「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら

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レオノールVSオーグレイル

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 オーグレイルをアルヴァロごと斬り裂けば、どうなるかは目に見えていた。

 アルヴァロは自らが還る肉体を失う。

 けれど躊躇している余裕はなかった。

(頭と心臓を避ける。とにかく身動きだけ取れないように……)

 瞬く間に距離を詰め、ようやく剣戟の間合いに踏み込んだその時だった。

「……ッ! ククク、捉えたぞ……っ」

 虚空を見上げ、頭上へ右腕を掲げていたオーグレイルはグッと、何かを掴むように拳を握りしめた。

 レオノールは構わず剣を右袈裟に振り抜く。

 ギイィィイン!!

 だが、見えざる壁に阻まれて攻撃が弾かれた。

 柄を握る腕が痺れる。

「アルヴァロの身体だからと、選択を誤ったな、レオノール」

「くっ、あんた……その身体でも空飛べるわけ? ずるくない」

 雲から落ちる影を辿り、オーグレイルの身体が宙へと浮き上がる。

「飛ぶのとは違う。昔のように翼がないからな……だがレオノール、私はこの身体になって良かったと思うことが2つある」

 痛いところを突かれて、レオノールは歯噛みした。

(奴を仕留める絶好のチャンスだったのに……!)

 オーグレイルの指摘通り、魔力を込めた攻撃であればもう少し効果があったろう。

 必中攻撃を仕掛けることもできたのに、無意識に加減してしまった。

 連続で発動させた大技の影響で、ズシッと肩に重みが加わる。

「一つは知性を得たことだ。人の身体は脆く儚いが、それを補って余りある。かつての私はまるで赤子のようだった。私は其方を呑み込まんと戦いを続けたが、私の望みは其方を取り込む行為ではなかったと今ではわかる」

 臍を噛みながらも呼吸を整え、意識を研ぎ澄ます。

 闇を纏い、空を漂うオーグレイルに攻撃を仕掛ける方法を、脳内で目まぐるしく計算を重ねた。

 地表を叩き割り、粉砕した地面を蹴り上がればオーグレイルまで届く。

「もう一つは?」

 だが、今のレオノールにそんな大技を連発するだけの体力は残っていないし、同じ攻撃は通用しない。

 高度を上げられれば打つ手が限られるため、慎重さが求められる。

 問いかけに応じつつ、レオノールは隙を窺う。
 
 こめかみから冷や汗が流れた。

 荒れた呼吸を整えるため、口を開けて酸素を取り込む。

 オーグレイルを倒すしか騎士団を救う手立てはない。

 けれど……



「王城でさぞ窮屈な思いをしていらっしゃるでしょうから、僅かでも息抜きをさせて差し上げたいのです」
「私は奇跡を見た! 我が女神よ!!」



 優しく、朗らかだったアルヴァロの面影が頭をよぎる。

 特段、親しかったわけでもないが、有無を言わせず命を奪うほどの悪党ではない。

 今までレオノールは人間の幸福を守るため、数多の魔物たちを屠ってきた。

 だが、人を手にかけたことはない。
 
 今さらながら、迫られたその決断は重い。
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