「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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デート/クラウディオ視点

 だが、動揺を表に出すまいと努める。

 確かにクラウディオは効率を重んじる。

 効率の良い方法を”正攻法”とするならば、選択肢は限られている。

 誰から指摘を受けた経験もないが、身に覚えがあると言えばある。

 しかし例えその推察が正しくても、レオノールには指摘されたくない。

「それはどうだろうな。君は大して俺を知らないはずだ」

「知り合ってから日は浅いですけど、仕事柄たくさんの人と知り合うので。割とわかるんです。図星でしょう?」

 仕事柄、と根拠を語られれば、また一歩クラウディオは追い詰められる。

 これもまた一理ある。

 クラウディオは普段から大人数を束ねる指揮者だし、先のように大人数を接待する機会も少なくない。

 そのうちのほとんどを、顔見知り程度には把握するよう努めているが、逆にそれ以上に親しくなることはない。

 それに比べたら、レオノールはこの性格だ。

 行く先々で大勢と関わり、交友を結んでいるはずだ。そういう意味では、他者を見る目が養われているかもしれない。

「……よく知りもしないで決めつけられるのは心外だ」

「それもそうですね。じゃあ、たくさん教えてください。クラウディオ様のこと、もっと知りたいです」

 ほらまた、こうやって。

 周りの人間を自分の世界に巻き込もうとする。

 素直に認められずに言葉を濁したのに、レオノールは意にも介さず、にっこりとクラウディオに微笑みかける。

 まっすぐにクラウディオの魂を捉える強い視線は、この世の汚泥を知らぬ純粋さを秘めているようだ。

 強い光はこの世の美醜も劣等感も関係なく平等に照らすのか。

 眩しいのに、目を逸らすのに、クラウディオは苦心する。

 レオノールはこれで裏表がないのだから、タチが悪い。

 自分だけが些事に囚われる愚か者だと突きつけられる気分だ。

「レオノールが、そう望むなら……」

「良かった。クラウディオ様も、知りたいことがあれば何でも聞いてください。そう考えると今日っておあつらえ向きですね。2人きりですし、のんびりできるし」

 ドキッ

 ”おあつらえ向き”

 ズバズバと、レオノールは真っ向から切り込んでくるので心臓に悪い。

 そうだ、今日は外で息抜きをしたいレオノールと、レオノールを理解したいクラウディオの利害を一致させ、作り出した機会だ。

 悪意はないが、恣意を悟られてはバツが悪い。

 見抜かれてはたまらないので、クラウディオは目を逸らしたままミルクをあおった。

 絞ったばかりのミルクは新鮮で香り高い。

「あ、ねえ。これってアレみたいですよね。2人で街を散策なんて、まるで”デート”みたい……」

 だが、生憎と味を楽しむ余裕はなかった。

 袖を引かれ、やむなく視線をレオノールに戻す。

 レオノールはきゃっきゃと無邪気そうにクラウディオに笑いかけた。

 弧を描いていた目がクラウディオのそれとかち合うと、ひゅっと息を呑むように真顔に戻る。

 途端に横一線、レオノールの頬に赤みが走った。
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