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モブ少女とクラスメイト
しおりを挟むそれは高校に入学して1ヶ月経った頃だった。
「うわっ、乙ゲーヒロインだ!」
「あっ、ホントだ。」
教室の掃除中、一緒に掃除をしていたクラスメイトが窓の外を見てそう叫んだ。 その声にそばにいたもう1人の子が苦虫をかみつぶしたような顔で呟いた。
「あの~おとげーひろいんって何? 」
「茅野さん知らないの?」
「ほら、あの子。あの集団の真ん中にいる子。」
クラスメイトの指をさす方を見ると、特撮ヒーローに出てる俳優張りのイケメン集団の中に1人だけ女の子がまざっていた。
明るい茶色の髪をゆるくパーマをかけて、ぱっちりとした大きな瞳にふっくらとした唇。庇護欲をそそらせる程の美人だ。彼女は私達と同じ1年生で、イケメン集団は生徒会のメンバーらしい。
「あの子、入学してすぐ、生徒会の人に気に入られちゃって。庶務に任命されたんだって。」
「えっ?生徒会ってそんな簡単に入れるものなの?」
「それはちょっと私もわかんないよ。でも、書記の人がごり押ししたみたい。顧問の先生に頼みこんだみたいだよ。」
「へえ~…でも何でおとげーなの?」
「茅野さんはさ、ゲームとかやる方?」
「ちょっとだけ。妹がよくやるから付き合いで。」
「じゃあ、乙女ゲームは?」
「あんまりやらないかな。」
2人がいうことには、乙女ゲームとは女性向けの恋愛シミュレーションゲームで、主人公(プレーヤー)が複数の男性キャラクターから1人を選んで攻略していくゲームらしい。中には複数の男性キャラクター全員を攻略してハーレムならぬ逆ハーレムをつくるモノもあるらしい。
「……ああ、だから乙ゲーヒロイン。」
「そうっ、それ!!」
「あれ、結構ウワサになってんだよねぇ。」
確かに、傍目からみればあれは男の子達を侍らせているように見える。
生徒会のメンバーの人達も格好いいからモテそうなので、他の女子からの嫉妬やヒガミなども多いんだろうなぁ。
それにしても……
「2人とも乙女ゲームに詳しいよね?」
「いやぁ~~……実は私、ゲームが好きで乙女ゲームとかもしょっちゅうやるのよ。」
「あたしも妹が最初にハマって……気づいたら、自分が一番ハマってしまって……」
「やっぱり、すごい乙女ゲームに詳しいなぁって思ったから。」
「茅野さんはどう?乙女ゲーム?」
「ん~……私、乙女ゲームよりもどっちかっていうとテ○ルズとかフ○イナルフ○ン○ジーみたいなRPGが好きなんだよねぇ。」
「「そっちか~~!!」」
その後、3人で好きなゲームや趣味など色々な話をして盛り上がった。
だから、私は知らなかった。
リアル乙女ゲームヒロインと生徒会メンバーが私の横顔をギラギラとした瞳で見ていたなんて。
「じゃあ、百衣ちゃんまたね~。」
「バイトがんばってね~。」
「2人も部活がんばってね~。」
掃除が終わると、文芽ちゃん紅里ちゃん--ゲームの話をするうちに仲良くなりました--と昇降口で分かれて、自転車置き場に向かう私の気分は少し浮かれ気味だった。
--2人とも以外と気さくで良かったなぁ。文芽ちゃん最初、近寄りがたい感じだったけど、ゲームとか本当に詳しいし、紅里ちゃんも見た目ギャルだけどしゃべり方ホワッとした感じだし、あ~今日掃除当番で良かった。
そんなことを考えながら自転車のペダルに脚をかけた。 後ろから乙女ゲーヒロインと生徒会メンバーが追いかけてきていたが、私はまったく気にせず、そのまま自転車で走りだした。
だから、私に執着するようになった乙女ゲーヒロインと生徒会メンバーが追いかけ回しても、ことごとくニアミスすることになるのは、この時はまだ思ってもみなかった。
そして--
「百衣ちゃんって大人しい子だと思ってたけど、以外と面白い子だったね。」
「ね~、でも今日喋れてよかった~。」
こんな会話をしている文芽ちゃんと紅里ちゃんと親友と呼ばれるまで仲良くなり、長い付き合いになるとは、思ってもみなかった。
登場人物
茅野百衣
高校1年生
内向的な性格で高校入学してから友達がいなかった。髪をシュシュでまとめている
乙女ゲームよりもRPGゲーム派
地元は岐阜県で、5歳下の妹がいる。
飛鳥井文芽
高校1年生 百衣のクラスメイト
見た目優等生だが実はゲームオタクなメガネっ子
望月紅里
高校1年生 百衣のクラスメイト
見た目は派手だが、実は漫画やアニメが大好きなオタク
乙ゲーヒロイン
百衣達の同級生
生徒会メンバーに気に入られ庶務になった一部生徒からリアル乙女ゲームヒロインと陰で呼ばれている。茅野に一目ぼれするが、ことごとくすれ違ってしまうことをまだ知らない。
生徒会メンバー
若手俳優ばりのイケメンで文武両道。生徒や教師からの信用もある女子生徒の憧れの的 書記が乙ゲーヒロインを気に入って無理矢理生徒会にいれたが、茅野をロックオンし、手に入れようとするが、ことごとくすれ違ってしまうことをまだ知らない。
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