猛焔滅斬の碧刃龍

ガスト

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1章【地獄のスパルタ訓練編】

第100話・レベルアップ

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「──ちょッ⋯⋯タ、タンマ!」
「駄ァ目だッ! 昨日、『もっと上げる』つっただろーが!!」

 尻尾を引っ掴み、ティガは俺をブン回す。
 どうにかして振り解(ほど)きたい所だが、相手は馬鹿げた筋力の持ち主。
 高速で振り回されていては、身動きもヘッタクレもないのが現状だ。
(やばい、頭に血が上って意識が⋯⋯ッ)
 景色が歪み始める中、俺は必死に頭を回転させる。 
 ⋯⋯いやまぁ、マジで身体ごと回転させられているワケなんだが。

「いくぜオラァッ!!」
「ちょちょッ、ちょっと待っ──」
 
 俺の身体が、ヌンチャクの様に振り回される。
 上から下、右から左。アッチとコッチが物凄い勢いで入れ替わる。
 口や鼻からは勿論、耳や目までも大量の血が吹き出しできた。
(──し、死ぬ⋯⋯!!)
 朦朧(もうろう)としだす意識の中、そんな考えが浮かんでくる。
 どうやら俺は、少しばかり浮かれていたらしい。 
 “昨日は炎装を使って逃げ切れたから、今日は炎装ナシで逃げ切ってみよう!”
 なーんてチャレンジをするには、流石に早過ぎたらしい。

「ほッ!!」

──ドゴオォォォンッッ!!

 背中に、大きな衝撃が伝わる。
 そりゃあ、ヌンチャクといえば、“叩き付けて”使う武器だ。
 ブンブンされている最中で、薄々こうされる事は気付いていたぜ。
 ⋯⋯勿論、その場合の対策もな。
 
「──おおっ?♡」
「⋯⋯ったく、殺す気かよ」
 
 炎装形態への移行、これ一択だぜ。
 まぁぶっちゃけ、“こうするしか無かった”ってのが正解だが。
 ⋯⋯さて。済んだ事はいいとして、こっからどうするべきか。
 パワープレイでは及ばないのは分かりきってるし、頭を使う必要があるな。
 問題なのは、“拘束されている”という点。そして、その“拘束力”がハンパないという点だ。
 ⋯⋯となると、やるべき事はしかないか。 
 
「ンググ⋯⋯ッ!!」
「あぁン?」
 
 精一杯、俺は身体を反らせる。
 それはもう、地面に付く後頭部が更にめり込んでいく程に。
 幸い、ティガは俺の行動を不思議がって追撃をしてこない。
 ならもう、やるしかないぜ⋯⋯!!

「うあぁッッ!!」

 圧縮したバネを弾く様に、全力で身体を跳ね上がらせる。
 その結果、“その場から動けない尻尾”は、“高速で動く身体”に着いてこれず⋯⋯

──ブチンッッ!!

「ヘェ⋯⋯自分から尻尾を千切(ちぎ)るかァ♪」
「~~ッッてぇ!!」

 物凄い激痛が、尻尾の切断面から伝わってくる。
 なんなら、転生してから経験した痛みの中でもトップかもしれない。
 それに、一向に血が止まる気配も無いが⋯⋯はて?
 まぁ今は、余計な事を考えている場合じゃないな。
 “炎装形態時に追った深手は、回復が遅い”とだけ覚えおこう。
 
「──さァ続きを始めるぜ、紅志。
 今の度胸があるんなら、もっと上げても良さそうだ」
「⋯⋯ハッ。次はなんだ? 殴り合いか?」

 呼吸を整え、俺は逃げる為に姿勢を低く構える。
 未だに頭はぐにゃあ状態だし、尻尾もめっちゃ痛いが⋯⋯また捕まっては元も子もない。
 大丈夫。昨日は逃げ切れたんだから、今日だって同じ成果を上げらるさ、俺。

「──はい、そこまでぃ!」
「「??」」

 唐突に、幼女が俺達の間に割って入る。
 ここ最近は“研究”とやらで忙しいらしく、姿を見ていなかったが⋯⋯何事だ?

「そろそろ、修行のレベルを上げよっか。
 ──ティガ、ゼルは今どこに?」
「ボスなら、今は“蓮”に会いに外してる。⋯⋯何の用だ?」
「いや、少しギルルを借りたくてねー⋯。
 まぁ、忙しいなら仕方無い。勝手だけど、ちょっとあのコを呼んできてもらえる?」
「はぁ? メンドクセーから、自分で行けよ。
 寝てるアイツを起こすのが、どんだけダリィか知ってんだろ?」

 ボリボリと頭を搔きながら、ティガは踵を返す。
 何故か、あのデカパーカーの少年に用がある様だが⋯⋯。
 “蓮”とかいう人物も、ソイツにわざわざ会いに行く魔王も気になりすぎるぜ。
 
「あ~幼女? 色々聞きたいんだが、まず“蓮”ってのは?」
「う~ん、そうだねぇ。ちょっち面倒な話になるけど─⋯」


 ⋯─まず、蓮っていうのは君と同じ転生者だね。
 強いよ~? 簡潔に言うなら、“私やゼルと同類”って感じだ。
 そんだけ強い彼だから、私が力を失ってからは“色々”やってくれてるんだ。
 主に、力を失う前の私がやっていた“アレコレ”だね。
 ⋯⋯んん? そこも気になるって? 物好きだなぁ。
 まぁ、は色々物騒だったからねぇ、それの調整とかだよ。
 あ、ここら辺っていうのは、“この星”を含めて“太陽系”の事だね。

 ──まぁ、細かい事はいいとして。
 対オーガにおける、“現状”を君に教えておこう。
 前にも話したと思うけど、オーガはこの世界とは別の“他の世界”に、私から奪った力の大半を使用した。
 黒異種(こくいしゅ)の様な生物を無数に生み出しては、色んな所を攻撃させたりね。
 他にも、ここらの銀河系をぐちゃぐちゃにしたり⋯⋯。
 いや。正確には、そのぐちゃぐちゃな状態が元の姿なんだけどね。
 私の力で、少しづつ“矯正”してたんだけど⋯⋯って、話が逸れちゃったか。

 ──兎に角、色々カバーする必要があったんだ。
 私がやってた色々な事や、オーガが行った悪事の数々をね。
 そこで協力してくれたのが、テュラングルを筆頭とした“ドラゴン族”、“転生者”、“魔王軍”だ。
 ドラゴン族と一部の転生者達が、“他の世界”で悪さする連中の相手を。蓮が、“ここら辺”の調整を。
 そしてゼル達が、この星の調和を取り持ってもらう事になったんだ。
 ⋯⋯とはいえ、蓮1人に任せる事も出来ないから、今日みたいにゼルが手伝いに行ってるんだ─⋯


「⋯─ん? ちょっと待てよ。
 転生者って、俺以外はオーガに操られるんじゃなかったのか?」
「全員では無いって話だよう。
 転生者にも“色々”いるからね。──本当に色々、ね」
「⋯⋯⋯⋯。」
「まぁ、私が言うのもなんだけど、転生者達に協力を頼む気はなかったんだけどね~。
 ⋯⋯彼らとしては、ケジメのつもりなのかも」

 う~む、事情があるってワケらしいな。
 しっかし、俺以外の転生者か。会ってみたいぜ。
 同郷ってんなら、色々前世でのとかもできそうだし。

「まぁ、小難しい話はまた今度にしよう。今は君の事だ」
「あぁ。⋯⋯それで、俺は今度はギルルにシバかれるのか?」
「う~ん♪ そうかもねぇ~??
 ⋯⋯でもまぁ、紅志好みな展開だと思うよ?」
「俺好み? それって──」

 その時、魔力感知に反応が現れる。
 ここら一帯での魔力感知は、極端に制限されてしまうが⋯⋯例外もある。
 それは、相手側がアホみたいな魔力を持っている場合だ。
 コッチの狭い感知の範囲にですら、影響を及ぼす程の⋯⋯

「おい、お望み通り連れてきたぜ?」
「あいよー、サンキュー♪ 今度、手合わせの相手でもしてあげるよ」
「おっ、マジか? 得したぜ。
 オラっ! ギルルてめぇ、そろそろ起きろコラッ!」
「──ぅーん⋯⋯」

 ティガにおんぶされるギルルは、まだ寝ている様子。
 こうして見ると、とても魔王軍幹部とは思えない、幼げのある顔をしているが⋯⋯。
 まぁ実際は、めっちゃ強いんだろうな。

「ほ~ら、起きてギルル!
 言う事聞いてくれたら、美味しい物食べせてあげるから」
「⋯⋯ホント? じゃあやる」

 幼女の言葉に、ギルルが顔を上げる。
 なんか⋯⋯もしかしてだけど、幼女って幹部達をしてるのではないのだろうか。
 自分より強いヤツが、言われた事にホイホイ従ってるの、かなりヤなんだが⋯⋯。

「──で、これから何をするんだ?」
「んふふ~? 実・技・訓・練♪ 
 紅志には、このギルルを相手に試合をしてもらう。
 1発でも入れられたら、課題はクリアだ♪」

 ⋯⋯えっ、なにそれは。
 めちゃくちゃ俺好みな訓練じゃねーか!!
 やっぱりよぉ、戦う為の修行なら、戦いで強くなった方が良いに決まってるぜ!!
 
「──じゃあ、細かい事はいいよね?」

 幼女の問いに、俺は静かに笑った。
 

「当然ッ!!」
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