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レダーリア山のドライブ登山
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原っぱを駆け川を越えている内に、辺りは木々が増えてくる。
おはぎコウモリがハニワへの警戒を解き、ペチペチと羽でパンチを繰り出すようになった頃(やめなさい)、車はレダーリア山の麓へと差し掛かった。
人の寄り付かない山だと聞いていたが、意外にも辿り着いたのは普通の登山道だ。踏みならされた獣道が木立の中へと続いてる。側には無闇に立ち入らないこと、という注意書きの看板が立てられていた。
決して車向きの道ではないが、何とか車幅は通れそうだ。こんな調子の山道は、ドルトナへの道中でも通った。
ステルスモードのまま、ズゾゾゾと発進していく。
「このまま進むと、魔除けの魔法陣を張った広場があるはずだね」
「そこから先は、道がひかれていないぞ」
イアニスは己の持つ紙の地図とナビ画面を忙しなく見比べつつ言い、リヒャルトもそう続けた。
二人の言葉通りで、数分も進むと木立のない開けたスペースに出る。見覚えのある魔法陣が、草の刈り取られた地面に敷かれていた。
例えステルスモードでも、車幅より狭い空間には進めない。ナビの示す方へ入り込むため、再びキラーバットを選択した。
「これじゃ通れないって時は、流石に代行使うからね」
「うわぁ…これは今、キラーバットになってるのかい?」
「中からはこう見えるのか…」
代行モードへ変更し、窓の外ぐにゃぐにゃ現象を目の当たりにした二人は目を見張った。
「そうだよ。言っとくけど、今は強さも見た目も全部キラーバットだから、魔物に出くわしても勝ち目はないぞ。ひたすら逃げるしか」
「そういう事か。恐ろしいね」
「何だと?キラーバットなど雑魚も雑魚ではないか!どうするつもりだ?」
「キキキッ、キキィ!」
「さらに雑魚の貴様が守れるわけないだろうが」
おはぎコウモリが何か言ったみたいだけど、リヒャルトに一蹴されている。
しめしめ…その言葉を待っていたぜ。
「代行中は、中から外に何もできないんだ。だから危ないなって時は、二人が降りて魔物を追い払ってくれよ」
そう提案すると、二人は仕方ないなと了承してくれた。よし、これでキラーバット状態でもある程度安心していられそうだぞ。冒険者である彼らも、何の抵抗もできず車の中で魔物にやられるのは怖かろう。
「そのリストとやらには他の魔物も載っているだろう。もう少しマシな奴はいないのか!」
「いたらとっくに選んでるよ…」
ふんぞり返って後ろから文句を言ってくるリヒャルトへそう零しながら、ピピピと代行リストを見せる。何しろヘルパピヨンはただの蝶々だし、ジズは二人に拒否られた。
魔物たちの項目を何気なく確認していた俺は、「スカルウォリアー」の文字をタップして指を止めた。
条件「相手からの視認」:達成
条件「運転手レベル8以上」:達成
固有タスク「光魔法で討伐する」:未
車体「スカルウォリアー」取得済
あれぇ?取得済みになってる。
こいつって、魔境で見た剣持ち骸骨だよな。外壁門の内部や、荒野のエリアにいた。
最後のレベル上げをした日の事を思い出す。あの日リストを見返して、使える車体は3匹だけだと確認したはずだけど……見落としていたのか?
正直、ダスターウルフやデュラハン以外の魔物は、車になってもノロ過ぎて使えなさそうだった。それで注意深く見てはいなかった気がする。レベル8で取れたのか、こいつ。
「一応、いたけど…」
「どいつだ?」
「へぇ、スカルウォリアーだ。また厄介な魔物に会ったんだね」
「……こいつは、キラーバットとどちらがマシなのだ?」
「俺に聞かれても…」
「微妙だな~」
3人で考え込んだが結局、鈍足な二足歩行でしかない骸骨くんより空中を進めるキラーバットの方が良いだろうという事になった。
ヘルパピヨンと同じく、スカルウォリアーもこの先使う日は来なさそうだな。
程なくして、狭い木立を抜けた。周囲は更に鬱蒼として、獣道すらない。ただ木や藪はまばらになっており、再び車体で進めそうだ。
何しろキラーバット時は計器盤の最高速度が40キロしかなく、アクセルを思いっきり踏みつけても眠たくなるような速度しか出ない。その上ガソリンは食うので、できる限りステルスモードで進みたかった。
そんな感じで、ナビを頼りにちょいちょい代行モードを挟みながら、山深くなっていくルートの先を進んだ。
リヒャルトは窓ガラスに張り付くようにして、暗い木立が通り過ぎて行くのを眺めている。イアニスは途中から言葉少なげに、己の地図に何か書き込んでいた。狭そうだ。おはぎコウモリはキラーバットで進んでる最中は落ち着かなかったが、それ以外は助手席側のサンバイザーにぶら下がり、リラックスしているようだ。
「図太いな、お前…」
「キィー?」
眠たそうに目をしぱしぱさせているおはぎコウモリに大物感を覚えつつ、木々の間を縫うように進んでいく。
「今、私のつけた目印を通り過ぎた…。さっきも言ったが、この先は断崖で進めん筈だぞ」
「えーと。こっちにある沢を渡ってから山を登ってくみたいだけど」
「その沢も渡れん。降りられても、登れずに後戻りできなくなる地形だった」
リヒャルトはそう言ったが、ナビ通りに進むのを止める気はないようだ。どうするつもりだ、と言わんばかりにナビ画面を睨んでいる。
そう言われても、キラーバットでパタパタ進むしかないのだった。
やがてその断崖に辿り着く。大きな岩肌には所々水がこぼれ出て、滝のように滴り落ちている。高さは4・5階建てのビルくらいだろうか。
そして、そこから少し逸れた地点に巨大な落とし穴のような溝があった。水がそちらへ流れ込んでいる。あれが沢だ。
「ここを渡るのだね。じゃ、護衛を買って出よう」
「キーッ!」
イアニスが名乗り出て、何故かおはぎコウモリもそれに続く。彼らをぼうぼうと草の生い茂る地面に降ろしてから、代行モードへ移行した。
「キィッ、キィッ!」
「うわっ!でかくてキモいな」
おはぎコウモリが大喜びでこちらに寄ってくると、後部座席からリヒャルトの嫌そうな声が上がる。
分かってもらえて嬉しいよ。
おはぎコウモリがハニワへの警戒を解き、ペチペチと羽でパンチを繰り出すようになった頃(やめなさい)、車はレダーリア山の麓へと差し掛かった。
人の寄り付かない山だと聞いていたが、意外にも辿り着いたのは普通の登山道だ。踏みならされた獣道が木立の中へと続いてる。側には無闇に立ち入らないこと、という注意書きの看板が立てられていた。
決して車向きの道ではないが、何とか車幅は通れそうだ。こんな調子の山道は、ドルトナへの道中でも通った。
ステルスモードのまま、ズゾゾゾと発進していく。
「このまま進むと、魔除けの魔法陣を張った広場があるはずだね」
「そこから先は、道がひかれていないぞ」
イアニスは己の持つ紙の地図とナビ画面を忙しなく見比べつつ言い、リヒャルトもそう続けた。
二人の言葉通りで、数分も進むと木立のない開けたスペースに出る。見覚えのある魔法陣が、草の刈り取られた地面に敷かれていた。
例えステルスモードでも、車幅より狭い空間には進めない。ナビの示す方へ入り込むため、再びキラーバットを選択した。
「これじゃ通れないって時は、流石に代行使うからね」
「うわぁ…これは今、キラーバットになってるのかい?」
「中からはこう見えるのか…」
代行モードへ変更し、窓の外ぐにゃぐにゃ現象を目の当たりにした二人は目を見張った。
「そうだよ。言っとくけど、今は強さも見た目も全部キラーバットだから、魔物に出くわしても勝ち目はないぞ。ひたすら逃げるしか」
「そういう事か。恐ろしいね」
「何だと?キラーバットなど雑魚も雑魚ではないか!どうするつもりだ?」
「キキキッ、キキィ!」
「さらに雑魚の貴様が守れるわけないだろうが」
おはぎコウモリが何か言ったみたいだけど、リヒャルトに一蹴されている。
しめしめ…その言葉を待っていたぜ。
「代行中は、中から外に何もできないんだ。だから危ないなって時は、二人が降りて魔物を追い払ってくれよ」
そう提案すると、二人は仕方ないなと了承してくれた。よし、これでキラーバット状態でもある程度安心していられそうだぞ。冒険者である彼らも、何の抵抗もできず車の中で魔物にやられるのは怖かろう。
「そのリストとやらには他の魔物も載っているだろう。もう少しマシな奴はいないのか!」
「いたらとっくに選んでるよ…」
ふんぞり返って後ろから文句を言ってくるリヒャルトへそう零しながら、ピピピと代行リストを見せる。何しろヘルパピヨンはただの蝶々だし、ジズは二人に拒否られた。
魔物たちの項目を何気なく確認していた俺は、「スカルウォリアー」の文字をタップして指を止めた。
条件「相手からの視認」:達成
条件「運転手レベル8以上」:達成
固有タスク「光魔法で討伐する」:未
車体「スカルウォリアー」取得済
あれぇ?取得済みになってる。
こいつって、魔境で見た剣持ち骸骨だよな。外壁門の内部や、荒野のエリアにいた。
最後のレベル上げをした日の事を思い出す。あの日リストを見返して、使える車体は3匹だけだと確認したはずだけど……見落としていたのか?
正直、ダスターウルフやデュラハン以外の魔物は、車になってもノロ過ぎて使えなさそうだった。それで注意深く見てはいなかった気がする。レベル8で取れたのか、こいつ。
「一応、いたけど…」
「どいつだ?」
「へぇ、スカルウォリアーだ。また厄介な魔物に会ったんだね」
「……こいつは、キラーバットとどちらがマシなのだ?」
「俺に聞かれても…」
「微妙だな~」
3人で考え込んだが結局、鈍足な二足歩行でしかない骸骨くんより空中を進めるキラーバットの方が良いだろうという事になった。
ヘルパピヨンと同じく、スカルウォリアーもこの先使う日は来なさそうだな。
程なくして、狭い木立を抜けた。周囲は更に鬱蒼として、獣道すらない。ただ木や藪はまばらになっており、再び車体で進めそうだ。
何しろキラーバット時は計器盤の最高速度が40キロしかなく、アクセルを思いっきり踏みつけても眠たくなるような速度しか出ない。その上ガソリンは食うので、できる限りステルスモードで進みたかった。
そんな感じで、ナビを頼りにちょいちょい代行モードを挟みながら、山深くなっていくルートの先を進んだ。
リヒャルトは窓ガラスに張り付くようにして、暗い木立が通り過ぎて行くのを眺めている。イアニスは途中から言葉少なげに、己の地図に何か書き込んでいた。狭そうだ。おはぎコウモリはキラーバットで進んでる最中は落ち着かなかったが、それ以外は助手席側のサンバイザーにぶら下がり、リラックスしているようだ。
「図太いな、お前…」
「キィー?」
眠たそうに目をしぱしぱさせているおはぎコウモリに大物感を覚えつつ、木々の間を縫うように進んでいく。
「今、私のつけた目印を通り過ぎた…。さっきも言ったが、この先は断崖で進めん筈だぞ」
「えーと。こっちにある沢を渡ってから山を登ってくみたいだけど」
「その沢も渡れん。降りられても、登れずに後戻りできなくなる地形だった」
リヒャルトはそう言ったが、ナビ通りに進むのを止める気はないようだ。どうするつもりだ、と言わんばかりにナビ画面を睨んでいる。
そう言われても、キラーバットでパタパタ進むしかないのだった。
やがてその断崖に辿り着く。大きな岩肌には所々水がこぼれ出て、滝のように滴り落ちている。高さは4・5階建てのビルくらいだろうか。
そして、そこから少し逸れた地点に巨大な落とし穴のような溝があった。水がそちらへ流れ込んでいる。あれが沢だ。
「ここを渡るのだね。じゃ、護衛を買って出よう」
「キーッ!」
イアニスが名乗り出て、何故かおはぎコウモリもそれに続く。彼らをぼうぼうと草の生い茂る地面に降ろしてから、代行モードへ移行した。
「キィッ、キィッ!」
「うわっ!でかくてキモいな」
おはぎコウモリが大喜びでこちらに寄ってくると、後部座席からリヒャルトの嫌そうな声が上がる。
分かってもらえて嬉しいよ。
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