して既に10年が経っている。もう10歳になる(ということになっている)わたしは新入りを脱した。
団では、7~9歳は下の子の世話をしつつ団の雑用係り。10歳からは武器を持ち、一週間に一度程度の仕事に駆り出されるようになる。
仕事とは、盗賊稼業だ。街の外壁の外に作られた貧民街からは街道に出やすく、街道で待ち伏せをして馬車や旅人を襲って金や物資を略奪する。2回に1回は怪我人が出るし、たまには死人も出る。でも、リーダーが言うにはこれしかできることがない…らしい。
街の人は真面目に働いて金を稼げと言うが、そもそも貧民街の住人を雇ってくれるところなどほとんどないし、赤ちゃんのころから育ててもらった恩義が団にある。そんなことはできない。
「さて?えーと、今日からはラヴィとアルトが仕事に参加する!」
だいたい10歳になった私ラヴィと、鬼人の男の子のアルトが今日から仕事に入ると言うことは、前もって知らされていた。そのときからわたしたちにちょっとボロい抜き身の短剣が渡されていた。早く武器に慣れるようにと常に携帯していることも義務づけられた。
最初は慣れなくて、腰に差しているだけなのに鞘がないせいで手を切ることもよくあった。
けど、今では短剣を使ってなんでもできる自信がある。…まだ自分以外の人を傷つけたことはないけど。
「今日は仕事場マルサンだぞー。各自正午までにくること」
「ラヴィとアルトは僕についてきてくれ!いろいろ教えることがあるからね!」
名指しされてなんとも言えない気持ちになっていると、アルトが手招きをしているのに気が付いた。
「なに?」
「俺さ、カインさんから聞いたんだけどさ、仕事のときに2人か3人で一緒にいたら、あんまり怪我しなくて済むんだってさ!だから、俺と一緒に仕事しようぜ!」
断られるとは微塵も思っていない目でみてくる。なんなら鬼人の馬鹿力でわたしの手首を握られているから、「わかった」以外のことを言えない圧力を感じてすらいる。
まぁ、断る理由もないから頷くんだけど。
アルトはパアッと顔をほころばせて、わたしの手を握ったままリーダーの方へ走っていった。
「ちょっと!痛い!痛いよ離して!」
「ラヴィがおせーんだよ」
「あっははははは!!元気がいいな2人とも!」
ケルヴィンが二人の頭をポンポンと叩いた。二人は下を向いていたし、他の団員もケルヴィンには目を向けていなかったので気付いた者はいなかったが、この時のケルヴィンはとても悲しそうな顔をしていた。
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