その結婚、ちょっと待ったぁぁ~!!

keima

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案件その五 未亡人? ルース・ブーゲンビリア(?) 

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カラーン カラーン
 晴れ渡る空の下、エメラルドグリーンの綺麗な海が広がるサン・ソフィ島で今まさに結婚式が行われようとしていた。真っ白なタキシードに身を包んだ肩まで長い白銀の髪をひとくくりに結び、鷹の様に鋭い黒い瞳をもつ、長身の美男子である新郎はこのサン・ソフィ島の領主で実業家のマカイオス・サマラス。 
 そして、ピンクのウエディングドレスに身を包んだ金色の髪に氷のように無表情な新婦はルース・ブーゲンビリア。
年の離れた夫を亡くした未亡人はマカイオスに見初められ、今日のこの日を迎えることになったのだ。
「新郎マカイオス・サマラス。健やかなるときも病める時も、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いま……「「ちょっとまったぁぁぁ~~~~!!!!」」

  バーンと教会の扉が開き、そこに黒いローブーー司法を司る第3者意見司法機関の制服を着た白髪の男と小柄なオレンジ頭の少女が現れた。 
「私達は第3者意見司法機関サードセクションの者です。この結婚に異議を申します。なぜなら・・・・・・・新郎は大罪を犯しているからです!!」
白髪の男ーーレオン・クォーツがそう叫ぶと、オレンジ色の髪の少女ーーロゼット・ミュラーは懐から1枚の紙を取り出した。 
「マカイオス・サマラス氏。あなたには第3者意見司法機関の元司法書士官ジョージ・ブーゲンビリア氏の殺人容疑およびその親族に対し脅迫及び誘拐の容疑が掛かってます。」
「なんだって?」 「殺人に詐欺って・・・しかも脅迫?」 「嘘だろ?」
 ザワザワと周囲は突然の訪問者の登場と発言に動揺を隠せずにいる。
 「出鱈目だ!!私が大罪だと?巫山戯たことを言うな。そもそもブーゲンビリア氏は病死した「何で病死だって知っているんですか?」……えっ?」 

「確かにブーゲンビリア氏の直接の死因は急性心不全です。でも、何でそれを貴方は知っているんですか?」
「そっ、それは………」
レオンの指摘に怒りで真っ赤に染まっていたマカイオスの顔色が段々と青ざめていく。
「あと、ブーゲンビリア氏の同居している孫娘のルースさんや近くに住む住民がブーゲンビリア氏の家から出て行く貴方の姿を目撃しています。」

 「なっ………!?」

「おまけに貴方、ブーゲンビリア氏の葬儀のあと、さんを脅してましたよね。ルースさんが株主権のことを知らないと告げたら、『嘘をつくな。株主権を渡さなければお前を訴えてやる。それがイヤなら自分と結婚しろ』と迫ったそうですね。」

「えっ?脅した?」「なぁ、今ルースって言っていたよな……」「どういう事?」と再び招待客はざわざわと騒ぎだした。
「脅してなんかいない!!私は、ブーゲンビリア氏の持つウチの会社の株主権を売却してほしいと「それはオカシイですね。」だっ、誰だ貴様!?」
 マカイオスの言葉を退けるように赤い髪の男が割って入ってきた。 
「はじめまして。第3者意見司法機関司法書士官のハル・サトクリフです。貴方はブーゲンビリア氏が自社の株主権を持っていると証言しましたが、貴方の会社の株主権の所有者記録にはブーゲンビリア氏の名前は載っ ていませんでした。最も我が国の法律では国家公務員は株取引などの投資は禁止されているので、ブーゲンビリア氏が貴方の会社の株主権を持っているというその主張はありえないんです。」
ハルがそう言い終えると、続けてレオンが語りはじめた。
 「それと我々が調べたところ、20数年前にブーゲンビリア元司法書記官は先代領主……貴方のお父上に接近禁止令を出しているのが、裁判所の記録に残っていました。裁判所の内容によると……先代領主はブーゲンビリア元司法書記官の細君氏に対し、度重なる暴言を繰り返し精神的苦痛を与えた末に自死にまで追い込んだ上、その子供にまで危害を加えようとしたため以後、子供達及びブーゲンビリア氏とその親族への接近及び接触することを禁ずると記されてありました。」

シン・・・と今まで騒いでいた周囲が水を打ったかのように静まり返った。先代の領主は陰気で金の亡者だったし、気に食わない人間に対しネチネチと嫌味を言ったり嫌がらせを行ったりして精神的に追い詰められて自殺に追い込まれた人もいたが、まさかここにも被害者が居たとは・・・
 「そっ、それは父上の話だろう!!私は関係ない!!それには言っていたんだ。あの女のせいでアイツはおかしくなった。ルース・ブーゲンビリアは悪女だ。ウチの会社の株主権を使って豪遊しているって!!だから株主権を返せっていったんだ。なのにこの女は株主権なんて知らないとシラを切るから。だから罰するために私と結婚しろと言ったんだ。」
「………えっ、罰するために自分と結婚しろって意味わかんない。てか、キモい。」
マカイオスの主張にドン引きしながらぼやいたロゼットの口をレオンは問答無用に塞いだが、ロゼットの発言に周囲の人々は化け物でも見るような目でマカイオスに視線を向けた。
 「マカイオス………ルース・ブーゲンビリアが20数年前に死んでいるのなら………ここにいる新婦は一体、誰なんだ?」
 今まで黙ってこの状況を静観していた神父が口を開きマカイオスに問いかけた。

 そのとき、閉まっていた教会の扉が再び開くと・・・


「ソフィィ~~アアァ~~~~!!!!」

 海坊主………否スキンヘッドに黒眼鏡をかけた大男が大声で叫びながら祭壇に向かって走ってきた。海坊主・・・もとい男は無表情の新婦の前で止まると、「今助けるから」と言ってガラス瓶の液体を彼女に飲ませた。


 口移しで。 


  「「「「「「「!!!!!!??????」」」」」」

ゴクンと飲んだあと、何もうつしていなかった新婦の瞳に光が宿った。 

「あっ…………」
 その目に海坊主・・・男の姿を映した瞬間
「ダーリーン!!」
 嬉しそうに男に抱き着いた。 
「えっ?どういうこと?」とこの状況に困惑する周囲の人々にフゥ・・・と息を吐いてレオンは告げた。
「…………彼女の名前はソフィーア・ブーゲンビリア。ジョージ・ブーゲンビリア氏とルース・ブーゲンビリアのもう1人の孫娘でルース・リントンさんの従姉妹です。あっ、ちなみにこの海坊……この人は同じく第3者意見司法機関司法書記官クリース・アッサムで、ソフィーアさんの婚約者です。」
  レオンの説明が終わった瞬間、警邏兵数名が現れ、マカイオスを取り囲んだ。
「マカイオス・サマラス。ジョージ・ブーゲンビリア氏への殺人容疑。ルース・リントンへの恐喝容疑。ソフィーア・ブーゲンビリアへを誘拐したうえ、薬を使って身体への自由を奪うなどお前の罪は多すぎる。全ては署で話してもらうぞ 」
 連れていけと部下の警邏兵がマカイオスの両脇を抱え連行されていく。
 「私は悪くない!!悪いのはルースだ!!アイツが悪いんだ。アイツは悪魔なんだ!」
耳朶端と抵抗し、自分は悪くないと叫びながらマカイオスは教会から引きずりだされた。 







 「「「は~あ、終わったぁぁ~!!!」」」

サン・ソフイ島から本土に戻る船の中でレオンとロゼット、そしてハルは盛大な溜息を吐き出した。

「本っ当にご迷惑おかけしてしまい申し訳ありません!!」

3人の前で金髪の妙齢の女性が深々と頭を下げる。

 「イヤイヤイヤ、そんなことないですって!!」

 「ソフィーアさんは被害者なんですから!!」

 「むしろこんな目に合わせてしまい本当に申し訳ない!!」
3人は頭を下げて謝罪する女性に、思いっきり頭を振る。
 この女性ーーサン・ソフイ島でルース・ブーゲンビリアに仕立て上げられた新婦ーーの名はソフィーア・ブーゲンビリア。 
 ハルの幼なじみであるルース・リントンの母方の従姉妹であり、元第3者意見司法機関の司法書記官ジョージ・ブーゲンビリアの孫娘である。 

この一件が起こる2週間ほど町、彼女らの祖父であるジョージ・ブーゲンビリア氏が自宅で倒れているのを同居していたルースが発見し病院に搬送したが、すでに息を引き取っていた。 
死因は急性心不全だったのだが、その前後に自宅を訪問する若い紳士の姿を近隣住民が目撃したのと、仕事が終わり帰宅途中だったルースが家から出て行く身知らぬ男と馬車を目撃したことから警察は事件性を疑いはじめた矢先、祖父を殺したかもしれない男性から結婚を迫られたと相談されたのは、祖父であるブーゲンビリア氏の葬儀から1週間後のことだった。 
 それを警察に捜査をしようと思った直後にサマラス氏が現れ、自分の会社の株主権を渡せと言いだした。株主権のことなどまったく知らないルースは正直に答えたところ、マカイオスは逆上し、株主権を渡さないのなら自分と結婚すると迫られたらしい。 恐ろしくなったルースはハルには内緒でレオンとロゼットに相談した。
その相談を受けて調べた結果、過去にブーゲンビリア氏は先代のサマラス氏を訴え接近禁止令を出していることが裁判所の記録に残っていたのが判明した。
「そのおかげで、ハル司法書記官センパイにルースさんが脅迫されてることがバレたんですよね~。」 
「あと、アッサム司法書記官センパイにもな。つーかあの男、ルースを脅して結婚迫ったけど、それが犯罪なの判らなかったのかな。」
この国では以前から金銭を盾に脅して婚姻を結ぶ脅迫結婚が問題視されており、家庭内暴力や虐待を受ける女性や子供の被害が多く、国では数年前から被害女性や子供のための保護施設が設立され、また脅迫結婚は人身売買の扱いに該当され、人身売買罪として2年前から法律案が新設された。

「おまけにルースさんのことを亡くなった祖母だと思いこんでいるし、これは実害出る前に何とかしなきゃなと警察と話し合っている中で、今度はルースさんだと思いこんでソフィーアさんを誘拐して強引に結婚式挙げようとして……マークしていた警邏兵と協力してくれたマカイオス氏の秘書が教えてくれなかったらどうなったことか……」

「本当に感謝してます。あの人、何度私がルースでもルースおばあちゃまじゃないって言っても全然話が通じない上に変な薬を飲まされて身体のいうこと効かないし、しゃべれないし……もう本当に最悪でしたが、ダーリンや皆さんのおかげで助かりました。本当にありがとうございます。」

「いいえ。アッサム司法書記官センパイが解毒薬を持ってきてくれたり、色々と協力してくれたんですよ。」

「そうそう。海ぼ……アッサム司法書記官センパイが1番の功労者ですよ。」

「……レオン弁護官センセイ。今、海坊主って言いませんでした?」

「……イッテナイヨ。」

「今、言いましたよね。」

「イッテマセン。」

「一応、司法書記課ウチのエースだぞあの人。」

「私の婚約者なんですけど」

「………………ゴメンナサイ。」

 



 
「…………………」

「…………どうしましたレオン弁護官センセイ?難しい顔をして。」
 
 「いや………あの時、マカイオスはブーゲンビリア氏と奥さんの話をあの人が言っていたって叫んでいたよな。」

「あぁ……確かに言ってましたね。」

「何故、先代領主とブーゲンビリア氏の真実をねじ曲げてマカイオスに告げたのか……そして、示唆したあの人とは……一体、誰なんだ?」


モヤモヤとしたレオンの不安を余所に船は港に近づいてきていた。 
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