親子そろって悪役令嬢!?

マヌァ

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白魔法の文献編

213話『気づいてしまったこと 3』

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「まずは、マリク君に先に謝っておかなければいけません。

 巻き込んでしまって、本当にごめんなさい」



私のいきなりの丁寧な謝罪を受けて、マリク君は目を白黒させた。

皆も驚いている様子だ。





「エ、エミリア様、頭を上げてください。

 僕は巻き込まれたなんてこれっぽっちも思ってませんから!

 むしろ、僕にも関係があるかもしれない重要な事を教えて貰えましたし、

 僕を信頼して話をしてくれたのでしょう?

 謝罪して貰うような事はありません!」





顔の前で手をブンブンしながらマリク君は焦っている感じだ。

なんて優しいのだろうか。

私はさらに罪悪感に見舞われたけれど、ここまで言ってくれるマリク君に

これ以上は失礼だよね。





「それで、認識とか巻き込んだとか

 詳しい事をまだ聞いていないのだけれど?」





マリエラは私に問いかける。

他のみんなも気になっているようだった。

これいじょう引き伸ばしするなとマリエラに睨まれてしまった。





「そうね……。

 どう説明したらいいのか私自身も戸惑っているけれど……」





そして私は皆に説明した。



アリエ様に確認してもらい、マリク君にゲーム関連の糸が絡んだ瞬間を。





「私はマリク君が攻略対象かもしれないと言ったわよね?

 マリエラとベリアル様は可能性はあると答え、

 ナナリーは攻略対象だと認めた」


そう、認めた。

ヒロインであるナナリーまでもがマリク君を攻略対象だと認めたことで

糸が絡んでしまった。





「つまり、エミリアは私達ゲーム関係者とヒロインであるナナリーが

 マリク君を攻略対象だと認めたから

 マリク君が攻略対象になったと言いたいのね?」



真剣な表情のマリエラの問いかけに頷く。





「ええ」







「ねぇ、エミリア。

 マリク君だけじゃ、信憑性が薄いと思うのだけれど

 他にも理由があるんじゃない?」





ここで何かを考えていたナナリーが私に問いかけた。

他に理由ね……





「そうね。

 実を言うと、この経験はマリク君の時だけじゃないのよ」





私はベリアル様に視線を向けて言った。





「ベリアル様が学園に編入してきて、授業を初めて受けた日。

 ナナリーと初めて出合った日。

 あの時、私はベリアル様を攻略対象だとは知らなかったわ」





知らなかったというか、思い出だしてなかったが正解か。

私は、ベリアル様の学園初日の事を思い出しながら皆に説明する。







「私が思い出したのは、ベリアル様とナナリーが出会った後のこと。

 談話室で、ベリアル王子との出会いのスチルが頭の中に浮かんだの」





「それ、私も同じよ。

 ベリアル王子が攻略対象だって思い出したのは

 ナナリーとベリアル王子が接触した日の休み時間だったわ。

 急に思い出したというか……」





マリエラも私と同じように急に思い出したのだと言った。

マリエラの言葉に私は頷き、ナナリーに視線を向ける。



「ナナリー、貴女は?」





「わ、わたし……」





ナナリーは何か気づいたような酷く脅えたような視線で

マリク君をちらりと見た。



(ナナリーも気づいてしまったのね)





「わ、私、知ってた。

 留学生のベリアル王子は攻略対象だって」





やっぱり。



ナナリーの言葉は続く。





「いいえ、最初の挨拶のときにベリアル王子の反応がゲームと違ったから、

 私、意地でも攻略してやるって思っちゃったの……

 だから……その……

 私が不用意に近づいてしまったから、ベリアル王子の糸が増えたのよね?」





ナナリーは、自分が目をつけたからベリアル様の糸が増えたのだと

思ったようだった。

だけど、それは関係ないように思う。



以前シェイド様が私達に関わったら糸が増えると言っていた。

だから、





「ナナリー、糸が増えた原因は貴女だけのせいではありませんよ。

 この場合は糸が絡む最初の条件が貴女の認識だっただけ。

 糸が絡んだあとの増え具合には貴女だけの責任ではありません。

 私達、ゲーム関係者全員に関わっていく程に糸は増えます。



 そして、糸に関してですが……

 ナナリー、貴方の糸の数がコルトの街で少なくなったと

 シェイド様やアリエ様がおっしゃっていたでしょう?

 それは、貴女自身が『自分はヒロインではない』と思ったから

 糸の数が減ったのだと思います」





そう、思う=認識だ。

現に、今のナナリーの糸は元の数に戻ってしまっている。

いろいろあったから、自分はやっぱりヒロインかもしれない? と

思いなおしてしまったのだろうね。


いろいろと、イベントだけじゃなく、

ヒロイン補正の何かも発動しているのだから

しょうがないのだろうけれど……。



(エリクサーとかね。)





「その話が本当なら、自分達に絡んでいる糸の数も把握したほうが

 いいわよね……?」





と難しい顔のマリエラの言葉にマリク君とベリアル様がが頷いた。







「そうね。

 アリエ様、シェイド様、お願いします」



私の言葉に、2匹の星霊は頷き、机に降りてきた。



この後マリエラの提案で星霊シェイド様とアリエ様に

『ゲームに関係する糸』の数を調べて貰った。



一番多い順から



私こと、エミリア。

次にヒロイン、ナナリー。

続いて、マリエラ、ベリアル様、マリク君の順だ。



いつから糸が見えていたのかについては、

私やナナリー、マリエラは出合った時から。



ベリアル様の糸は学園に編入してナナリーと初めて出合った時から。

糸の量は、ゲーム関係者と一緒にいる内に増えていったそうだ。

一番多く近くに居たのは私だから、増えた原因は私だったり……。





他の攻略対象に対しては、編入した時に糸は既に絡んでいて、

一番多い順からエドワード殿下、コンラート様。

カイン様とケヴィン君はナナリー自身が論外だと思っていたおかげか、

糸は少ないようだった。



そして糸が絡んでいる人物が実はもう2人いる。

それは、クレス殿下とリーテ様だ。



この2人に関してはまだゲームが始まっていないはずだ。

ゲームの始まりは4月。



だけど、この2人にはもう糸が絡んでしまっている。

時期は、クレス殿下の糸はコルトで会ったときにはすでに。

リーテ様は、コルトの街では無かった糸が、コルニクス軍で再開した時に。



いつ糸が絡んだかについては、たぶんだけれど、

ナナリーとマリク君、リーテ様とで魔物と戦った時だろう。

一緒に馬で旅をしている時には、それまで絡んでなかったのだから。





あとは、ジョシュアとシンシアに関してだけど、糸はかなり少なかった。

だけど、糸がなくならなかった理由は本人たちが自分達を

ゲームの登場人物に転生して来たと認識していたからだろうね。

コルトの街でシンシアは糸が無くなってしまったわけだけれど……。



でも、記憶を無くして糸が消えたのだとしたら、

ゲーム関係者と一緒にいたら、嫌でもゲーム関わることになる。

イベントが起きて、ゲーム関連の記憶を取り戻したら、

糸と一緒に失ったシンシアの記憶も戻ってくるのでは?



とか思ってしまったけれど……。

決め付けはよくないか。



この話はジョシュアとお母様にも相談する必要がある。



それに、もしゲーム関係者と関わって糸が増えて記憶を取り戻せるのなら

ジョシュアより糸の多い、カイン様やコンラート様は

前世の記憶もち、ということになるし、

ベリアル様もとっくに前世の記憶を持っている事になる。



さらに言えば、マリク君は『聖霊の2人の乙女』のシークレット攻略者となり

かなりゲーム知識に詳しい事になるよね。

これは、リーテ様やクレス殿下にも当てはまる。





だけど、マリク君の場合は特別な気がする。

ゲーム関係者の認識で登場人物の一員にされてしまうのであれば、

他にも候補はいそうな感じだ。

だって、まだゲームが開始されたわけではないのに、

マリク君が攻略対象になってしまったのだから。



もっと他に、この世界には私達のしらない事があるのかもしれないね。



例えばだけれど、シークレットや攻略対象に選ばれる人間は実は

この世界が基準で、この世界で起こったことが

ゲームの選択や登場人物としてあちらの世界のゲームとして

アップデートされる……なーんてね。



だって、繰り返している人生の人がいるんだもん。

そう考えてしまってもおかしくはないでしょう。





「まぁ、今考えてもこれ以上は考えは浮かばないわよね」





マリエラの言葉に皆うなずいた。







「なんというか、今更だけれど、私達は大きな何かの理のようなものに

 縛られているのだと分かったわ」



ナナリーがグッタリした様子で紅茶を一気に飲みほした。



皆疲れた表情だった。



しばらくして夜の金の音が響き、私達の内緒話は終了になった。

明日は砦にエドワード兄率いる魔物の討伐隊が到着する。



私達は解散して、明日に備えるのだった。

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