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本編
しおりを挟む昔むかし、とある国の王子が美しい平民の娘と出会いお互いひと目で恋に落ち、身分の差を乗り越えて結ばれる。
「……実に下らないな。」
バサッと今、平民の若者たちの間で流行っている恋愛小説を乱暴に投げ捨てた。
「平民の女は恋なんかしていない。はじめから王子の権力に目が眩んだんだよ。」
そう言うのはこの国の第3王子にして王位継承権1位のシャルルだ。
艶のある金の髪に憂いをおびた黒水晶の瞳。母である皇妃譲りの美しい容姿にいつも不敵な笑みを浮かべるため、「麗しの王子」と囁かれ貴族令嬢達からの人気が高い。
「貴族の男は平民の女に真実の愛を求め、平民の女は貴族の男に「正妻」と「妃」と言う富と権力を求める。ならば互いの利害を一致させるシステムを作ればいいのではないか。」
「シャルル殿下・・・?」
側近は自分の主が何を言いたいのか検討もつかない。
「百合の園を知っているか?」
百合の園。それは30年前、隣国ロムルニアを支配していたコンシディーン家が貴族令嬢達を淑女教育という名目で王族の「妻」を養成するために作り上げた後宮だった。
その後宮は30年前の戦争でコンシディーン家滅亡と同時に瓦解した。
「私は百合の園を復活させる。」
「・・・本気ですか。」
「本気だよ。ただし、ロムルニアのように貴族の令嬢を対象ではない…平民の・・・身寄りのない10代ぐらいの女を集める。女たちには貴族のマナーや作法、教養を学んでもらう。そして淑女として恥ずかしくない教養を身に着けた暁には国王の「妻」として私の子供を産んでもらう。」
「・・・殿下の子を産んだ者を王妃にするおつもりですか。」
「いや、王妃は高位貴族の中から選ぶさ。百合の園の女たちは私の興が覚めれば、私の養女として他の貴族に下賜させる・・・・・・叔父上や兄上達も最初からこうしておけば廃嫡や幽閉にあわなくてもよかったものを。」
「殿下・・・」
30年前、シャルルの叔父にあたる王弟は隣国に暮らす平民の娘に一方的な好意を寄せ、彼女を手に入れるためだけに戦争を仕掛けながらもその娘を手に入れることが出来ず、大罪人として暗い牢獄の中で死を遂げた。
シャルルの異母兄である第1王子は妃がいるにも関わらず、平民の娘に傾倒しその娘を妻にするために父である国王や教会の許可なく勝手に離婚した。これを知り王は激怒し、第1王子を廃嫡し離宮に幽閉した。さらに同母兄にあたる第2王子は数年前に友好国の王女に乱暴しようとしたとして問題視され王位継承権を剥奪し、辺境の地に飛ばされた。そのため、本来なら継承権の低いシャルルが第3王子にも関わらず、王位継承権第1位になったのである。
見目麗しい顔を歪めながら嗤う主に側近たちは身を震わせ、誰もシャルルを諫めることも止める術を持つものはいなかった。
「今は使われていない離宮がある。そこを改装したので、そこに教会や孤児院にいる孤児の女達を集めてこい。わかったな。」
「・・・はっ!!」
そうして、シャルルの命を受けた騎士や兵士達は王都付近にある教会や孤児院から女の孤児達を離宮に連れてきた。しかし・・・
騎士や兵士たちの強引な孤児の連れ去りは日に日にエスカレートしていき、教会関係者や孤児院の職員は抵抗し死傷者が出る事態になってしまった。さらには寄宿学校に通う女学生にまで手を伸ばし始め事態は悪化していく一方だ。おまけに捕らえた孤児が1人逃げ出してしまい、現在捜索中だ。
ガシャンと乱暴に投げ捨てたワイングラスがバラバラと散らばる。
「まだ見つからないのか!!」
消えた孤児の足取りが掴めず、シャルルは焦っていた。
(………クソッ、まだ子供だが少し見目が良かったので、遊んでやろうと思ったのに、計画が台無しではないか。)
「シャルル殿下!!」
バタンと乱暴に扉が開く音とともに側近の声が響いた。
「何だ?こんなときに……」
振り返ると、白い鎧を纏った集団がゾロゾロと部屋に入ってきた。
--王室近衛騎士団!! 一体何のようだ。
やがてシャルルの目の前に団長である壮年の男性が近づいてきた。
「シャルル王子、いや・・・シャルル。貴様を孤児の誘拐及び人身売買の主犯格として逮捕する。」
そう告げると、 ガチャっと冷たい鉄の塊がシャルルの腕にかけられる。
「・・・誘拐?人身売買だと、ふざけるな!こんなことをしていいと思っているのか。父上が黙っていない「その国王陛下からの命です」・・・なんだと?嘘だ。父上がそんなこと言うはずがない。私は父上の子供だぞ、私がいなくなったら誰が父上の跡を、この国の王になるんだ。」
「それはご安心を、幽閉された第1王子の御子息を御自身の養子として迎え入れ、王位継承権をあたえるつもりです。」
騎士隊長は顎で連れていけと指示すると、両脇にいた騎士はシャルルを乱暴に引きずっていく。
「嘘だあぁぁぁ~!!」
この後、シャルルが監獄島と呼ばれる罪人専用の牢獄に入れられ、「こんな筈ではなかった」と今の自分の現状を受け入れられず気が触れ、数年後獄中で心臓発作を起こし亡くなるが、王族関係者はシャルルに関わるもの全てを切り捨てた。
後の世で、シャルルは孤児狩りを行った極悪非道の王子と歴史書に記される。
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