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本編
しおりを挟むそれは、ある日の昼休みのこと。
あまり使われない北校舎の階段で私はいつものように友人の花ちゃんとおしゃべりしていた。
「よくさあ~、乙女ゲームに転生したモブヒロインの小説ってあるじゃない。」
「?うん。」
急にそんなことを言い出した花ちゃんを見ると、今流行りの乙女ゲーム転生モノの小説がその手に握られていた。
「アレってさ、本人は目立っているつもりはなくても端から見れば目立っているのよね。」
だから逆ハーレム集団に目をつけられるんじゃないの。とパラパラと本をめくりながら花ちゃんはそうボヤく。
「あとヒロインとかモブヒロインって髪の色がピンクとか茶髪だったり、ボブカットの子が多いじゃない。」
「あ~、確かに……アレってまだ茶髪は分かるけど、ピンクだったら普通に先生から注意されるし、かなり目立つよね。」
「髪の色はさ、染めれば何とかなるじゃん。でも、髪型はさ、なんでボブなのよ?他に色々髪型あるじゃん!!なんでヒロインとかモブヒロインその髪型多いのよ!!今って令和でしょう?ボブなんて昭和のおかっぱよ!!おかっぱ。アイツらおかっぱなら誰でもいいってもんじゃないのよ!!」
「いや……そんなことはないと思うよ………多分……」
拳を握り締め力説する花ちゃんの勢いに私は少し引き気味に返した。
「て言うか、何でこういう逆ハーレム集団はかまうなって言われたり、自分でそう言っておきながら絡みに行くのかしらね?」
「……花ちゃんはさ、カリギュラ効果って知ってる?」
「?何それ?」
カリギュラ効果ーー禁止されれればされるほど、興味をもってしまう心理行動のひとつである。
「つまり、逆ハーレム集団がヒロインやモブヒロインにかまうのはそのカリギュラ効果によるものだっていうこと?」
「まあ、私の持論なんだけど。」
「そういえばアンタって………………………………………………………………こういう逆ハーレム集団みたいなのに生前追いかけ回されたんだよね。」
「そうそう。その連中のおかげで私……………………ここの階段で足踏み外したんだよね。」
私を追いかけ回した連中はそれこそ小説の逆ハーレム集団のような連中だった。
何故か私を気に入り、絡みはじめ。それが気にいらない取り巻き連中から虐められ、私にかかわらないでほしいと訴えても、それを照れ隠しだと巫山戯たことをほざきやがり、その行為がエスカレートしていくなかで階段から転がり落ち、打ちどころが悪かったせいで16年の短い生涯を終えてしまいいつの間にか幽霊として学校内をさまよっていたところを長年、校内に憑いていた幽霊の花ちゃんと出会って、いつのまにか仲良くなっていた。
「あとさ、たま~にヒロインと主人公が子供の頃とか、入学する前に1回逢っているって話あるけど、たかが1回逢っただけの人間にそんな執着する!?しっかもヒロイン、主人公を幼なじみだっていうけど、1回逢っただけでは幼なじみとは呼ばないわ!!おまけに強引過ぎ。あんまり好きになれないタイプだわ。」
そう花ちゃんが力説した直後、私たちが今おしゃべりしていた階段の近くからひとの話し声と気配を感じて、フワリとその場から離れた。
「…………そういえば、花ちゃん。さっきイケメンはボブカットなら誰でもいいのかって言っていたじゃん。」
「うん。言ったね。」
「アレ、あながちあっているかもしれないね。だって……………………
モブヒロインと同じ髪型というだけで花ちゃんを追いかけ回す集団があそこに」
と、私が指差した先に
「「「「「あの子はどこだあぁぁぁぁ~~~!!!!!」」」」」
キラキラオーラを放つイケメンの集団が獲物を狩る猛獣の目をしながら北校舎の階段を勢いよく駆けていた。
彼らはこの学校の今の生徒会役員のメンバーらしく数週間前、何故か侵入してはいけない北校舎に入り込み、何故か見えないハズの花ちゃんの姿を見つけて以来、彼らは狂ったように花ちゃんの姿を探しに北校舎を駆け回っているのだ。
「「…………………」」
彼らに気づかれないようにその光景を観察していたが花ちゃんを追い求めるその姿は常軌を逸していて、幽霊である私ですら恐ろしく寒気すら感じる。その隣では花ちゃんがまるで死んだ魚のような目をして固まっていた。(幽霊だけど)
次第に彼らは口々に何かを語りだし
「運命だ!!」
「ドロドロに甘やかしてやる!!」
「僕が解放してあげる」
などと小説の攻略対象キャラクターのような台詞をはきはじめた彼らの後ろ姿を見つめながら私と花ちゃんはその背中に向かって言い放った。
「「…………アレはないわー、てか、怖わ。」」
おわり
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