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20話
しおりを挟む「俺に何か言うことは」
俺、ソファーに座り腕と足を組んでふんぞり返り中。
「「………」」
円とひぃりん、俺を見上げながら床に正座中。
あ。
今の状況を説明するとですね―……
前回俺を、ぎゅうぎゅうに押しつぶしにかかっていた円とひぃりんを説教中です。
因みに。
カナたんは月ちゃんにコーヒーを出して、2人はお茶タイム中である。
俺にも煎れてくれるって選択肢はなかったんだね、カナたん!!
そんなカナたん達を横目に、さてさて…
「不本意ながらも、俺は小さいんだぞ。
それを貴様ら2匹もたれ掛かってきやがって―……なんだ、あれか?潰す気だったのか?体が潰れるだけじゃなく、頭も潰されて、なんかニュルってしたものが出てきたらどうするつもりだったんだ?あぁん?」
鯛焼きの中のアンコかっての!
「あぁん?」で、顔をふんぞり返らせて2人を見下ろしたら、
「ごめんなさぁい…」
「すみません」
土下座してくれました。
…普段ならここで許してあげるが、今回はあかん。
だって、俺真面目だったんだもん。そんな真面目モードな時に邪魔されたんだもん。
そりゃ、多少なりとも不機嫌にもなる。
甘やかし、よくない。
俺は心を鬼にした。
片耳に手をあてて、
「あぁん?き―こ―え―な―い―!!」
どこぞのいじめっ子だ!?ってな感じで、2人の謝罪を聞き返した。
「「!?」」
俺の拒絶ともとれる言葉に、2人はうりゅっと瞳を潤ませた。
…………
かわええy否!!!ダメだ哀留!!ここは我慢だ!よく言うだろ?
「可愛い子には旅をさせろ」って―…
俺は、2人を撫で回したい衝動をぐっと抑えた。
視線の端に、そんな俺達のやりとりに呆れた様子の、カナたんと月ちゃんが見えたが気にしない。
さて本題本題。
「……こほん。月ちゃんに、言っておかなきゃいけない事があるんだ」
うるっうるに瞳を潤ませ見上げてきている2人を床に座らせたまま、俺は月ちゃんに向かい合った。
ドS!って声が聞こえた気がしたが、気のせいに違いない!
すると、
「…何だ?」
俺の真剣な表情に、月ちゃんも背を正した。
俺もつられて居住まいを正して、真っ直ぐに月ちゃんの瞳を見る。
「次の全校総会、風紀で乗っ取るから」
「………!!」
この言葉に、月ちゃんはぐっと眉間にシワを寄せ、目を細た。
その視線は鋭く俺に突き刺さったが、それだけだった。
先を話せって意味だろうから、遠慮なく話を進める。
「その関連する資料も、風紀で全て失敬した。これからプログラムや下準備に取りかかる。当日混乱を防ぐためにも、口の堅い各委員会へこれから根回しもする。
…―この意味わかる?」
じっと月ちゃんの反応を伺う。
月ちゃんは腕を組み、視線を下に下げた後スッと俺を見た。
「…―風紀が、生徒会を飲み込むか……」
飲み込む―……
生徒会を飲み込むとか、そんなん汚いからぺってしなさい!
……って突っ込みが脳裏を過ぎったが、それはなんとか抑えた。
抑えたら、口元ピクピクした。
げふんげふん。
せっかく真面目に話を進めようとしてんのに、ここで笑いに走ったら元も子もない!
耐えろ俺。
円とひぃりんが報われないだろ!!←死んでません
「の、飲み―…けふっ。
そう、飲み込むん、だ
――……………………………………………
…ぶっ!!!!!!!!!!!!!
ぎゃ―はははははははははははははひははははは!!!!!!!!!!!ぺってしなさい!ぺって!」
崩壊ってこういう事を言うんだね。
先程までの緊張した空気を切り裂き、響き渡る俺の笑い声。
カナたんと正座中のひぃりんはビックリしてるし、円に至っては「いつもの哀ちゃんだ~」って笑ってるし。
月ちゃんは頭抱えてた。
……こんな我慢がきかない幼なじみでごめんよ。てか、あんな真面目な空気が悪い!
真面目すぎると、逆に話が進まない!
え?誰がそんな空気にしたんだ―…って?
俺ですが何か?
何か?←
あっ石投げないでください!!!
とにかく、月ちゃんにパッパッと話しちゃおうぜ!
「あ―…ごめんごめん!うん、話しの続きな!総会を乗っ取って、全校生徒と教師に風紀の本来の権力と存在を見せつける!
風紀が、生徒会と対等にあるって事を。
そして、これからは風紀が上だって事を」
あとは月ちゃんの言うとおりに、生徒会を飲み込もうじゃないか!
はっはっはっは―(笑)
「あっは。生徒会の役員に、そんなにあっさり言っちゃって良いのぉ?」
俺が高笑いしていると、円がふわふわ笑いながら指摘してきた。
をい。
ひぃりんはまだちゃんと正座してんだから、お前も続けろや。何足崩してんだよ。
…まぁ、正座させてる意味なんてもう無いからいっか。
自己中ですいません。
ぽんぽんと、俺が座る左右のソファーを叩いて2人を見れば、ひぃりんは花を飛ばしながら(幻覚が見えた)座り、円は嬉しそうにしながらぴょんっと座った。
そんなワンコ2人の頭を撫でながら、先程の円の言葉に返す。
「まぁ。月ちゃんは良いんだよ。生徒会役員だけど―…違うっしょ?」
前半は円達に。後半は月ちゃんに問いかけた。
「……」
月ちゃんは、じっと何か考え込むようにしている。
今更考えても無駄だって。それに―…
「答えは出てるだろ?」
今の生徒会には、もう何も期待はできない。奴らは小猿くんに付きまとって、自分達の立場や仕事を放棄している。
そのせいで、学園全体にも悪影響が及んでる。
いくら考えようともダメだ。
もう、どうにも出来ない。
「蜜埜がいない今、生徒会の運営は全部月ちゃんがしなきゃならない。でも、それも手に負えてない。
だから、月ちゃんには悪いけど―………
生徒会潰すから」
きっぱりと宣言した。
考え込んで伏せめがちだった月ちゃんと、俺の視線が交わる。
そして暫くの沈黙後…
重い。
重い口を、月ちゃんが開いた。
「…わかっている。あいつ等はもうだめだ。俺と藤谷がいくら仕事をするように言っても、ダメだった―……
今も俺1人で仕事をしているが、限度がある」
そう言って、ぐっと拳を握り締めた。
…………
あ―…だから嫌だったんだよなぁ―。
月ちゃんは真面目だから。そして仲間を大事にするから。
仕事をサボっている仲間達を変えられないのは、力不足な自分のせいだとも考えているだろう。
仕事と仲間と自己嫌悪と―…絶対悩んで苦しんでると思ってた。
本当は、蜜埜が入院した時点で月ちゃんに会いに来れば良かったんだ。
月ちゃんは小さいときから、弱音を吐かない。
此方が促さないと、ずっと1人で悩み続ける。
そのたびに、普段はキリっとした涼しげな目元に―…涙を溜めてウルウルさせていた。
無言と無表情で。
それは、俺と哀奈にしかわからないサイン。
月ちゃんが困っているとき、悩んで悩んで辛いとき。瞳をウルウルにさせて、俺達を見る。俺達は、そのサインだけは見逃さないようにって決めてた。
感情表現が苦手な幼なじみ。
ほら、今もそうだ。
ウルウルさせながら、泣きそうな目で俺をじっと見ている。
今更、何を悩む必要があるよ?
「大丈夫だ、月ちゃん。俺と哀奈は、月ちゃんの決めた事に賛成する。悩む必要なんてないって」
にかっと笑って見せる。
そしたら、月ちゃんの瞳が揺れた。
俺は月ちゃんの性格をよく知っている。
逆も然り。
だから、月ちゃんが何を決めているのかも……なんとなく分かる。
そんな俺の後押しがきいたのか、月ちゃんは深呼吸1つして、コクリと頷いた。
そして、口を開いた。
「俺は、生徒会を辞める」
そう、静かに言った月ちゃんの表情は―…穏やかだった。
「「―…!」」
そして、カナたんとひぃりんの息を飲む音が聞こえた。
多分驚いてんだろうな。
今まで耐えて、唯一真面目に仕事をしていた生徒会書記の辞任。
これで、生徒会は必然的に崩れるしかない。
でも、責任感の強い月ちゃんの事だからこう言うのはしょうがないt「え―、それって逃げちゃうって事ぉ?」
え………円くん?
まさか反論(?)があるとは思わなかったので、びっくりして隣を見た。
ちょ。お前、そんな意地悪い子だったっけ!??
「だってさぁ、アンタが今生徒会を辞めたら更に混乱するし。業務の負担も全部風紀にくるしぃ。嫌な事を全部放り投げて、逃げんの?」
まぁ、アンタが役員を辞めるのは勝手だけどさぁ~と、円らしくない正論っちゃあ、正論。
ポッカンと意外気味に円を見て、額に手をあててみる。
よし、熱はないな。
すると、
「…―否。今すぐには辞めない」
ぽつりと呟かれて「る―」と、月ちゃんに呼ばれた。
「辞める―…が、今すぐではない。彼の言う通り、今辞めたら余計な混乱と負担をかけるからな」
フッと苦笑して、月ちゃんは円を見た。
すると円は、ぷいっと明後日の方を向いた。小さな子供みてぇだな。
円の頭をぽんぽんと撫でてやろう。
あ、こっち向いた。
……
円がこっちを向いたのは別に良いんだけど―…ヲイ。
「この至近距離でガン見はやめろ、ガン見は」
「や」
「や」じゃね―よ(笑)
近いんだよ。ぺしんと頭を叩いて、ぐい―っと離れるように押しやる。
変わりに、反対側にいるひぃりんを撫でてやろう。
きゅるんって瞳が、きゃわゆいぜ!
「では、いずれは辞めるが。今はこのまま続ける―…って事ですか?我々がこれから行うことも、黙認し容認して頂けると?」
俺達がじゃれていたら、カナたんが月ちゃんに確認をとっていた。
空気を読める同級生を持てて、俺は幸せものだぜ!
やっふ―!
てか。そうだよ、そこは重要だよ。
「月ちゃん。俺らこれからぐいぐい動くけど、大丈夫?
多分、生徒会の奴らは自分達の立場悪くなったら、風紀を恨むだろうし…」
風紀の俺と繋がりある月ちゃんを、目の敵にする可能性もある。
そう俺が言うと、
「そんな事気にするな。俺は今まで通りに、与えられた仕事をこなすだけだ。風紀の行動で生徒会の立場がどうなろうと、それは受け入れなければならない事だ」
だから、る―ちゃんが気に病む必要はないし…遠慮もいらない。
と、きっぱりと言い切った月ちゃんは綺麗に笑んだ。
何かが吹っ切れたような………そんな笑顔だった。
…うん。
そうだよな。それでこそ、俺達の自慢の幼なじみだ!!
荒波にも立ち向かう精神!哀奈の腐った趣味にも、嫌々ながらも立ち向かう精神!
立派です!!(敬礼)
なんだか月ちゃんに力を貰った気がする。単純かもしれないけど、心配していた月ちゃんの気持ちが固まったから、俺もこれから色々頑張れる気がする。
月ちゃんは、これからも生徒会としての仕事をこなしつつ。俺達風紀とも連絡・連携を取るようにした。
よし!総会頑張ろう!
緊張しないようにしよう!
……
改めて決意したら、おっと。大事な事を言うの忘れてたのに気づいた。
俺のおっちょこちょい☆
てへぺろって、舌を出しながら頭をコツンと叩いた。
カナたんからの視線が痛い。だが負けん。
「月ちゃん月ちゃん」
「ん?まだ何かあるのか?」
ちょいちょいと手招く俺に、月ちゃんはコーヒーを飲みつつ俺を見た。
「うん。言い忘れてたけど、俺風紀委員長なんだ。
宜しく!!」
「ぶ―――――――――――――――――――――――……!!!!!!(吹)」
おぉ。吹き出したよ。向かい側に座ってた俺の顔に、見事にコーヒーがかかったよ。
あれだ。コントだ(笑)
「月ちゃんが、コント的なボケをかますとは思わなかった(笑)」
ひぃりんにコーヒーがかかった顔を拭かれながら、ぽつりと言うと…月ちゃんは咽せていた。
ツボに―…いや、あれは単純に器官に入ったんだな。
そしてひぃりんよ、さっきから一生懸命顔を拭いてくれている、その布なんだがね…
「それは台ふきだよ」
定番的なオチでした。
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