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襲撃
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次の言葉を探そうとしたその時だった。
小屋の外から、ガツッと乾いた衝突音が響いた。
「今の、何!?」
リディアが顔を上げる。
何処かで、何かが起きた。
だが、確かめるまでもなく、窓の外に灯りが灯った。
いや、火の手が上がった。
「もう来たか……!」
初めは掌ほどの赤い塊が、メラメラと舐めるように燃え広がって行く。
「申し訳ありません。戻ってくるべきじゃ、なかった」
ハミルが苦虫を噛み潰したように呟き、マーシャは俯きがちに目を伏せた。
2人の判断を責めるつもりはない。
行動を共にした4人は運命共同体だ。そもそもティオル一人ではここまで逃げおおせなかった。
ティオルはすぐさま身を翻し、壁にかけてあった剣を取った。
「リディア、マーシャ、下がって。ハミル!」
ガイルも瞬時に動き、戸口を蹴破って外へ飛び出す。
ティオルも後を追う。ハミルが戸を閉める後方でマーシャがリディアを押し下げていた。
「ティオルさん! ……あっ」
外は闇に包まれ始めていたが、炎に照らされ、数人の影が庭先をうろついているのが見えた。
(2、4、5人か。他にも隠れているのか?)
仮にもここは不可侵の同盟を結ぶペリミア国だ。
大軍で押し寄せる可能性は、かなり低い。
まずは5人切り伏せて、可能ならそのうちの一人を締め上げて内情を聞き出そう。
ティオルは剣を構え、すぐさま駆け出した。
火が上がっているのは、ガイルが増築した鶏小屋だ。
本来なら部屋の明かりでこちらの姿が浮き彫りになるが、あちらも火元だからさしたる差はない。
燃え上がる小屋へと直進し、敵の一人とすれ違いざまに剣を振るう。
キィン!
甲高い金属音と共に、相手の剣が弾かれる。
「なんだ、こいつ……!」
敵の一人は呻く間もない。
ティオルは体勢を崩さず4m、飛ぶようにして二の太刀を次の相手に浴びせた。
舞うように剣を捌く。
超絶技巧のそれは、風のように素早く、無駄がない。
ばさり、ばたり。
速度と技量だけで圧倒するその剣筋に、敵はまともに対抗できず、次々と地に倒れていった。
あっという間に3人が倒れる。
振り返れば、残りの1人もすでに地面に倒れていた。
鶏小屋の陰から現れたガイルが、大ぶりな薪割り斧を片手に立っている。
「そっちは片付いたか?」
ティオルが声をかければ、ガイルは短く「おう」と答える。
ガイルの腕は確かだ。武器さえ手にすれば、並の兵士など敵ではない。
「生きてんだろ、オイ。手加減してやったんだ。お前ら何もんだ。何の目的で火なんぞつけやがったか、吐いてもらうぜ」
こちらの無事を見てとって、ガイルは足元に倒れた男の手の甲を踏みつけた。
男の手から武器が離れたところを襟首を掴んで引き上げる。
小屋の外から、ガツッと乾いた衝突音が響いた。
「今の、何!?」
リディアが顔を上げる。
何処かで、何かが起きた。
だが、確かめるまでもなく、窓の外に灯りが灯った。
いや、火の手が上がった。
「もう来たか……!」
初めは掌ほどの赤い塊が、メラメラと舐めるように燃え広がって行く。
「申し訳ありません。戻ってくるべきじゃ、なかった」
ハミルが苦虫を噛み潰したように呟き、マーシャは俯きがちに目を伏せた。
2人の判断を責めるつもりはない。
行動を共にした4人は運命共同体だ。そもそもティオル一人ではここまで逃げおおせなかった。
ティオルはすぐさま身を翻し、壁にかけてあった剣を取った。
「リディア、マーシャ、下がって。ハミル!」
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ティオルも後を追う。ハミルが戸を閉める後方でマーシャがリディアを押し下げていた。
「ティオルさん! ……あっ」
外は闇に包まれ始めていたが、炎に照らされ、数人の影が庭先をうろついているのが見えた。
(2、4、5人か。他にも隠れているのか?)
仮にもここは不可侵の同盟を結ぶペリミア国だ。
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ティオルは剣を構え、すぐさま駆け出した。
火が上がっているのは、ガイルが増築した鶏小屋だ。
本来なら部屋の明かりでこちらの姿が浮き彫りになるが、あちらも火元だからさしたる差はない。
燃え上がる小屋へと直進し、敵の一人とすれ違いざまに剣を振るう。
キィン!
甲高い金属音と共に、相手の剣が弾かれる。
「なんだ、こいつ……!」
敵の一人は呻く間もない。
ティオルは体勢を崩さず4m、飛ぶようにして二の太刀を次の相手に浴びせた。
舞うように剣を捌く。
超絶技巧のそれは、風のように素早く、無駄がない。
ばさり、ばたり。
速度と技量だけで圧倒するその剣筋に、敵はまともに対抗できず、次々と地に倒れていった。
あっという間に3人が倒れる。
振り返れば、残りの1人もすでに地面に倒れていた。
鶏小屋の陰から現れたガイルが、大ぶりな薪割り斧を片手に立っている。
「そっちは片付いたか?」
ティオルが声をかければ、ガイルは短く「おう」と答える。
ガイルの腕は確かだ。武器さえ手にすれば、並の兵士など敵ではない。
「生きてんだろ、オイ。手加減してやったんだ。お前ら何もんだ。何の目的で火なんぞつけやがったか、吐いてもらうぜ」
こちらの無事を見てとって、ガイルは足元に倒れた男の手の甲を踏みつけた。
男の手から武器が離れたところを襟首を掴んで引き上げる。
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