お江戸のボクっ娘に、若旦那は内心ベタ惚れです!

きぬがやあきら

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悪戯犯

3話

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  事件が起きたとされている寿司の《藤川屋》、豆腐の《長谷屋》蕎麦の《榊屋》は、いずれも本願寺から遠くない。

 だからこそ、深如の耳に届いたのだ。
  
 悠耶は藤川屋から南へ下って行く順にした。

「一度お話しただけだったのに、深如さんはしっかり覚えていてくださったんだなぁ。ありがてえ」

 店を訪ねると、藤川屋の主人は仕込みの真っ最中だった。

 深如の遣いだと話すと、事件について語ってくれた。

「あれから目を光らせているんだがよ、不思議と起きる時は、起きちまうんだよ。右の客のハマチは何てことないのに、じゃあ次の客に出すと今度は腐ってるってんだ。見てみりゃあ、たしかに色も悪いし臭いもする。一切れだけ腐るなんて、おかしいだろう?  俺が切り分けている時は当然どれも活きが良いのによ」
  
 昨日、深如から相談があった時からわかっていた詳細である。

 だが、なるほど妖怪の仕業のようだ。

 妖怪には姿が見えないのを良い事に悪戯を仕掛ける者も多い。
  
 ちょっと面白がるだけの、たわいない悪戯がほとんどだから人間はさほど気にかけないし、悠耶も一々見咎めない。

 けれど今回の事件に関しては、ちょっと頻度が高い。
  
 それに、ここ浅草は本願寺や浅草寺があり、一大名所となっている。

 料理屋は山ほどあるから、悪い噂は命取りだ。
  
 藤川屋は夫婦で営む小さな小屋掛けだ。万一の事態になれば、悪戯では済まされない。

「近所のお店は大丈夫なの?  おじさんのお店だけ?」

「ああ、そういや……周りの店では聞かねえな。何で、うちだけなんだろ」

「この辺りはおじさんの所だけなんだね。少し離れているけど、他の場所では、起きているんだ。ところで話は変わるけど、食べ物に好き嫌いはあるかい?」

「いいや、特にねえな。何か関係があるのか?」

「関係があるかわからないから、聞いてみただけさ。おじさん、家の中を見てもいい?」

「妙なことを言う小僧だなぁ。構わねえが、何もねえぞ」 

 必要そうな用件をざっと尋ねて、手がかりが残っていないか居室も見せてもらう。

 奥を覗いてみると、長屋の中は至って普通の表長屋の一室であった。

 台所の奥に居室。悠耶の家より少々広いが、店主の言う通り何もなさそうだ。

 礼を言って店先に戻ると、息を荒くした惣一郎と深如が立っていた。

「お悠耶は本当に足が早えなあ。もう済んだのか」

「ご主人、唐突にお伺いして、かたじけない。ありがとうございました」
  
 深如は悠耶と入れ替わりで、折り目正しく礼をしていた。
  
 こういうところは非常に真面目で、大人らしい振る舞いだ。悠耶の目にも美しく映る。

「いやあ、深如さんが覚えていてくださっていて感動したよ!  こちらがありがてえです!」

 惣一郎と意地悪を言い合っている姿が嘘のようだ。

「二人とも話は終わったの?」

「ああ。最初から決まってただろう。一緒に来たんだから、一緒に帰るに決まってんだ。先に行くこたあなかったのに」

「そっか。でも、早く帰りたいだろう?  次に行こうよ」

 行こうと言ったものの、店主と談笑していた深如が区切りをつけるまで、今度はきちんと待った。

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