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1章【王都防衛迎撃作戦編】
第61話・迎撃戦に向けて
しおりを挟む『ファリド、敗れる』。
その話題は、瞬く間に王都全体へと広まった。
当然だろう。ゼクス最強と謳われた男が、生後1年も経たぬグレイドラゴンに撃破されたというのだから。
王都の冒険者達を伝い、国外にまで知れ渡った試合の内容は、正に名勝負。『一進一退の攻防を繰り広げ、相内気味の決着』と、少々語弊はあるものの、人々の関心を引き寄せた。
特に、【ギルドランカー】と呼称される冒険者達の間では、『ゼクス』を打ち負かした魔物への興味は増していた。
「──では、これにて会議を終了する。配布した資料を熟読した上、準備を怠らぬように」
「「「「はいッッ!!」」」」
王都クローネ・冒険者ギルド3階。
今回の迎撃作戦に向けた、ツエン達の会議が終了する。
彼らもまた、先日の試合の話題で持ち切りであった。
ファリドの槍術や銀槍竜の戦闘方法を耳にし、自分達との圧倒的な差を理解した彼らは、より勇ましく鍛錬に励んだという。
──そして、当の銀槍竜といえば。
「⋯後方支援?」
冒険者ギルド1階のとある酒場にて、片眉を吊り上げていた。
右にハクア、左にアイリス、という形でテーブルに座る3名は、現在会議の真っ最中。迎撃戦に向け、それぞれの役割の把握を行っている所だった。
今回の迎撃作戦の一連の大まかな流れは、こう。
『魔物の軍勢を、ツエン達後方組が遠距離魔法で足止め』
↓
『全体の動きが停止した所で、ゼクスが魔軍の両側から挟撃』
↓
『飛行型など、一部ゼクスによる対応が難しい魔物・黒異種を後方組が迎撃』
↓
『あらかた片が付き次第、フリーの冒険者へ引き継ぎ。ツエンとゼクスは王都へ帰還』
と、なっている。
「──銀槍竜。お前には、アイリスと共に後方から遠距離魔法を放ってもらう。主に、飛行型の魔物共を撃墜するのが役割だ」
「⋯アイリスだけじゃダメ?」
「駄目だ、断る。今回の迎撃戦は、王都の防衛が最重要事項。『砦』が抜かれてしまえば、一巻の終わりだ」
「いやぁ、それは分かってるけどさぁ⋯⋯」
円卓に顎を乗せ、不満気な表情をハクアへ向ける銀槍竜。
彼が与えられた役割は、最前線での殲滅行動ではなく、後方からの遠距離支援。最前線にて好き放題暴れたかった銀槍竜からすれば、その役割は中々に酷なものであった。
「マジかぁ、支援役かぁ⋯」
項垂れる銀槍竜は、片手で顔を覆う。
彼にとって問題だったのは、“自身の後方での重要性”だった。
今回の作戦の為に集めらた、ツエン達50名。
彼らは、推定3000人以上いると言われるツエンの中で、遠距離魔法に秀でた者が厳選されている。一人一人が、一騎当千とは行かないものの、一騎当十程の戦力があるのだ。
そして、最前線のゼクスは例外を除いて20人。
恐ろしい程の殲滅力を誇っている為、作戦が本格的に開始した時点で、魔軍の総数は半減しているだろう。
更に、後方組のアイリスは、ゼクスの中でも魔法特化の人物。
ツエン達とは比べるまでもなく、冗談抜きで一騎当千の実力者なのだ。⋯⋯と、ここまで戦力分析した時、後方組に入れられた銀槍竜は、『そっちは暇そうだな』と感じたワケである。
「3000体だろ?3000体。俺が前線に出た方が、ツエンやアイリスの不安減らせるんじゃないか?」
「何言ってんのよ。ゼクスを含めて、『広範囲』且つ『遠距離』の攻撃魔法が出来るのは、私と貴方くらいなのよ?飛行型の黒異種もいるっていうし、迎撃可能な戦力は後方で構えてないとダメに決まってるじゃない」
「魔法?俺ってそんな強力な範囲魔法なんて持ってたっけ⋯」
「沢山槍を飛ばしてたじゃない。ファリドの試合で」
あぁそう言えば⋯と、銀槍竜は額を叩く。
ペタリと床に着いた尻尾が、彼のテンションの下がり様を表していた。
「では、お前はもういいぞ。迎撃戦当日に向け、英気を養っておく事だ」
「⋯⋯分かった」
与えられた役割に肩を落としつつ、銀槍竜は静かに席を立つ。
尻尾を引き摺りながら、彼はギルドの大扉へ向かった。外の空気を吸い、気分転換しようと考えたのだ。
「はぁ~⋯」
長い溜息をつき、銀槍竜は大扉を押す。
徐々に開く扉の隙間から、日光が差し込むのであった──
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