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3話

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蓮side





このバカが。


目の前で若干凹んでいる男に目を向ける。


こいつは桐生 哀留。
自分では平凡だと言っているが、どこがだ。



中学の時に入ってきた外部生。その何人かの中に、埋もれてしまいそうな容姿だが、何故か目を惹きつける奴が居た。

それが哀留だった。


見た目はいたって平凡。
さらさらと流れる艶やかな黒髪と華奢な体つき。
ぱっと見は平凡だが、一つ一つのパーツも………………平凡だった。
可もなく不可もなく。


ただ纏う空気が普通とは違うような、独特な感じで。
所詮この学園では平凡となる容姿だったが、話してみるとただの平穏を愛するバカだった。
いや、バカな上に中身はおかしな奴だった。



中学の入学式。俺は仲間連中とそれをサボっていた。そんな所に奴は近づいてきた。
不良と言われる部類に入る俺たちに物怖じせずに近づいてきた奴は、


「道に迷いました。教室まで連れてってください。早く教室に行って、良い席取りたいんです」


と、ペコリと頭を下げてきた。

入学式の会場ではなく、教室に?
え、サボリ?
てか、良い席?


色々俺達の頭の中を駆けめぐったが、なんだか呆れて結局は連んで教室まで行ってしまったのは、今でも首を傾げる出来事だ。



その後も平凡で無害そうなツラをしながらも、非凡な一面を見せる見た目と中身の差が面白くて、居心地が良くて、それからなんだかんだと連むようになった。


哀留はめんどくさがりだ。騒がしいのが嫌いだし、巻き込まれるのも嫌い。
平穏・平凡が一番。
だからかただのめんどくさがりからか、中学から髪をずるずると伸ばし口数も減らし、ひっそりと過ごすようになった。

まぁ、本人も俺も周りも何も反応無かったしそれは良いが。


そんな奴が、何故かあの変態に見つかり、委員長に指名されたのかはわからねぇが…

めんどくせぇ事に、俺まで巻き込みやがった。
いや、巻き込んだのはあの変態だが。


風紀は指名制で選ばれ、拒否はできない。
あの変態は哀留を指名し、俺も指名してきやがった。どうせ変態は俺と哀留の関係ってのを知っいて、哀留の性格を知った上での指名だったと思う。

俺がキレながらも哀留のフォローをしてんのを、高みの見物でもしてんだろう…胸くそワリィ…あぁ、話が逸れたな。


つまり、哀留は平凡だがただの平凡ではないって事だ。


目深に被った帽子を取ってやれば、久しぶりに見えた奴の瞳。

今までは前髪が長すぎて目が見えなかった。


中学の時に比べ幼さが消えたが、やはりぱっと見は普通。
襟足も綺麗に切りそろえられ、前髪も目にかかる程度の長さ。
黒い瞳も今は潤んでいる(欠伸したせいだろが)


ただ、やはりコイツは独特な雰囲気を醸し出している。
そしてそれは、何故か人を惹きつける。

しかも、一癖も二癖もあるような奴を。



…変態ホイホイか?


チッ。


平穏を望むために今まで散々風紀を避けていたってのに、なんで今更髪まで切ってここに来やがったのか…………しかも、ご丁寧に他の風紀連中にも連絡して。
今頃あいつら、まだ見ぬ委員長に夢をはせながらここに向かって来てんだろうな………


姿を見せないサボリ委員長を、何故か妙に神聖化してんだよな。

基本、風紀は忠犬な奴らが多いんだよ。


って、あぁめんどくせぇ。これからここに来る奴らへの説明も、これからコイツが周りに与える影響も。


まぁ、コイツがこんな積極的になったのは藤谷がぶっ倒れて入院した事がきっかけだろうな。

確か藤谷と哀留の妹が付き合ってるとか、なんとか言ってやがったから……大方その妹になんか言われたんだろ。
前に、妹には頭が上がらないって言ってやがったし。


あのクソ転入野郎と無能生徒会の奴らには、マジで迷惑をかけられている。ワザとか?嫌がらせか?と言いたいほどに、毎日毎日毎日毎日奴らに関わる面倒事が起こり、それを処理するのに追われる日々。


考えたら殴りたくなってきたぞ、ヲイ。


とりあえず、これかからはこの委員長サマが真面目に仕事するだろし(つーか殴りつけてでもさせる)
これで俺の負担も軽くなり、イライラも少しは減るだろう………




あ゛ークソめんどくせぇ゛ー





蓮side  end











哀留side




なにやらさっきから蓮が不気味だ。


イライラしながら舌打ちをし、かといったら微妙な顔をしながら俺を見てる。


なんなんだね、君は。
人の帽子を鷲掴みにして取ったと思ったら、不機嫌になりやがって。


そりゃ俺は平凡さ。
一応これから人前にでるからって髪を切ったが、それがどうした。オシャレヘアースタイルにはなったが、顔は変わらん。この日本人特有の黒髪黒目である、この平凡顔が気に食わんのか!


「クッソ。イケメン滅びろ」


「どーしたの?」


俺の呪いの呟きは、蓮の隣で大人しくしていた円に届いた。


きょとん顔で首を傾げている、円。
キュンっとした。
あれだ、犬猫に対する感じのキュンっとだ。

チクショウ、所詮お前もイケメンかっ!!!!!



委員長に指名されてから風紀に姿を現していない俺は、幻の風紀委員長となっている。

が、何故風紀委員の円とは面識があるのか…


答えは簡単。
風紀に入る前に会った事があるからだ。



あれは…………








いやいや。
長くなるので色々端折るが。


とある事情で、未知の領域に侵入せざるおえなくなった俺は、そこで円と出会った。


数人周りに倒れて、そこで仁王立ちしている円と。(あれ?殺人現場??)


それからなんやかんやがあり、なんやかんやと会話をし、なんやかんやとバットを手に入れた俺はなんやかんやあり、その後無事に寮の自室へ帰り。
(因みに全寮制)

月日が流れ高2に進級したら、高1に進級してきた円と再会し、なんやかんやと懐かれて円も風紀に入り………


現在に至る。


こんな感じで円と出会った訳だが、しかし…



「なんやかんやって、都合がいい言葉だよな」


「なんやかんや?」



またコテリと首を傾げる円。


うん、キュンってきた。





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