死を約束されたデスゲームの悪役令嬢に転生したので、登場人物を皆殺しにして生き残りを目指すことにした ~なのにヒロインがグイグイと迫ってきて~

アトハ

文字の大きさ
7 / 10

7. 寝顔

しおりを挟む
 私だけならまだしも、エミリーもいるなら余分に物資が必要となる。

 私たちは、地中に埋まったカプセルを堀りながら無人島をさまよい歩く。ときおり、探知魔法を使って周囲を警戒しながら歩くが、今のところ人の気配はない。
 3時間ほど歩いただろうか。あたりが暗闇に包まれてきたころ


「今日はこの辺かしらね」


 そうつぶやき私は立ち止まる。今後のことを考えると、休めるうちはしっかりと休むべきだろう。

「エミリー、あなた見張りはできる?」
「探知魔法は苦手ですが。頑張ります」

 気合の入った返答だが、あまり信用ができない。小刻みに仮眠を取りながら夜間も警戒するしかないだろう。気が滅入る話だ。


「今日も1日おつかれさまでした!」

 一方のエミリーは「感謝の気持ちです」と言って、私に対して何か魔法をかけた。不思議な光に包まれ、疲労が回復していくのを感じる。

(なるほど。これが……その人物との相性によって効果が変わる、ヒロインの固有魔法ね。
 1日の終わりになるとかけてくれる、ゲームではおなじみの魔法だったわね)
 
 うっすら感じていた疲労が無くなったばかりか、五感がこれまでとは比べ物にならないほどに研ぎ澄まされたのを感じる。エミリーの使う魔法も、大概チートであった。


「明日からも大移動よ。
 そんな魔法の無駄うちしてないで、今日は早くやすみなさい」

 私はカプセルから保存食を取り出すと、エミリーに黙って手渡す。エミリーは少しだけ口にすると、そっとカプセルの中に戻した。

(気持ちはわかるけど……)

 味のしない乾燥した食材、心がすさみそうになる。


「食べておきなさい。しっかり体力を付けておかないと、この先もたないわよ」
「ふふ、ありがとうございます。ティアナは本当にやさしいんですね」
「そんなことないわよ」

 照れる私に対して

「貸してください。少しだけ魔法をかけてもよいですか?」


 エミリーは、私に食材を渡すように求めてくる。
 これが他の相手なら、ライフラインとなる食材を渡すことなど考えられない。しかし、エミリーなら大丈夫だろう、特に意識することなく食材が詰め込まれた袋を渡し――無意識に警戒心を解いてしまっている自分に驚く。

 エミリーは「えい」と可愛らしい声で、袋の中の食材に向かって魔法を発動。その後は、取り出した保存食を、さきほどとは打って変わって美味しいそうにパクパクと口に運ぶではないか。


「ティアナもどうぞ?」
「……驚いた。バフを使って、食べ物をおいしくするなんてね。
 あんた、こんな状況で貴重な魔力を使ってやることがそれって。生き残る気が本当にあるの?」
「でもおいしいですよ?」
「……もらうけどさ」

 まさかこんな場所で、ホクホクのお菓子を食べ(た気持ちが味わえる)なんて。美味しいものには逆らえない。気が付けば、完全にエミリーにペースを握られていた。



 どう接するべきかいまだに決めかねる私を余所に、エミリーは食事を終えると速やかに眠りにつく。この警戒心の無さは何なんだ。


くー くー

 エミリーは、最初の見張りを私に任せると、膝にもたれかかるようにして気持ちよさそうに眠っていた。

(こちらの気も知らないで。
 私、いつでもあなたのことを殺せちゃいますよ?)

 思わずほっぺたをツンツンしてしまう。
 なんでこの子はここまで警戒心がないのか。あなたを殺さないと、私はいずれ死ぬ。その事実すら、すでに知ってるはずなのに。信頼――そう言えば聞こえは良いが、完全に相手に命を委ねる様は、もはや狂気だ。

(まあよいか)

 エミリーと一緒にいることで相手を油断させられる。それに、いざというときには、彼女のバフは強力な武器となる……かもしれない。だから、今は殺すべきではないのだ。

(いつでも殺せるし)

 そうして夜は更けていく。


 ――ヒロインも攻略対象も皆殺しにして生き残るんだ!

 そんな決意とは裏腹に、割とのどかなデスゲームの初日が終わろうとしていた。



◇◆◇◆◇

 ここからデスゲームは加速する。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

n番煎じの脇役令嬢になった件について

momo
ファンタジー
ある日、突然前世の記憶を思い出したレスティーナ。 前世、知識モンスターだった研究者の喪女であった事を思い出し、この世界が乙女ゲーム『光の聖女と聖なる騎士』だった事に驚く。 が、自分は悪役令嬢でも無く、ヒロインでもない成金のモブ令嬢だったと気付いて本編始まったら出歯亀しようと決意するのだった。 8歳で行われた祝福の儀で、レスティーナは女神イリスに出会う。女神の願いを叶える為に交換条件として2つの祝福を貰い乙女ゲーそっちのけで内政に励むのだった。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...