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21話 神の魔法
しおりを挟む私は挫折という窮地から救われたのだろうか。それと、ハクの言っていることも未だ理解できていない部分がある。スキルの《アンダーテイカー》だ。
ハク曰く、アラウザルで授かった魔法を試していれば、《アンダーテイカー》は現れなかった。
そう言っているんだろうけど、魔法でスキルを妨害など出来るものなのか。
「ねえハク。もし魔法を試していたらスキルは現れなかったの?」
「うんっとね……ヨッと」
そう言ってハクは私から離れ、また九尾の白狐に変身した。
「ハァ、ちまちまと面倒だからこの姿で一気に話すぞ。よく聞いておれよ」
お前も面倒だったんかい!
「はいはい、どうぞどうぞ……ハァ」
「お前も知っていると思うが、スキルはその者の体質、素質、適合性で選ばれるものだ。だがお前の場合、《プリテンダー》という支配権のスキルを有する躰だ。全てを惹き寄せる器と言っても過言ではない。このままでは幾つものスキルを持つ羽目になるであろうな。それを回避するために魔法を使う」
「なるほど。じゃあ私みたいな特異体質の人は、魔法を使って回避してるんだ」
ハクが冷ややかな眼差しで私を見る。えっ?
「馬鹿を吐かせ。私の回避魔法は神にしか扱うことのできない聖域魔法だ。一般的な攻撃を回避する魔法と一緒にするでない。それにスキルがそうポンポンと発生する訳なかろう。だから皆それぞれが持つスキルをレベルアップさせているのだ。まったく、お前は脳天気な奴だのう」
言われてみれば確かにそうだ。ひとつの物を極めて強者になる。でも私は初めから怪力で強者だ。
それを当然のように使うのは、やはり傲りではないのか。
「でも私は最初っから怪力で、それを当たり前のように使って、暴れて、絶賛されて自惚れてる。だから訳の分からないスキルが現れたのかって……」
「《ハーキュリーズ》のことか。ならば聞く。お前はその怪力で人を殺めたり、冒険者を蔑ろにしダンジョンを制覇したり、威張り腐り、ひけらかして来たのか? 天下をも獲ろうと思っておるのか?」
「そんなことしてないし思ってない! ただ怪力に甘んじて来た私はどうなんだろうって……」
「何を腑抜けたことを。例え女神が授けた力だったとしても、それは意味のある事で試練を与えた訳ではない。現に魔獣を倒し、それを自らスキルに変えて皆を認めさせ、支えて来たではないか。何を臆する必要がある。前世のお前が陰なら、今ようやく陽の当たる場所へ顔を出したばかりであろうに」
励まされいるのかプレッシャーを掛けられているのか、まだこれが序の口だなんて言われたら余計にナーバスになる。そんな私を気遣ってハクは来てくれたのだろうか。
「どうにもお前はメンタルが不安定で困る。そのために金髪が適任だと思うておったが、黒髪が邪魔をし嘘まで吐きおった。人間とは難儀よのう」
そうか、それでライが登場したのか。ライは神様のお眼鏡に適ったわけだ。でも私は期待していないし、付いて来てくれるとも思えない。
「ああ、嘘と言ってもあれは私をライから遠ざけるためにやった事だし、仕方ないよ」
「この阿呆が。そうではない、嘘とは新種のことだ。そんな物は存在しないのだ」
こいつ、白狐になると容赦なく言ってくるなあ。しかし、新種の話が嘘とはちょっと意外だ。そこまでして私をライから遠ざけたい理由とは何だろう。
もしかして、アラウザルからもいなくなって欲しかったのか。そんなに私が邪魔だったのだろうか。
そう言えば、私の強さに驚いていたっけ。それと私に早く帰るように急かしていた。ということは、レオは自分より強い者の存在を許せなかった。だからあんなに気前良くシャツを譲ってくれたんだ。
それに追い打ちを掛けるように、大好きなライからシャツの事で咎められたから腹が立った。しかも私が関わっているとなれば尚更だ。
そうか、そうだったんだ。やっぱりレオはライを愛しているんだね。ごめんねレオ。もう邪魔はしないよ。ちょっと寂しいけど、アラウザルにはもう戻らないから安心して。どうぞお幸せに……。
となれば、私を縛るものは何も無くなったわけで、自由に旅を満喫できるのだから、魔法を試したら白狐様にも退散頂くということで。決まりだな。
「おい、紅。何をニヤついた顔をしている。ちゃんと話しを聞いておるのか? 何やら良からぬ考えをしているのではあるまいなあ……?」
「ええ~まさかそんなこと有りませんわよ~。白狐様のお陰で挫折からも脱出できましたので、ちゃっちゃと魔法を試して解散致しましょう!」
「お、お前、金髪はいいのか? 一緒にいなくても寂しいとか恋しいとかないのか?」
「私が? そりゃ米粒くらいは寂しいですけど、人の恋路を邪魔するほど野暮な女じゃないので、私は一向に構いませんことよ。オーホッホホ!」
「ハアアァァァァァ……。駄目だこいつ」
何なのだ、さっきから阿呆だの駄目だのと言いやがって……。
分かってるよ。でもさ、モブは見て見ぬフリをするのが得意なんだよ。ライには自由でいて欲しい。
それだけ、それだけが私の出来ることなんだ。
さてと、馬鹿ばかりやってはいられない。多分、ハクの言うように新種は存在しないのだろう。
だが当てがない訳じゃない。でなければ私と旅を共にするとは言わないはずだ。
やれやれ、面倒くさいが好きな異世界人たちだ。
「ほら白狐様、さっさと教えてよ。魔法をさ」
それから、わざわざ戻らなくていいのに小狐に戻っては、あれやこれやと意味不明な説明をする。
私は解読しながらやっと魔法を習得した。
「じゃあいくわよ。『遮断魔法』《ネブラ》」
霧にベールで包まれた感覚が全身を覆う。特にこれといった違和感もなく完了した。それとこの魔法は常に身に纏っておくようにと言われた。
やはりこれにて解散とはいかないようなので、ハクに同行の理由を聞いてみたい。
「ねえハク。やっぱり付いて来るの? 新種は存在しないんでしょ? なら終了で良くない?」
「僕は紅と一緒がいいの。あのね、新種は嘘だけど古来種はいるの。紅は探すのー! キャハハ!」
笑い事じゃねえ、探したくねえ、古来種知らねえってば。やっぱりこの流れかあ。可哀想な私……。
「やっぱり?」
「うんうん!」
「とうしても?」
「……紅うるさい。僕お腹空いたの。早く行くの」
……こいつ。いつかその毛をむしり取ってやる。
荷物を薮の中に隠して、貴重品とアックスを持ち、ハクを肩に乗せて食料の買い出しに出掛けた。
珍獣を連れ歩いてもいいのかなあ……。
犬も猫も小狐も一緒かあ……。
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