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行軍
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マクシムはもう長いこと、暗黒の空の元、小舟に揺られて大海原を漂っていた。
自分は何かを成さねばならない。
それだけは覚えているのに、身体は鉛のように重く、指一本自在に動かせなかった。
このまま何かの拍子に呆気なく転覆し、水底に沈んでしまうのではなかろうか。
悲観的な想いに幾度も囚われたが、その度に、雲間から差す月明かりが、マクシムの心を救っていた。
いつしか月光は、マクシムにとって希望そのものになっていた。
「……う、……あ……」
そのうちに、声が出せるようになった。
それは音になり、言葉となってマクシムの口をついて出る。
「水だ、……水はどこだ?」
「……お目覚めですか? マクシム様」
闇が蠢く。光の気配に、顔を顰める。
「どこだ……ここは。ウッ」
目を開けると、一面が茶色の木目だった。
身体を起こしてここはどこかと、周りを見回そうとすると、途端に全身に激痛が走る。
「無理に動かないでください。良かった、気付いたんですね。今、お医者様を呼んできます……!」
動くなとの忠告に、はたと動きを止める。
マクシムは寝台に横になっていた。
真上の木目は天井だ。
天井が低いため、木目ばかりが目についたらしい。
身体に力を入れると痛みが出るので、なるべく力が入らぬようにして、首だけを回す。
どこか、民家の一室のような趣の部屋だった。
(どこだ、ここは? 私は何をしていたんだった? そうだ、私はタカの報せを受けて殿下をお迎えに……)
「お目覚めになられた!? ようございました。坊ちゃま。お加減はどうですか?」
自分が置かれた状況を、順を追って思い出そうとするも、来客で中断される。
「ソノラに……ジェニス。どうしてここに?」
「どうしてですって? 覚えていないんですか。マクシムさんは銃で撃たれて、担ぎ込まれたんですよ」
複数の足音と共に現れたのは良く見知った顔の2人だった。
がっしりとした体つきで、黒々とした髭を蓄えたソノラ。
その後ろに控えるは、細身で優男風のジェニス。
マクシムは2人の顔を呆然と見返していた。
ソノラとジェニスはユグの街に籍を置く鍛冶屋で、アルダシールの信奉者でもあり、レジスタンスの同志でもある。
「まあ、まずは診察させてください。銃で撃たれた上に、全身打ち身や打撲だらけでしたから……うん、熱は随分引いたようだ。傷の具合もまずまずです」
2人の後ろから、こちらもまた良く見知った初老の男が顔を出す。
狭い部屋は男3人で一杯になった。
初老の男は、マクシムが幼少の頃からべリングバリ家に仕える医師で、セバスチャといった。
自分は何かを成さねばならない。
それだけは覚えているのに、身体は鉛のように重く、指一本自在に動かせなかった。
このまま何かの拍子に呆気なく転覆し、水底に沈んでしまうのではなかろうか。
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いつしか月光は、マクシムにとって希望そのものになっていた。
「……う、……あ……」
そのうちに、声が出せるようになった。
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「水だ、……水はどこだ?」
「……お目覚めですか? マクシム様」
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「どこだ……ここは。ウッ」
目を開けると、一面が茶色の木目だった。
身体を起こしてここはどこかと、周りを見回そうとすると、途端に全身に激痛が走る。
「無理に動かないでください。良かった、気付いたんですね。今、お医者様を呼んできます……!」
動くなとの忠告に、はたと動きを止める。
マクシムは寝台に横になっていた。
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身体に力を入れると痛みが出るので、なるべく力が入らぬようにして、首だけを回す。
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自分が置かれた状況を、順を追って思い出そうとするも、来客で中断される。
「ソノラに……ジェニス。どうしてここに?」
「どうしてですって? 覚えていないんですか。マクシムさんは銃で撃たれて、担ぎ込まれたんですよ」
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2人の後ろから、こちらもまた良く見知った初老の男が顔を出す。
狭い部屋は男3人で一杯になった。
初老の男は、マクシムが幼少の頃からべリングバリ家に仕える医師で、セバスチャといった。
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