猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【王都編】

第43話・【王都・クローネ】

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王都・クローネを護る、巨大な防壁。
いかなる魔物の、いかなる攻撃からも都を護り抜くと云われており、見た目以上の堅牢さを誇っている。

そんな防壁には、都民や商人⋯冒険者等が利用する、東西南北にある4つの門の他に、『もう1つの出入口』が存在していた。『それ』は王都内を通る、魔導列車の専用の出入口⋯⋯

⋯なのだが、万が一の魔物の侵入対策として、列車の『往来時にのみ』防壁に出現する仕組みとなっており─⋯


((((死ぬかと思った⋯⋯))))


⋯─初めて魔導列車で来る者達⋯⋯特に、王都内へ入る瞬間を目の当たりにした人々からは、(悪い意味で)スリル満点という意見が絶えない。⋯⋯と、いうのをヴィルジールとソールは知っていた様で、


「ギャハハハ!!いいモン見れたぜーッ!!」

「ひー、ひー、腹痛てぇーー!!!」


俺達の盛大なリアクションに絶賛バカ笑い中だった。
シルビアが最後に放った台詞が特にウケているらしく、ソールのモノマネを見たヴィルジールは過呼吸になりがら笑い転げていた。


「この恨み、いつか晴らしてやるんだから⋯」


そう小さく呟いたシルビアは片手で目元を覆う。
額に当てた手を上頬にスライドさせ、親指と人差し指で下へ押すシルビア。ヘンなカオになっている彼女を背景に、俺はゆっくりと立ち上がった。

外道2人に顔を眉をひそめながら状況を確認すると、シュレンとサンクイラが揃って腰を抜かしていた。その横ではハクアが頭を抑えて左右に振っているが⋯⋯痛そうな表情だ。察するに、驚いた反動でぶつけたのだろうな。

ニナは⋯⋯おおっと、ソールの頭をひっぱたいて文句を言い始めたか。スンゴイ険悪な表情してるし、関わらんとこ。


「大丈夫か2人とも⋯?」

「さ、サンキュ銀槍竜⋯」

「うぅ、ぅわあ⋯っ」


腰を抜かしているシュレン達へ手を貸すと、サンクイラはうるうるの目で縋り寄ってきた。おーよしよしと立たせると、ついに号泣⋯⋯とはならず、目尻から零れかけた涙を『ふんっ』と引っ込めた。⋯⋯どういう仕組みなのか聞くのは、また今度にしよう。


「もうっ!ヴィルジールさんっ!嫌いですっ!」

「悪かったって!銀槍竜がよぉ、ソールから話を聞いてなければよぉ、俺もこんな事は思い付かなかったって!」

「おいこら、さり気なく責任転嫁するなよ」

「そうだぜヴィルジール。俺ァ、あくまで“オススメ”ってェ事しか言ってねェ」


うんうん⋯⋯って、え?コレって俺が元凶なのか?
イヤイヤイヤイヤ!やいやいやいやい!おかしい、なぜお前らはそんな顔ができるんだ。


「さぁ、立て立て!王都に到着だぜ、お前ら!」

「っしゃァ、俺は先に出てるぜェ」

「ソール!まだ話は終わって⋯⋯いや待ちなさいよっ!」


俺が下唇(顎)を出しながら不満をアピールするが、ガン無視して号令をかけるヴィルジール。⋯コイツいつか倒す。


「なーに突っ立ってんだシルビア!ホラ来い!」
   
「はぁ⋯⋯ホント、調子いいんだからアンタ⋯」


先に列車を降りたソールとニナに続き、シルビアもヴィルジールに腕を引かれて降りていった。⋯⋯手首を掴まれたシルビアの頬が少し赤くなった様に見えたのは、きっと気の所為だな。

あの見た目でも、2人とも30だし。
まwさwかw、その歳でそんな乙女なリアクションはしないだろう。⋯⋯しない、よな?


「お前らも、さっさと来いよー!」


割と真剣に考えていると、外のヴィルジールが俺達を呼んだ。
⋯⋯さっきから上機嫌なのは、ドッキリが成功したからか⋯?


「⋯私達も、そろそろ降りますか」

「そうしよっか。⋯ハクアさん、大丈夫ですか?」

「⋯気にするな」


まぁ⋯細かい事は後にして、今はとっとと列車を降りよう。
王都に入ったといっても、列車はトンネルの中を走っていたから実感が湧かないし。取り敢えず、周囲の把握がしたいな。


「遅ぇぞお前ら!」

「貴様、よくも⋯」

「まぁーまぁ!カリカリすんなハクア!」


俺達が列車を降りると、此方に手を振るヴィルジールの姿が。
不満を零すハクアを華麗にスルーし、ヴィルジールはシュレンとサンクイラの肩に手を添えて誘導を始めた。

周囲はやや暗く、トンネルの様な⋯⋯というか、トンネルだ。
見た所、王都を貫通しているらしい。前後を見ても陽の光が見えないのは、列車の出入口が無くなっているからだろうな。


「早く歩けお前らー!」


⋯さっきからヤケにテンションが高いのが気味悪いが、一体何を考えているんだ?アイツ⋯⋯


「⋯なんかテンション高くないですか?」

「ンー?」


俺と同じ事を考えていたのか、サンクイラは首を傾げながら質問した。先程のドッキリの直後だし、まだ何かあるのではと俺達は警戒しているワケだが⋯⋯


「いいから、いいから」

「もー⋯」


どうやら詳しい説明を避けたいらしい。
まぁさっきとは違って、悪い事を考えている表情ではないので警戒は緩めてもいいか。


「⋯アレ?先に降りたヤツらは何処だ?」

「ん?⋯あぁ、ソールとニナは先に『入ってる』よ。2人は此処に来た事があるからな」

「入って⋯?」

「ま、行きゃあ分かる」


『入ってる』とは、どういう意味だろうか?
列車は既に王都内に入っている筈だが⋯⋯と、ここまで俺の思考が巡った時、ある光景が目に入った。


「登録、完了致しました。入都を許可します!」

「⋯凄い技術ね」


そこには、片手に持っている謎の球体に目を見開くシルビアの姿があった。彼女の前には、制服を来た男性が1名と重装備の人物が2名おり、彼らの背後に巨大な扉がどっしりと構えている。

あの重装備の連中は衛兵だろう。
⋯⋯あぁ、このトンネルは『そういう事』か。

例えば、列車に魔物や悪者が乗っていた場合、王都の人々への被害は免れないだろう。列車に乗って防壁を通過するだけで王都に入れるのであれば、そういったケースもありうる。

そんなケースに備え、王都内の魔導列車の線路はこのトンネル内に収まっているのか。王都への扉には衛兵を配置し、なにやら『登録』という事もしている⋯と。

魔導列車の乗客用の、王都への出入口ってワケだ。


「ではシルビア・アーレン様、此方へ⋯」


俺が異世界なりの危機対策に感心していると、制服の男が扉に手をかざした。その直後、巨大な扉が音を立てて開き始め、それの前にいた衛兵2人は素早く道を開ける。


「ちょっと待った!」


扉の隙間から光が差し込みかけたその時、トンネル内に声が響いた。俺含め、全員が声の方向に振り向いたが、真っ先に口を開いたのは制服の男だった。


「これはヴィルジール様!お待ちしておりました!」

「おう」


男は声の主であるヴィルジールを見るなり、その場で一礼をして目を輝かせる。後ろの重装備の2人も、頭防具の隙間から見えるその瞳は見開かれ、輝いていた。


「扉開けるのは少し待ってくれ。コイツらもまとめて通るぜ」

「かしこまりました!」


ヴィルジールの頼みに、男は素早く扉から手を離す。
その対応に疑問を抱いていると、俺の耳元にシュレンが顔を近付けた。


「ヴィルジールさんね、王都でも有名な冒険者なんだよ」

「マジで?聞いていた感じ、王都は実力者ばっか集まってる場所だって⋯」

「うんうん。そんな所でも、ヴィルジールさんの強さは通用するらしい!」


成程⋯前世で言えば、芸能人が来た!って感じなのか。
⋯いや、羨ましくないし。俺も有名人になりたいなんて思ってないし。


「なによヴィルジール?アタシ、早く荷解きしたいんだけど⋯」

「そう言うなって、な?」


ヴィルジールは制服の男へ視線をやると、そのまま俺達の方へと移した。


の話は聞いているな?」

「えぇ、勿論。⋯あの、本当に大丈夫なんでしょうか?」
    
「心配無い、俺とガバンが保証するぜ」


あの男、チラチラと俺の方を見てなんだ?
ヴィルジールと小声で何か話しているが、怪しんでいるのか?
⋯魔物に対しての対応は、彼の立場的に正しいのだろうが⋯⋯ちょっとヤな視線だ。


「えーそれでは皆さん、どうぞ此方へ!」

「うし、シュレンとサンクイラ、銀槍竜はコッチに来い。ハクアは登録済みだよな?」


ハクアは首を縦に振ると、制服の男に近寄った。
お前の顔も見たくない、といった様子でヴィルジールに鼻を鳴らすと、制服の男から例の球体をやや強引に受け取った。

ハクアが球体を握ると直ぐ、それはピンク色に発光を始める。
数秒して、光は青色へと変化。それを見ていた制服の男は軽く頷き、ハクアから球体を回収した。


「お待ちしておりました、ハクア・クレン様。⋯⋯他のお方は」

「気にするな、早く開けろ」


制服の男はヴィルジールの方に目をやるが、彼の『開けてくれ』というアイコンタクトに応じ、扉に手を翳した。


「ったく、ジョークの通じないやつだなー」


ハクアが通り、再び閉まる扉を背にヴィルジールは腕を組んでボヤいた。あれがジョークで通じるか!と、俺はツッコミかけたが、それより早く制服の男が球体を手渡してきた。

シュレンとサンクイラにも同様の物を渡すと、『少々お待ちください』と言って男は1歩下がる。野球ボール程の球を眺めていると、ハクアの時と同様に発光しだした。


「⋯あの、コレって?」
 
「ん?⋯あぁ、それは『登録』だ。初めて王都に入る者は全員やる決まりなんだよ」


シュレンが球体をコロコロしながら聞くと、ヴィルジールは軽説明を始めた。

この球体は、上限人数はあるが『魔力の記憶』が可能らしく、こうして手に持っているだけで、それが行われているんだとか。この球体に魔力が記憶されれば、次に王都へ来た際に『本人確認』として役立ち、王都入りをスムーズにできる⋯⋯と。

所謂いわゆる、身分証明って事だな。


「へぇ~凄い!⋯けど、それだと⋯⋯」


と、そこまで言いかけたシュレンは、途中で口を閉じた。
まぁ言いたい事は俺も同じで、『それだと穴があるんじゃないか』って話だよな。魔力の登録だけで王都へ入れるのならば、悪巧みしている様な連中も簡単に通れてしまう訳だし⋯⋯


「心配は無用だぜシュレン。その為の、入都審査員だ」
 

ヴィルジールがそう言うと、制服の男はビシッと敬礼をした。
後ろの鎧を着た2人も同様、持っている戦斧を地面に打ち付けて胸を張る。

 
「なんでも魔力で出来る世の中ではあるが⋯⋯結局は人の目って事だな」


はぁ~、すげぇな。
技術が発達した前世でも、魔法が広まった異世界でも、考える事は同じなんだなぁ。これまた、見聞が広がったぜ。

⋯っと、球の発光が収まったな。


「はい、登録が完了致しました!

シュレン・バナフ様、

サンクイラ・ロレタード様、

えっと⋯⋯銀槍竜様!どうぞお通り下さい!」


俺ら3人の登録が完了し、審査員は例の如く扉に手を翳した。
音を立てて開いていく扉に年甲斐もなくワクワクしていると、ヴィルジールはとある提案をした。


「な、ちょっとお前ら目ぇ瞑ってろよ?」

「⋯一応聞くけど、どうして?」

「頼むッ!」


シルビアの疑問に対し、ゴリ押しで通そうとするヴィルジール。両手を頭の前で擦り合わせ、ギュッと目を閉じているその様子は、なんとも子どもらしい。

そういえば、シルビアとヴィルジールは幼馴染だっけと思いながら2人のやり取りをみていると、今度は俺達にも頼み込んできた。


「もし、なんか悪い事したら⋯」

「分かってる!そん時は、どんな罰も受ける!」


なんやかんやでヴィルジールのゴリ押しに折れた俺達は、前が見えない様に目を片手で覆った。


「行ってらっしゃいませ!」


審査員さんの心地良い見送り後、後ろで扉が閉じる音を確認。
指の隙間から差し込む光に期待を寄せていると、前方を歩いているヴィルジールの影が停止したのが見えた。


「よし⋯お前ら、もういいぞ!」


ようやくか、なんて思いつつ俺達はゆっくりと手を退ける。
勿体ぶって何が目的なのか⋯⋯と思いかけた俺と、恐らく同じ考えだったであろうシルビア達は、広がる光景が目に入った瞬間、絶句した。


「「「「⋯⋯⋯⋯!!」」」」

「ようこそ、王都へ」


王都を背景に両手を広げたヴィルジールは、クールに言った。


【王都・クローネ】

総面積2.4㎢、総人口2万1236、

円形の巨大防壁に囲まれた都は、王宮を中心として作られた。
王宮からは8方向に道が別れ、外側に行くにつれて枝分かれと合流を繰り返している。

複雑な構造ではあるが、一定間隔で設置してある地図板と案内所のお陰で、道に迷う事は子どもですら滅多に無い。

壁側は主に宿泊施設や酒場、武防具の販売店が目立つ。
そこから中心へと進むと雑貨屋やパン屋、市場といった王都民向けの店が立ち並び、王宮付近では貴族の豪邸と高級品を扱う店が多く見受けられる。

王都南側⋯魔導列車の駅は広場となっており、行き交う多くの人々と、中心の立派な噴水が目を引く。⋯が、初めて王都へ来た人々、主に冒険者達が注目するのはソレではない。


が冒険者ギルドの王都集会所だ」
 

そう言うと、ヴィルジールは王都中心を指差す。
巨大な王宮の横にある、これまた巨大な建物。剣と盾がクロスしたロゴには『ギルド・クローネ』と大きく書かれた看板が掲げられていた。


「⋯で、どうだ?凄いだろ?」

「え、えぇ⋯」


俺達が周囲を見渡していると、ヴィルジールはニヤニヤしながらシルビアに尋ねた。だが彼女は初めて見る光景に夢中になっており、生返事1つで終わらせて風景鑑賞へと戻った。

少しだけ肩を落としたヴィルジールは、今度はシュレン達へと感想を尋ねる。しかし2人もシルビアと同様、意識が王都へと向かっていて、人の話を聞いている場合ではないらしい。


「な、どうだ銀槍竜?」

「凄いな、王都って」

「だろぉ?!」

「いやお前の街かよ」


俺は、まぁ⋯前世が日本だしな。
混雑してる交差点、満員の電車とかには慣れているから、比較的冷静を保ってている。⋯とはいえ、凄まじくファンタジーな光景に、内心ウッキウキだが。


「いやー俺も、初めてここ来た時びっくりしてなぁ」

「まさか、さっきからテンション高かったのって、俺達のリアクションが見たかったからか?」

「そう!」


なんでガキな⋯⋯と、歳が6つも上の人間に思うなんて。
まぁ⋯⋯ちょっと母性出かけたのは秘密だがな。


「やれやれ⋯。それで?これからのスケジュールは?」

「すけじゅーる?」

「⋯あぁ、予定は?」

「すけじゅーるってなんだ?」

「そこはいいから!」


流石に、スケジュールは使われてない言葉だったか。
何が使われていて、何が使われてない言葉かイマイチ分かんないが⋯⋯まぁそれはいいや。


「取り敢えず、今からあの集会所に向かうのか?」

「ンま、好きにすればいいんじゃねえか?⋯ただ、」

「ただ?」

「午後の鐘が鳴る頃には、一旦集会所に集合だ」


午後の鐘とは何ぞやと聞いてみると、王都では正午と夕方に王宮の鐘が鳴るらしい。役割としては、前世での学校のチャイムとほぼ同じっぽいな。⋯⋯つくづく、世界違えど思考は同じだと思い知らされるぜ。


「わ!わ!シルビアさんアレ見て下さいよ!」

「どうしたの⋯って、やぁっだ!」


何かを見つけたサンクイラがソレを指差す。
名指しされたシルビアがその先を見てみると、口を両手で覆って1歩後退りした。
   
『クローネ・フラン』という看板が吊り下がっているその店は、どうやら女性向け服の専門店らしい。ショーウィンドウのマネキンには、かわいい系からオトナ系といった服が着せられており、この2人は今にも駆け出しそうに目を輝かせていた。


「ハハ、荷物はここに置いていっていいぞ。ギルドの連中が運んでくれるからな」

「「え!」」


⋯ヴィルジールめ、分かってやがるな。
今から自由行動だと伝えた上で、自分の荷物を運ぶ手間を省いた。しかもこのタイミングで。
 

「ほいっ、各自解散っ!」

「し、シルビアさん!」

「行きましょ行きましょ!」
 

ほぉら、凄いダッシュで向かっていたぞ。
冒険者なんて、どんなに綺麗事を並べようが、殺し合いの中に生きてるヤベー連中だと思っていたが⋯⋯あくまでも人間なんだな。


「⋯そんで、シュレンは⋯って」


俺も何かしようかと、真横にいた(ハズの)シュレンに声をかけた。しかし、そこには誰もおらず、整備された石畳の地面が見えるだけで⋯⋯


「おじさん、それ3つ!」

「ハイよ!900ゼルだよ!」


100m程先にあった店に、シュレンは飛びついていた。
⋯あれは、ハンバーガーか?いや、どちからと言うとタコスとかドネルケバブみたいな料理だ、ここからでも香ばしい匂いがする。⋯というか3つとも食うのか、凄い胃袋だな。


「⋯この感じだと、ソール達も観光に行ったのか?」

「いや、ソールはギルドに向かった。ニナは中心街だろうな。アイツ、アクセサリーとか好きだし。ハクアは⋯多分、図書館にでも行ったんじゃねえかな?」


ソールがギルドに⋯?意外だな、アイツが遊ばないなんて。
酒場もあるし、美味そうな飯屋だって多くあるのに。


「で、お前は?どうすんだ?」

「俺は一旦ギルドに行こうかな、眠いし。ヴィルジールは?」

「ンー⋯会いてえ人がいるから、俺もギルドに向かうぜ」
 
「会いたい人?」

「そ。⋯まぁ俺の先輩って感じだな、冒険者としての」


聞けば、新人の頃に冒険者のいろはを教えてくれた人だとか。
王都に住んでいるらしく、56という歳だか未だに現役らしい。ヴィルジール曰く『俺なんか足元にも及ばない』んだと。嘘をつくな、嘘を。


「ついでに、王都について色々教えてくれよ。オススメとか無いのか?」

「あー、それなら─⋯」


ギルドに向かいつつ、俺とヴィルジールは適当な会話をした。
途中で食い物を買って食べ歩きしたり、俺が気になって指差した場所をヴィルジールが説明したり⋯

いやデートじゃねえか!って思ったね、うん。
だが、そっちの方が

あの、王宮から俺達を見下ろす人影からな。
⋯多分、ヴィルジールも気が付いているんだろうが⋯⋯


「そこのハンサムなお兄さん!当店自慢の特製ドリンクはどうだい?」

「お、美味そうだな、2つくれ」

「毎度ありー!!」







今は、いいか──⋯

 
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