猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

文字の大きさ
32 / 195
1章【錬金術の街編】

第31話・勘違い。

しおりを挟む




「アレが─⋯」


8月10日、ついに目的地であるベルトンを発見した。
まだ1km程距離があるが、今日中には到着できるだろう。適当な木に登り、高い所から周囲を確認したかっただけだが、既にここまで歩き進んでいるとは思ってはいなかったな。

⋯⋯にしても大きな街だ。
木の上に登っていたお陰で、街の全体図がなんとなく見える。街の周囲が壁に覆われているのは、魔物の侵入を防ぐ為だとして、それを除いてもかなりの広さだ。

どうやら楕円の形状に創られている街らしく、平たい山の様に中心が盛り上がっている。そしてその中心には、城の様な建物が立っているっぽい。⋯⋯見た感じ、3階建てか?

あーゆー建物があーゆー位置にあるという事は、王様でもいるのだろうか。⋯⋯イイね、中々異世界っぽい。


「ふーむ、問題もありそうだな」

「クエッ?」


街へ入る為の門の所に、人影が見える。
竜の視力ならこの位置からでも目視は可能なのだが、門の前に、武器を持った衛兵らしき人間が2人居るようだ。

加えて、街を護っている壁の上部に大砲が設置されている。
つまり、あの壁には人が入れるスペースがあるという事か。⋯もしもの事を考えて、衛兵の総数を確認して起きたいな。

⋯だがまぁコレは後ででもいいか。
問題は『もしも』が起こった場合だ。人間に危険因子と見なされれば、どう説明しようが街へ入る事はできないだろう。

衛兵を倒してしまっては、余計に危険視されてしまう。
⋯なにより、あれだけデカい街だ。そりゃあ居るだろうな、冒険者。

基本戦闘力は分からないが、仮にバルドール並の冒険者が数人いた時点で、俺は撤退を余儀無くされる。⋯⋯というか、逃げる前に殺されそうだが。


「⋯⋯ハァ仕方ない」


あんまりしたくないが、ここは徹底的に媚びるか。
出来るだけ動物的に⋯⋯。いや、理性的な方がいいか?

兎に角、雑魚っぽい雰囲気出して接せればいけるだろ。
街に入っても即座に対応出来るって思わせとけば、イける気がする。

⋯⋯フッ、日本のリーマン舐めんな。
社会に出てから、俺がどんだけ頭下げてきたと思ってる。衛兵なんてチョチョイのチョイよ。


〖チョチョ⋯?〗

「余裕のよっちゃんってコト」

〖ふぇ???〗


⋯⋯伝わらんのか、コレが。
ったく、異世界なんてのは愉快で退屈な所だな。⋯⋯まぁ全部引っ括めて気に入ってるけど⋯⋯なッ!


木の頂上から飛び降りて、俺は台車に手を掛けた。
着地と同時に、虎徹が荷台にバウンドして乗るのを見ると、大分肝が座ってきた様だ。

前までは、頭に乗せて少し速度を出しただけで悲鳴上げてたからなぁ⋯⋯


「よ~し、よしよしよし⋯」

〖アッ、それズルい〗


お前は実体ないだろ。
あったら虎徹みたいに撫で回してるわ。


〖ホント?〗

「⋯⋯勿論だが、実体になれるなんて言わないよな?」

〖うん、なれない。⋯⋯けど、うれしい〗


おぉん。
仮にコイツが美少女だったら惚れてるんだがな~⋯。いや、ショタも嫌いじゃないが( ◜ω◝ )


「さぁ、進むぞ。いざベルトン!待ってろよー」

〖えっ、なに今の顔〗


よーし、細かい事な気にするな。
楽観的に行くとしよう。⋯美味い飯とかかんがえながらな。

まずやるべき事は、金銭の入手だな。
うし。テュラングルの鱗、有効に活用させてもらうぜ。


〖む、無視しないでよ!なにさっきのキモい顔!〗

「いくぞーーー」



NOW  LOADING⋯




「⋯⋯⋯よォ、白龍」
 

魔王は静かに口を開いた。
彼の視線の先には、全身に血が滲んだ幼女の姿があった。幼女は魔王に気が付くと、微笑を浮かべて返した。


「チッ、手こずらせやがるぜ」

「⋯⋯悪いね♪」


幼女のジョークに、魔王は『フン』と鼻息をした。
下らないが、それ以上に目の前の存在が気に食わなかった。まるで朽ちた大樹の如き有様になりながらも、生にしがみついて離さない彼女に、怒りが大きく増す。

だが、魔王も理性を持った生物。
一時の感情に左右される程、矮小な器の持ち主では無かった。


「お前とは、いずれ決着をつけてやる。⋯⋯だが、今ではない」

「フフ、勿体ない。チャンスなのに」


再び舌打ちをしてから、魔王はその場を立ち去った。
その内心は怒りに満ちていたが、それとは別に、彼は思っていた。

─本当にチャンスだったら、既に殺っている─

魔王は溜息を零しながら、右手をかざした。
何も無い空間にかざされたその掌から、黒い霧を生成。その霧は、意思があるかのように蠢いて形を成した。

それは、門。

魔王は、暗闇の中へと消えていった─⋯



 












「⋯─やれやれ」


残された幼女は、地面に仰向けに寝転んだ。
空は見えない。眼前に広がるのは、真っ暗な闇だけ。

それはまるで、自身の行く末を暗示するかのような⋯⋯


「う~ん!もうっ、らしくないぞ!私!」


勢い良く身体を起こした幼女は、全身から出血をした。
しかし、幼女が目を瞑ると、瞬き一つをする間に傷は塞がり、血で赤黒くなっていた肌と髪は、元の美しい白さを取り戻していた。

これは魔法では無い。
ただ純粋に、彼女が回復に意識を集中させただけだ。だが、それだけで全身の傷は完治していた。


「⋯⋯おや、もうベルトンについたんだ。⋯いよいよ私の運命の分かれ道って所かな」


独り呟くと、幼女はその姿を龍へと変える。
繊細な輝きを放ち、神々しくも力強い覇気を持つ純白の龍は、ゆっくりと羽ばたいたのだった──⋯

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...