親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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記憶と状況理解とゲーム知識。

6話『現状とゲームの理解。』

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「あとは知ってのとおり、今に至ります。3ヶ月かけて魔力を溜めて、

 先ほど魔法陣を起動した瞬間に、記憶を取り戻しました。

 記憶の内容は、この世界が「小説の世界」と酷似こくじしていることと

 これから、起きるであろう出来事くらいでしょうか」



※「小説の世界」=ゲームのことです



あとは前世の名前とか友達とか思い出せないが、これはどうでもいいかな。

これまでの話を、魔王ベリアル様につたえた。



「ふむ……。 興味深いな。

 よければ、断罪からの死と言うのを詳しく聞かせてくれ」



そう言いながら、ベリアル様はソーサーを持ち上げ、ティーカップを口に運ぶ。

うーん、すっごい絵になるなぁ。眼福である。



「ベリアル様にお願いした[呪いを]呪詛返じゅそがえしで返されたのですわ。」



「……ふむ」



考えながら紅茶を口にする姿も絵になるなぁ。


私とベリアル様は向かい合ってイスに座っている。優雅にティータイムだ!



今いる地下室はヴォルステイン領の首都ブルードにあるブルード城の地下牢屋だ。

貴族が使うための牢屋は庶民のリビングほどの広さがある。

丸テーブルとイスが3つ、長机と棚という簡素な部屋である。

ベットは邪魔だったので、片付けてしまった。



私はここを、研究室として改造した。

もちろん、お父様には許可をもらっている。



ヴォルステイン家は代々、王族の次に建国当時から存在する歴史ある貴族で、

一族から犯罪者など一度も出ていないという威信と自負をもっている。

実際にその通りで。



だから、「牢屋なぞいらん!」と掃除すらされていない場所だったのを

エミリアがもらったのだ。研究室として。



優雅に見えるようにティーカップを傾けて紅茶を飲む。

ほぅ、と一息つく。

何かを考えていたベリアル様は、カップを置いた隙を見て聞いてきた。



「それで、このあとのエミリア嬢は、どうするつもりだったのだ?」



カップのふちを指でなぞりながら、以前の「私」が考えていた事を言う。

「このあとエミリアは、[些細な嫌がらせをするだけの呪い]を

 ベリアル様に頼みます。

 内容は、服を破いたり、学習ノートを隠したり。

 以前の「エミリア」は人を傷つけることを嫌う性格でしたから。

 本当にくだらない内容の呪いだったんです」



そして、考えていたことに確信を持ってしまった。

こんな呪いを返されたくらいで、人は死なないのではないのか?



つまりは、ヒロインと王子に死の呪いをかけ、

その犯人をエミリアにしたてた人物がいるということ。



今の自分はどんな顔をしているのだろう?

苦笑か、呆れか、はたまた嘲笑か。

難しい顔をして、横目で私をうかがっていたベリアル様が口を開いた。



「……言いにくいんだが、それは成功するのか?」



この世界がゲームの世界通りなら、きっと成功していたような気がする。

婚約破棄をされた挙句、いわれのない罪をかけられる。

そして、誰がかけたか分からない[死の呪い]をエミリアが受け持ち、

呪いの効果で死を迎える。



「前世の物語の君は、められたんじゃないのか?」


ベリアル様も少し呆れたような、困ったような顔をされている。

その顔が少しだけ可笑しかった。そして、少しだけ嬉しかった。

(心配……してくれているのかな?)



「ふふ。ごめんなさい。笑ってしまって」



「いや……」



複雑な顔をさせてしまった。



「なんにしても、私はもう以前のエミリアではありませんし。

 記憶も混ざってしまいました。性格は幸いに前世と今世での

 違いもあまりなさそうです」



前世の自分も、今世の自分も、誰であろうと人が傷つくのは嫌いなのだ。

前世は薬剤師を目指していたくらいだしね。

ゲームのエミリアはきっと、外傷が無ければ問題ないと

思っていたのかもしれないけれど。

でも、「今の私」は前世と今世が混ざった私。



(だから、「私」は人を傷つけるような願いは言わない。

 それは、外傷であっても、心であっても同じだわ)



そして、決意の眼差しをベリアル様に向ける。

姿勢を伸ばして、真っ直ぐに見つめる。



納得したような表情のベリアル様は、イスから立ち上がった。



「そうか。では、[今の君の願い] を聞かせてくれ」



ベリアル様の様子はまるで魔法陣から出た時と同じ顔をしていた。

ニヤリと笑うような、自信に満ちたドヤ顔のようにも見えた。



その顔はきっと、私の決意を、分かってくれていた。

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