「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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ノーキエ王国の地下にて/エルネスト視点

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 確かにこの地下洞窟に幽閉されてからずっと放置され、見張りも置かれていなかった。

 堅牢な岩壁に覆われているために抜け出す術もなかったが、こちらの言動は筒抜けだったかも知れない。

(……大丈夫だ。特段、漏れて困る内容の会話はしていない)

 こちら側の重要な情報は漏れていない。

 エルネストはここ数日を振り返りながら、冷静を保つよう自身に言い聞かせた。

「そう驚くこともなかろう。この城は今や隅々まで私が支配している。何処へ行くのも自由自在よ。それより朗報だぞ、エルネスト副団長。上手くいけばそなたらは、今日のうちにも解放されるかもしれん」

 ざわめきから一転、”解放”の2文字を聞いた団員たちは、グッと息を呑んだ。

「まさか陛下が……要求を呑まれたのか? いったい、何と引き換えに」

 冷静に熟考し、可能な限り相手から情報を引き出さねばならない。

 頭では理解していても、身体は思う通りに動かなかった。

 エルネストは激昂して立ち上がり、アルヴァロに掴み掛かる。

 本来ならば身を盾にして、王国を守護することが騎士団の本懐だ。

 それなのにおめおめと囚われた挙句、祖国に犠牲を払わせるなど、到底受け入れてはいけない現実だった。

 しかし、猛然と伸ばした手が、アルヴァロを捕らえることはない。

 目の前の黒いもやは霧散し、腕はその体を貫通した。

「そうか。お前たちには見えなかったな。……これならどうだ」

 散った靄が再び集まり、形を変える。

 エルネストは慌てて後退し、その全容を視認しようと見つめた。

 靄は再度、人間の背丈くらいまで立ち昇ると、ぼんやりと何らかの風景を映し出した。

 まるで、空から鳥が見下ろすような景色だ。

 生い茂る緑は森の木々、上空から下降するほどに、葉の一枚一枚が鮮明に見えてくる。

 木々の隙間から、一頭の栗毛の駿馬と赤髪の女が飛び出した。

「アッ……!」

「レオノール様? これは……!?」

 音声は聞こえないが、その動きは鮮明に捉えられる。

 革鎧に身を包んだ赤髪の女ーーレオノールが、ロングソードを片手に馬を駆っている。

 レオノールは生活のほとんどを西の棟で過ごしていたから、直接顔を見た騎士はそう多くない。

 だが、騎士たちは口々に名を叫んだ。

 身のこなしから、”赤い獅子”の異名を持つレオノールだと、誰もが確信した。

 前方にはまだ森がずうっと、目線の先まで続いている。

 が、行く手で足元の土が盛り上がると、地面から緑色の塊が次々と生まれ出てきた。

 頭に角を持つ生き物、獅子の形をした四つ足の生命体……それらの姿形は明らかに魔物だった。

 ……あのマナだまりで見たような複数種類、雑多な集団が、波のように襲い掛かる。

 レオノールは剣を一閃し、魔物たちを薙ぎ払う。

 一陣の風が吹いたように、両断された肉塊が吹き飛び、開けた道をひたすらに進む。
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