規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ

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15話 悪態

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 アラウザル国を離れ、私はこれからフェルモントと言う国へ向かう。そこへタイミング良く、草原から朝日が昇る。新しい一日の始まりだ。

 ここから先は未知の領域。助けてくれる人もいない、自分だけが頼りだ。初めから恵まれ過ぎた環境に慣れてしまった私が、どうあらがい、どうたたかい、どう非道ひどうになれるのか。タイムワゴンセールを熟知した私の、過酷なるパンツ強奪戦ごうだつせんがこれから始まる!
 よし、気合いは入った。後はチキンハートをふるたせるのみ。いざ戦場へ!

 
「エイエイ、オー!!」

「アハハ! 随分と威勢がいいな」

 背後から声がして、私は驚いて思わず振り向く。
 
「へっ?」

「よう紅。俺のは気に入らないって?」

 黒髪をなびかせたイケメンが、私を見下ろして腕組みで立つ。なので早急に立ち去ろうと思う。

「あ、レオさん、ど、どうも。では、ご機嫌よう」
 
「おいおい、まあ待てって。別に怒っちゃいねえよ。ライノスから話は聞いた。お前、随分とあいつに気に入られてんなあ。どういった関係だ?」

 どうって、秘密を共有する仲間で、それ以上でもそれ以下でもないけど。ライが何処まで話ているか分からない以上、墓穴を掘る前にここは話題を変えよう。それに、ちゃんと確認したい事もある。

「えっと、レオさんはもしかして、アラウザルの王子なのでは? 街の人に聞いた特徴とよく似ていますので……違いましたか?」

「ああ、そうだが、それとお前らと何の関係があるんだ。お前とライノスが知り合ったのはつい最近なんだろ? なのにあいつのおこようは只事ではない」

 そんなことは私だって知らない。しかし流石は王子、一筋縄ではいかないようだ。とにかく、先ずはこの国を離れた理由を聞こうじゃないか。ライも王女もレオの被害者なのだから。

「では単刀直入に聞きますが、何故この国を離れたんですか? 見合いが嫌だったからですか? その為に犠牲者が出ているんですよ。私達のことより、先ずはその訳をお聞かせ願いたい」

 レオは私をジッと見て、そして目を逸らし、落胆した様子で静かに話し始めた。

「……そうだよな。俺もこんな事態になっているとは知らなかった。ライノスや妹には迷惑かけてしまって申し訳なく思ってる。この国を出たきっかけは確かに見合いにウンザリしたからだ。でもそれだけじゃない。この国を発展させるのが目的だったんだ」

「発展? それは伝統的な問題ってこと?」

「ああ……」

 レオがまた静かに話してくれた。どうやら私は考え違いをしていたらしい。
 伝統の生産用ダンジョンとは蚕、シルクウォームだ。そう、絹糸を吐き出す魔獣だ。この国は衣類大国ではなく、絹製品を専門に輸出している絹大国ということだ。そしてレオはそれだけでは国は成り立たなくなると危惧して、新たな方法を求めて探しに行っていた。更に、どの国にも生産用ダンジョンは存在していて、衣類に関しては不足はないと言う。
 
 但し、綿となると話は別で、今ではどの国も栽培すら行っていないのが現状とのこと。ライが栽培しているのは実験的な物だそうだ。物を作るまでには至らないらしい。何とも、私の綿パンの夢はどこへやら……。

「そうだったんですか……それで、何か別の方法は見つかったんですか? 私も綿パンを求めて旅をしようと思っていたのですが……」

「綿パン? 綿のパンツなら俺は持ってるぜ。数に限りがあって、王族だけに与えられた特権だ。確かライにも少し分けてやったと思う。お前まさか、ライからパンツを貰う仲なのか? そうなのか!?」

 何のこっちゃ。

「いえ、パンツは貰ってませんが、温もり付きのシャツは頂きましたよ。いや~ライの逞しい肉体には惚れぼれしますねえ。あ、これはオフレコで」

 レオは予想だにしない地雷を踏んだように、ハラハラと膝を落とした。えっ、どうした?

「ライ……そうか、そうだったのか。済まない。あいつが妹を嫌うのは、天然の迷惑娘だからだとばかり思っていた。まさか男が……だからあんなにシャツのことで怒ったんだな。ごめんな、ライ……」

 
 なるほど。レオはとんでもない勘違いをしている。私を女性と知らないのだから、当然と言えば当然か。ライとは兄弟感覚で心配なんだろう。
 結構まじめなんだな。ちょっと阿保っぽくて良かった。面白そうなので暫く放っておこう。


「お前、あいつをライと呼ぶのか……もうそこまで親しいとは……紅よ、お前もライが好きなのか?」

「好きですよ。強いしイケメンだし優しいですからね。あのシャイなところがお気に入りです。フッ」

 レオは苦虫を噛み潰したような顔で、私に食って掛かる。

「クソッ! いいか、ライは真面目で清い奴なんだぞ! 悪いがお前にくれてやる気はない。一体どんな手を使ってライをたぶらかしたんだ!」

 清いって、私は貪欲な悪魔か!
 どんな手って、ちょっとオッパイを見られたというか見せたというか、でも誘惑はしてない。多分。

「誑かすだなんて、そんな滅相もない。ただふたりだけの秘事なんで言えません……」

「なんだと! チッ、まあいい。後はライノスに問いただすだけだ。あいつに頼まれて探しに来たんだが、俺が先に見付けて正解だったな。お前は旅に出るんだろ? ならさっさと消えろ。不愉快だ!」

 結構は私が悪者かよ。でもまあ、正体がバレずに済んだので良しとしよう。
 ライは私を探してくれていたのか。シャツ如きでなんともまあ、義理堅くて私には勿体ない男だ。
 しかしも、人間とはここまで豹変するものなのだろうか。あの時の親切なレオは何だったのだろう。私が煽ったせいなら、ここは大人しく退散しよう。

「では、失礼します。お元気で」

 さて、目標を失ってただの旅行になってしまったな。気合の入った私のやる気を返せ!
 そう思いながら私はきびすを返し歩き出した。

「おい紅、ちょっと待て。どうせ旅に出るなら俺の代わりに新種を探せ。ライが好きならそのくらい出来んだろ。それでチャラにしてやるよ」

 新種とはこれ如何に――

「新種? シルクウォームの他に?」

「ああそうだ。俺だって情報くらいは入手している。ただ余りにも未知の物で未確認のことの方が多いんだ。生殖場所も、色も形も分かってねえ。お前には無理かも知れねえが、綿パンの代わりにはなるだろう。せいぜい頑張んな」

 新たな目標か。それはそれで有難いのだが、レオの余りの不誠実さに、これでも王子なのかと些か腹が立つ。ライを思ってなのか、国を出た人間は用無しだからなのか。まったく、クソ喰らえだ。

「これはどうも。この件に関してライを巻き込むのは違げぇだろ。王子だか幼馴染だか知らんけど、自分のケツも拭けない奴にああだこうだと言われたかないね。レオさんもその悪態を隠してせいぜい頑張んな。一応は承ったんで、ライをよろしく」

 私はアラウザルに後足で砂をかける様にその場から去った。最悪な幕開けだ。


 ああ、やっぱりモブに徹しようかなあ……。

 

 
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