王道学園と、平凡と見せかけた非凡

壱稀

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24話

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「どうなんだよ哀留!!!
風紀委員長だなんて嘘ついて、俺や皆を騙してたんだろ!!」


あ―――……


「蓮達も騙されて可哀想だ!!!!最低だ哀留!!!」


ああ――――……


それを今言っちゃいますか。

え、否。勘違いしないでね?
俺正真正銘、風紀委員長だよ。
嘘ついてないよ?


でもさ、勝手に小猿くんの思い込みでこんな事をこんな所で言われたらさ―…


「え……あいつ嘘ついてたの?!」

「じゃあ、委員長じゃない??」

「うっわ!最悪、まんまと騙された!!!!」

「なにあいつ―…。僕らだけじゃなく、風紀や生徒会の皆様まで騙して…絶対許さない!」



ね?


初めから俺を敵視・認めていなかった・受け入れていない奴らの不評と不信感が、増大するじゃんか!頭をガリガリとかきながら、ヒートアップする周りを見渡す。そして、ぎゃんぎゃんと喚く小猿くんに向き合った。

「ちょっと待とうか、転入生くん。確かに君に正直に名前を言わなかった俺も悪いが、俺は間違いなく風紀委員長だよ」


だから、そんな嘘を言いふらすのは止めろよ。


…―そう言い含めて言ったんだけど、



「信じられない!」



…は?


「そもそも、委員長って偉いんだろ!?生徒会長と同じくらい偉いんだろ!??
それが哀留みたいな普通な奴がなるだなんて、信じられない!!」

なんだこの全面的な拒絶。

え、俺みたいな何処にでも居るような普通の奴が、委員長とかなっちゃいけない。って訳か、この野郎。

そもそも、なりたくてなった訳じゃない役職だが、小猿くんにそうきっぱらと言われると―…腹立つな!
周りの生徒達も俺に対しては小猿くん派らしく、ヤジが煩い。
おまえ等の声帯潰すぞヲラァ。

小猿くんがやいのやいの言っているから、なんか副会長とか会計ら取り巻きも調子乗ってきたらしく、

「唯の言う通りです。君みたいなのが風紀委員長などと―…」

「もしかして~、風紀の連中もグルで俺らを騙してたんじゃねぇ―の?
学園を掻き回して、風紀乱そうとしてんのはテメェらの方なんじゃん?」

ぐだぐだ言ってくるし。



う―む。
少々まずい、か?

俺は、顎に手をあてながら視線だけで食堂全体の様子を窺う。


俺の存在(役職)で、今の乱れきった学園の状況を打破出来ると思ってたのに―……
まぁ。俺の容姿もあるから、少しの反感はしょうがないと思っていたけど、この状態はどうよ?生徒会の無能さを露呈させて、潰そうとしていたのに。
今はその逆。



風紀が俺のせいで、信用を失いかけている。




そもそもは、小猿くんの発言がきっかけなんだけどさ。
まぁ、小猿くんはKYだし煩いしウザイし、見目の良い奴らと一緒に居て周りに妬まれる原因があるが―………見た目が良い。
小猿くんは、可愛らしい容姿をしている。
密かに、ファンクラブがあるって話も最近聞いた。


片や俺は、平凡。
しかもいきなりぽっと出て来て、イケメン風紀の中に居て、実は皆の憧れ風紀委員長だと言いはる―…平凡だ。


こんな対照的な俺達。
周りは、当然見目の良い小猿くんの味方をする。

小猿くんに対して今まで不快感を感じていた生徒達も、それよりも俺が委員長だと言うのが反対らしく、いつもは小猿くんを嫉妬の眼差しで睨みつけていたチワワ達も、今は俺を睨んでいる。


(あ―…めんどくせぇ)


大きなため息が出た。

とりあえず、このままここに居るのは不利だろう。


まだ一口も食べていない弁当をしまい、いまだに「最低」だの「信じられない」だの騒いでいる小猿くんの横を無言で通る。


「待てよ!!まだ話の途中だろ!」

当然、がつっと小猿くんに腕を捕まれたが、俺はそれをひねりあげた。


本当にめんどくさい。


「いてぇ!」とか小猿くんが悲鳴を上げたが、スルーする。
今俺は弁当も食えてなくて腹減ってんだよ。

「はいはいはいはい。信じらんないならそれで良いですよ―。好きにしてください」


俺は俺の役目をやりますから。


そう言って、ぺいっと副会長の方に小猿くんを押しやる。「…っ!」

「唯!!?」

「唯大丈夫か?!!」


小猿くんとその取り巻き共が騒いでいる隙に、俺は走った。
今思えば、素晴らしい走り出しだったと思う。
こう、「シュバッ!!!」っと。


とにかく、腹が減っては戦は出来ぬって言うではないか?
ゆっくり弁当が食べれる場所に移動します。


あ、因みに蓮達は―…俺と小猿くんがやいのやいのとやっている間に運ばれてきた食事を、普通に食ってました。
何度も目線で、助けてって信号送っていたのに全部スルーされた。

ひぃりんは食事に一生懸命で、せっちゃんはにやにやしながら俺を見ていて、カナたんは周りの騒音に不快感を現しながらも箸を止めず、円は食べながらじっと蓮を見ていた。


え、なにこれ。俺に味方は居ない?


とりあえず、あいつ等が食堂から戻ってきたらシカトしてやる。


(●`ε´●)ぷんぷnぐぅきゅるるる――――――――――――………



「腹の音にまで遮られるとは……!!!」



早くご飯食べろって事ですね、はい。




**********


蓮side


哀留が逃亡した。


転入生の一方的な言い方に、めんどくささを感じたんだろう。
転入生の腕をひねり上げた後、それを捨てて。陸上選手の如く、走り去りやがった。

まぁ、わからんでもない。俺達も聞いてるだけで面倒だった。

哀留曰わく「小猿」。
こいつの発言で、大半の生徒達が生徒会に対して抱いていた不信感が、風紀に対しての不信感……に変わった。
本当に余計な事をしてくれる。


俺達が口を挟まなかったのは、哀留に対して周りからの余計な反感を買わないため。
………ってのが少しで、大半はまぁ哀留ならこの場をやり過ごせるだろうと思っていたんだが………


逃げやがった。


よく考えろ、まだ後ろに奴らが居んだよ。
哀留に投げ捨てられた猿に纏わりつき、ぎゃあぎゃあ言ってる奴らがっ!!!


あの野郎………
にげるんだったら、コイツ等気絶させてから行けってんだ…!!


後ろに対して苛々しながら水を口にしていると、

「……」

岸沼からの強い視線を感じた。
否、視線なんか猿達が来た時から寄越されてんだがな。

ちらっと視線だけを向けると、目が据わっていた。


なんだその凶悪な顔は。
哀留の存在を拒絶するような奴らを潰したい………って言いたいんだろうが、俺は岸沼を視線で押さえていた。

ここで奴らをボコすのは簡単だ。
凄く簡単だ。
めちゃくちゃ簡単だ。

だが、それをしたら此方が不利になる。


(黙っておとなしくしていろ)


そう視線を送ると、岸沼は俺をガン見して来た。

どうやら、奴らや哀留を見たら行動を起こしそうだから、気を紛らわせるために俺を見ているらしいのだが………


止めろ。
なんかお前に見られてると、何かを失う気がする…!!


とりあえず飯も食ったし、このウザイ視線と騒音から離れるために立ち上がる。

他の連中も食い終わっていたらしく、俺達はそこから立ち去っ「蓮!!!!」…………あぁ゛ん!!!!?


ガンを飛ばしながら振り向くと、猿が俺の制服の袖を掴みやがった。

「蓮達は騙されてるんだ!!!でも安心しろよ!!俺が哀留と話して、委員長を辞めさせるから!!」

は?
まだそんなくだらない事言ってんのか?

俺は無言で捕まれていた腕を振り払い、先に食堂から出て行っている岸沼達の背を追った。


が、何故かまだ猿がついてきている。
本当になんだこいつ…


「なぁ!蓮!!」


廊下をずんずんと進む。そんな俺の後を付いてきている猿。
その猿の後ろを追いかけてきている、取り巻き共。

ずっと俺に話しかけてきている猿の声に不思議に思ったのだろう、先を歩いていた愛染さん達が振り返った。

「なにやってんだ?」

「知らないですよ」

此奴ウザイんだよ、と言えば「今更」って鼻で笑われた。

「なぁ!!!!!!!」

「…―っせぇな!!!」

いい加減に煩い。
怒鳴りながら振り向けば、双子が猿に飛びつき守るように抱きついた。

「ちょっと!」

「怒鳴らないでよ!」

「「唯ちゃんが怖がっちゃう!!」」


本気でウザくなってきたぞ―………


指の関節をボキボキ慣らしながら、双子と猿を見下ろすとソイツ等の肩が揺れた。
後ろから「手出すなって言ってたくせに…水沢先輩ずるい!」って岸沼の声が聞こえたが、何がずるいだ。

若干岸沼に呆れていると、猿が双子から抜け出し近づいてきた。


「……大丈夫だよ、蓮!心配はいらないから!!」


…また此奴は支離滅裂な事を。
訳わからん、って表情をしていたら―………この猿は爆弾を落としてきた。



「哀留が風紀委員長を辞めたら、俺がなってやるから!
だから、次期委員長を誰にするかとか心配なんていらないからな!!」



……………………




この場にいる全員が固まった。



は?
は??
此奴、何言ってんだ?


「ゆ、唯!!!???何を言っているんですか?!!!」

「唯ちゃん!?」

「唯!?どう言うことだ?!!」

「唯!!?何かの聞き違いだよな?」

「「え、唯ちゃん風紀委員長になるの??」」


「落ち着けよ皆!だって、風紀委員長が居なくなったら、蓮達だって大変だろ?
俺、こう見えて喧嘩強いし!!リーダーシップもあるんだぜ!!」


へへん☆と自慢げに言う猿。



だ か ら  な  ん  だ !?



自分の妄想過大評価はどうでも良いが、それと委員長は関係ないだろうが。

しかも、哀留辞めること前提だし(笑)
いや、これは笑い事じゃないな―……実在そうなったら、確実に血の海になる。猿が血まみれになるのは構わないが―……


ちらっと愛染さん達を見ると、冷めた目をしていた。
気持ちはわかる。
更に奥では、岸沼に無理やりヘッドフォンをつける柊と睦月が居た。
あぁ、賢明な判断だ。
今の台詞を岸沼にきかせるべきではない。
哀留に懐いている奴が聞けば、ブチ切れ間違いない。
そして、俺が面倒だ。


俺達が冷めているのとは反対に、生徒会や取り巻き共はヒートアップしていた。

「ゆ、唯!ならば生徒会に入りましょう?」

「あ!それ大賛成ぃ!」

「反対だ!唯は委員会なんか入んなくていいんだよ!むしろ、バスケ部のマネージャーやらないか?」

「黙れ似非爽やか野郎が!唯は何もする必要ねぇんだよ!!」

「「僕らは楽しければいいや―」」

ぎゃあぎゃあと猿を止めようとする取り巻き共に、

「皆我が儘言うなよな!風紀は大変なんだからしょうがないだろ!」

もう風紀委員長になったかのような言い方の猿。


本気で有り得ねぇ……


「ヲイ水沢」

「なんすか」

「あれどうすんだよ?」

「どうするって…妄想を口に出してるだけですからね」

だが、一応釘をさしておくか。
言い合い?をしている中に声をかける。

「ヲイ。さっきから好き勝手言ってるが、委員長は居るんだぞ」

「だからそれは―…!!」

猿が反感するように吠えた。猿が喚いた所で、どうにもならないがな。



「俺達のトップはアイツだ」



だからこの話は終わりだと言い、俺達はその場から立ち去った。

その時。目を見開き、悔しそうに唇を噛んでいる猿が目の端に見えた。
大方、断られるとは思っていなかったんだろう。


……だから、その自信はどこからくんだよ。


とにかく、あんな妄想KY猿は放置しておく。
まぁ一応。放課後辺りまた風紀幹部に集合かけて、さっきの猿の事について話すか。
このまま、おとなしく引き下がる気がしないしな―…

なんか、どんどん面倒になっていくのは…俺の気のせいか?



………この時、不吉な事を口走ったからだろうか。

……本当にこの後、更に面倒な事が起こるのは言うまでもない。



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