103 / 195
1章【地獄のスパルタ訓練編】
第102話・予想外
しおりを挟む
「──アリアッ!!」
「分かってるッ!」
魔王と幼女が、急に慌ただしくなる。
幹部達も、幼女の指示に従って行動を開始した。
しかし、特訓の最中だった俺とギルルは、そのまま魔王城で特訓を継続しろとの事。
何が何だか分からないが、兎に角“異常事態”が起こっている事だけは理解できた。
「まさか、こんな手段を使ってくるとはね。オーガ⋯⋯!!」
幼女は、酷く憤慨(ふんがい)している様子だった。
その表情と台詞から察するに、オーガが何かしらの行動を始めたのだろう。
そしてそれは、余りに手荒で冷酷な⋯⋯
「──紅志。君は、修行に専念して。
大丈夫、この件は私達で何とかするから」
「何があったのかだけ、教えてくれ」
「⋯⋯オーガが、人類の主要な都市複数に攻撃を始めた。
無数の黒異種(こくいしゅ)達を操作して、襲撃させてるみたい。
多分⋯⋯。いや、私が助けに来るのを待ってるんだろう」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯そう、か」
想定していなかった訳ではない。
此方の作戦に勘づかれた以上、オーガが“炙り出し”をしてくる事は高確率だった。
⋯⋯そして、その過程で必ず犠牲者が出る事も。
「⋯⋯アリア」
「なに?」
「──頼んだ」
「⋯⋯うん!」
俺は、俺が出来る事をやるしかない。
アリアや魔王に手を貸すには、俺はあまりにも無力だ。
だから、信じる。
完璧でなくてもいい、最善でなくてもいい。
出来る限りを、全力でやってもらえれば。
「──続きだ、ギルル」
「はいはい。どっからでもこ~い」
気怠けなギルルを前に、俺は深く構える。
背後から、幼女が飛び立つ音が聞こえた──⋯
NOW LOADING⋯
「──急いでッ! 早くギルドの中に!」
1人の女性冒険者が、人々をギルド内へと誘導する。
平穏な日常の最中、突如として黒異種による襲撃を受けた街は、パニックに陥っていた。
まず優先されたのは、一般市民の退避である。
ギルド内にある、“緊急時用の転移装置”によって、人々は続々と退避を進めていた。
「──クソッ、数が多すぎる⋯⋯ッ!」
黒異種の対応に当たる冒険者の中には、ヴィルジールの姿もあった。
病み上がりで、思う様に動かない身体に苛立ちを覚えながら、彼は必死に黒異種を斬り捨てる。
だが、そんな努力を嘲笑うかのように、黒異種達の勢いは増していった。
(住民の避難は、まだ済んでねぇか⋯⋯)
チラリと目をやった先では、ギルドに押し寄せる人々の姿が。
民間人の避難が済まない限りは、転移装置で増援を寄越すのは後回しにするしかいない。
それは十分に承知している事だったが、パニック状態の民衆の流れというのは酷く鈍い。
募る苛立ちを堪えながら、ヴィルジールは仲間の援護に回った。
「動けるか、ヴィルジール」
「あぁ、何とかな。⋯⋯ったく。こんなんだったら、他のゼクス達も連れて帰ってくるんだったぜ」
「仕方ねぇよ。こんな事態、誰が予測──」
会話を中断し、ヴィルジール達は後方へと跳ねる。
直後に、2人がいた場所に無数の火球が降り注いだ。
「チッ、翼竜型か。──誰か、アレを撃ち落とせる奴はいるか!?」
「任せてッ!!」
ヴィルジールの呼び掛けに、女性の冒険者が動く。
生成された魔法が、上空へと射出。小さな爆発が、連続して炸裂した。
「──よし、このまま戦線を維持するぞ!!」
「「「応ッッ!!」」」
ヴィルジールを筆頭に、冒険者達は黒異種へと構える。
誰も彼もが状況を全く理解していない中、ただ“人々を守る”事だけを胸に。
「──ヴィルジール様⋯⋯!!」
そして、彼女もまた。
必死に戦うヴィルジールを見て、グレイスは駆け出す。
自分を救ってくれた恩を返す為、ここでやらねばいつやるのだと。
(まだ未完成だけど⋯⋯時間稼ぎくらいなら⋯⋯!!)
グレイスは、屋敷にある1つの部屋の扉へ手を掛ける。
薄暗い部屋の向こう側には、全体がシートで隠された“とある魔導具”の存在があった。
何年も前、グレイスと共に過ごしてた老人が作っていた“それ”は、彼の形見でもある。
そして、グレイスが生涯をかける覚悟で制作に取り組んでいた物だ。
「⋯⋯☾操作(フーへ)☽」
意を決し、グレイスは魔導具へ手を翳(かざ)す。
未完成でほぼ骨組みだけとはいえ、その重量は500kgは下らない。
初歩的な魔法と、なによりグレイス程の魔力量では数cm動かすだけでも激しく消耗してしまう。
──だが、それでも。
確固たる意思を持ち、グレイスは魔導具を台車まで移動させる。
遠くで戦う、自身の主をその内に。
「分かってるッ!」
魔王と幼女が、急に慌ただしくなる。
幹部達も、幼女の指示に従って行動を開始した。
しかし、特訓の最中だった俺とギルルは、そのまま魔王城で特訓を継続しろとの事。
何が何だか分からないが、兎に角“異常事態”が起こっている事だけは理解できた。
「まさか、こんな手段を使ってくるとはね。オーガ⋯⋯!!」
幼女は、酷く憤慨(ふんがい)している様子だった。
その表情と台詞から察するに、オーガが何かしらの行動を始めたのだろう。
そしてそれは、余りに手荒で冷酷な⋯⋯
「──紅志。君は、修行に専念して。
大丈夫、この件は私達で何とかするから」
「何があったのかだけ、教えてくれ」
「⋯⋯オーガが、人類の主要な都市複数に攻撃を始めた。
無数の黒異種(こくいしゅ)達を操作して、襲撃させてるみたい。
多分⋯⋯。いや、私が助けに来るのを待ってるんだろう」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯そう、か」
想定していなかった訳ではない。
此方の作戦に勘づかれた以上、オーガが“炙り出し”をしてくる事は高確率だった。
⋯⋯そして、その過程で必ず犠牲者が出る事も。
「⋯⋯アリア」
「なに?」
「──頼んだ」
「⋯⋯うん!」
俺は、俺が出来る事をやるしかない。
アリアや魔王に手を貸すには、俺はあまりにも無力だ。
だから、信じる。
完璧でなくてもいい、最善でなくてもいい。
出来る限りを、全力でやってもらえれば。
「──続きだ、ギルル」
「はいはい。どっからでもこ~い」
気怠けなギルルを前に、俺は深く構える。
背後から、幼女が飛び立つ音が聞こえた──⋯
NOW LOADING⋯
「──急いでッ! 早くギルドの中に!」
1人の女性冒険者が、人々をギルド内へと誘導する。
平穏な日常の最中、突如として黒異種による襲撃を受けた街は、パニックに陥っていた。
まず優先されたのは、一般市民の退避である。
ギルド内にある、“緊急時用の転移装置”によって、人々は続々と退避を進めていた。
「──クソッ、数が多すぎる⋯⋯ッ!」
黒異種の対応に当たる冒険者の中には、ヴィルジールの姿もあった。
病み上がりで、思う様に動かない身体に苛立ちを覚えながら、彼は必死に黒異種を斬り捨てる。
だが、そんな努力を嘲笑うかのように、黒異種達の勢いは増していった。
(住民の避難は、まだ済んでねぇか⋯⋯)
チラリと目をやった先では、ギルドに押し寄せる人々の姿が。
民間人の避難が済まない限りは、転移装置で増援を寄越すのは後回しにするしかいない。
それは十分に承知している事だったが、パニック状態の民衆の流れというのは酷く鈍い。
募る苛立ちを堪えながら、ヴィルジールは仲間の援護に回った。
「動けるか、ヴィルジール」
「あぁ、何とかな。⋯⋯ったく。こんなんだったら、他のゼクス達も連れて帰ってくるんだったぜ」
「仕方ねぇよ。こんな事態、誰が予測──」
会話を中断し、ヴィルジール達は後方へと跳ねる。
直後に、2人がいた場所に無数の火球が降り注いだ。
「チッ、翼竜型か。──誰か、アレを撃ち落とせる奴はいるか!?」
「任せてッ!!」
ヴィルジールの呼び掛けに、女性の冒険者が動く。
生成された魔法が、上空へと射出。小さな爆発が、連続して炸裂した。
「──よし、このまま戦線を維持するぞ!!」
「「「応ッッ!!」」」
ヴィルジールを筆頭に、冒険者達は黒異種へと構える。
誰も彼もが状況を全く理解していない中、ただ“人々を守る”事だけを胸に。
「──ヴィルジール様⋯⋯!!」
そして、彼女もまた。
必死に戦うヴィルジールを見て、グレイスは駆け出す。
自分を救ってくれた恩を返す為、ここでやらねばいつやるのだと。
(まだ未完成だけど⋯⋯時間稼ぎくらいなら⋯⋯!!)
グレイスは、屋敷にある1つの部屋の扉へ手を掛ける。
薄暗い部屋の向こう側には、全体がシートで隠された“とある魔導具”の存在があった。
何年も前、グレイスと共に過ごしてた老人が作っていた“それ”は、彼の形見でもある。
そして、グレイスが生涯をかける覚悟で制作に取り組んでいた物だ。
「⋯⋯☾操作(フーへ)☽」
意を決し、グレイスは魔導具へ手を翳(かざ)す。
未完成でほぼ骨組みだけとはいえ、その重量は500kgは下らない。
初歩的な魔法と、なによりグレイス程の魔力量では数cm動かすだけでも激しく消耗してしまう。
──だが、それでも。
確固たる意思を持ち、グレイスは魔導具を台車まで移動させる。
遠くで戦う、自身の主をその内に。
0
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる