猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

文字の大きさ
89 / 195
1章【真実編】

第88話・千日紅。

しおりを挟む
 
「⋯どうして、子どもの頃の俺が出てくるんだよ?」

(そりゃあねぇ。擬人化時の肉体は、魔物の肉体年齢に引っ張られるからねぇ)

「マジかよ⋯早く言えよ⋯」


改めて、俺は金属の表面に映る自分を眺める。
そこには、やや大きめなグレーのロングTシャツと、同じく大きめな、ワイドパンツにも見える黒いズボンを身に付けた少年の姿があった。

銀色の髪を靡かせ、鮮やかな碧色の瞳でコチラを覗く少年は、ボーイッシュな女の子の様な⋯⋯6歳頃の俺そのものだった。


(──なんで、そんなにイヤそうな顔してるのさ?)

「いやぁ⋯別にイヤってワケじゃあ⋯。⋯ただ、」

(〖ただ?)〗

「ホラ⋯あれだよ。この顔付きが原因で、色々あったんだよ」


まぁ色々って言っても、本当に色々なんだが。
幼い頃は、親戚達に女物の服を着せられたり、小・中学生の頃だったら、同級生に性別を間違われたり。

高校に上がって、まぁ男らしさが出てきたなかな?って時期ですら、1回だけだけど野郎にナンパされたこともあったし⋯。

成人して以来、気にしないようにしてたんだけどなぁ。
まじかぁ⋯そうかぁ⋯子どもになっちまうのかぁ⋯マジかぁ⋯


(おっけ!そんなにイヤなら、あの村に行くのやめよう!)

「いんや、行く」

(⋯ちぇ)

「それとこれとは別なんだよ」


まぁ何はともあれ、だ。
この姿になった事で、騒ぎが起こる可能性も無くなったワケだし、今は割り切るしかないな。


「──そんじゃ、行ってみようかね」

(はいはい。⋯くどいようだけど、ホントに少ししか居れないからね?)

「分かってるって。アレだろ?1箇所に留まってたら、オーガに捕捉される的なのが問題なんだろ?」

(惜しい。性格には、オーガの手下⋯。つまり、転生者が厄介なんだよ)


そう言って、頭の中の幼女は説明を始める。
彼女曰く、『今の君はオーガの監視を完全に外れている』らしい。オーガは、いつでも転生者を監視・干渉できる能力を有しているらしいが、俺のソレに関しては既に幼女が解除済み。

という事で、『オーガは、私が紅志に接触していると気付いている』のだと言う。


(──つまり、だ。オーガからすれば、君はもう『敵』という認識である可能性がある。⋯となると、転生者っていう手下を使って探し出そうとする筈だ)

「だから、あまり留まりたくないと⋯?」

(面倒なのは、『現地の人間と転生者は、見分けがつかない』って事だよ。誰が転生者かも分からないのに、人が大勢いる場所にいるのはマズいって話だ)

「⋯成程。俺を擬人化させたのは、それが理由か」

(正確には、『それも』だけどね。どちらにせよ、村人達を怖がらせて騒ぎが起きちゃうのはアレだし)


ふむ、まぁそうか。
魔物による騒ぎが起きれば、冒険者やらギルドの職員やらが出てくる。⋯で、そうなると、仮に無害だと分かったとしても、話を聞かされるやら調べられるやらで時間を食われるワケか。

本当、中身が人間で肉体が魔物ってのは面倒が多いぜ⋯っと。
そんなこんなで、村の入口が見えてきたな。門番らしき人物が立っているが⋯⋯まぁ問題ないだろう。


「うっし、じゃあ早速──」

(待って待って)

「⋯今度はなんだ」

(魔物じゃなければトラブルにはならない⋯とは限らないよ?
保護者、荷物、共にナシって状態なら、流石に引き止められるでしょ。オマケに1文ナシだし⋯⋯)


ぐぬぬ、確かに。
今の俺は、なんにも持ってないしなぁ。警戒こそされないが、話を聞かれて時間を取られそうだ。⋯が、このまま静観していた所で何も変わらない、か⋯。

⋯あぁもう!こうなったら、当たって砕けろだぜ。
行ける所まで行ってみて、騒ぎになったら─⋯


(⋯─ゴリ押し、なんてやめてよね?)

「⋯いやホント、少しだけ、チラッと見たいだけだから」

(ふぅん⋯)


俺の考えを見透かし──本当に見られてるのだろうが──幼女は訝しげに鼻を鳴らす。⋯見えてはいないが、恐らく目を細めながら腕組みをしている事だろうな。


(⋯もし強行な手段に移ろうとしたら、無理矢理に身体を動かしてでも離脱だからね!もう!)

「くそぉ。もう俺から出てけよ。用は済んでるだろ?」

(──ノー。私が君に入ったのは、姿を隠す意味もあるんだ。
私は転生者から敵視されてる存在するだし。それに、私が今出ていったら、擬人化も解けちゃうんだよねぇ。つ・ま・り~?)

「はいはい。主導権はソッチってワケだ」


『正解!』と、幼女は拍手をする。
そんな彼女を無視し、俺は村の入口へと目をやった。

門番らしき人が立ってはいるが、よく見れば男の老人だ。
村の警護というよりは、ただ単に寛いでいるだけにも見える。
まぁあくまで、そう見えるってだけだが⋯。 

兎に角、行ってみよう。




「──ンン?」


村の入口まで、残り50m程の所まで歩いたその時。
老人は、遠くの俺の姿が目に入ったのか、不思議そうな表情を浮かべる。幼女の言った通り、流石にこのナリではあんな顔をされて当然か。

まぁここまでは予想通り。
問題は、次にどんな行動を取ってくるかだな。


「どうも、こんにちわ」   

「⋯⋯。坊や、どうしたのかね?1人かい?」


やはり飛んできた、この手の質問。
⋯だがな、どうやって往なすかは、既に考え済みだ。

遠くから見ていて分かったが、老人は恐らく80歳半ば程。
そして、俺が村まで50mほど近付いてようやく気付いた点と、挨拶した時、一瞬だけ耳を傾けた点⋯。これらを加味して考えられる解決策は⋯1つ!


「──おじいさん!僕だよ!僕僕!」

「んん?⋯あぁ!アレン君か!スマンスマン」
 
「そうそう!アレンだよ!」

「この歳になると、物忘れが酷くてイカンな。ハッハッ」


老人は、しゃがれた声で笑う。
騙してしまって心が痛むが⋯⋯許してくれ、爺さん。


〖あーあ。紅志ウソツキだー、ドロボーだー〗

(年寄りを狙って詐欺行為なんて⋯人の心は何処に置いてきたの?)

「前世じゃね?今は魔物だし⋯」

(〖うわぁ⋯)〗


鋭い蔑みの視線を感じつつ、俺は入口の門をくぐる。
村に入ってしまえば、もうコッチのもんだろう。そこそこ大きな村だし、村人が全員認知しあっているって程でもなさそうだ。

 
(──やれやれ⋯。何はともあれ、一件落着ってワケだ。ここからは、好きに行動しなよ)

「本当、ありがたい。急な用事に付き合わせて悪いな」

(⋯まぁ、そもそもの話、用事に付き合わせてるのは私だしね。
少しくらい、君の都合に合わせてもいいかなって)


溜息をつき、幼女はそう言う。
なんやかんやで優しい⋯というか、ちょっと甘い性格な奴だ。
まぁきっと、そんなところが彼女の長所でもあるんだろうが。


(さて。この村に留まるにあたって、制限時間を設けるワケだけど⋯。そうだね、何か“目安”が欲しい所だ⋯)


幼女の言葉に釣られる様に、俺は周囲を見渡す。
出来れば、感覚でタイムリミットが分かる物があれば最適なんだが⋯っと。⋯⋯おや?


「──あー、悪いねぇ奥さん。ウチの開店は昼んなったらだ。
あと30分くらいだけ、待っててくれよ」

「あら、仕方無いわね。それじゃあ、また来るわね」

((⋯⋯決まりだな)ね)


目に入ったのは、パン屋だった。
村の女性と店主との会話から察するに、あと30分で昼らしい。
それなら、焼きたてのパンの良い香りがしてきたら、時間切れって事でいいだろう。

もう仕込んでいるのか、既に良い香りはしているが⋯⋯
店先にパンが並べば、もっと香りも強くなるだろう。


(それじゃ、お好きにどうぞ♪)

「⋯⋯と、言ってもな。今は1文無しだしなぁ」

「──じゃあ、僕が何か買ってあげようか?」

 
その時。
突然、横から少年が話し掛けきた。あまりに自然に会話に入ってきたんで、一瞬だけ反応が遅れたが⋯⋯誰だ?この子。


「お金に困ってるんでしょ?今、『1文無しだし』って言ってたじん。独り言で⋯」

「あ、あ~!そうなんだよね~!困ったなぁ、アハハ⋯」

「うんうん。今、お金に余裕があるから、好きなの買ってあげるよ!⋯⋯え~っと?」

「あぁ⋯僕は、アレンって名前で⋯⋯」

「──え⋯?」


俺が仮の名乗りをした瞬間、少年の表情が固まる。
その直後に、俺の中で“とある予感”が高速で渦巻いた。


「一緒!一緒一緒!僕もアレンって名前なんだ!」

「あ、アハハ⋯。ぐ、偶然だねぇ~!!」


予感は的中。
まさかの本人だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...