オマケなのに溺愛されてます

浅葱

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鼠と番犬

なんだか不穏な話の流れになってきた。


「…………頭がこんがらがってきました」

正直にそう言うと、ローハンはいつもの穏やかな笑みを浮かべたまま「すぐに理解出来なくて当然ですよ」と慰めてくれる。そして出来れば聖女とは居住を別に構えた方がいいとも提案してくれた。

「適当な場所をいくつか用意したので、定期的に居場所を変えるのがいいでしょう。聖女は明確な意志を持ってカナタさんを狙っています。なので護衛もつけた方がいいですね」
「……俺以外のか?」
「戦力としてはジークひとりで充分ですが、人手が必要なこともあるでしょう。信頼出来る部下を数人つけるのが無難です」
「……チッ」

なんで舌打ちするかなあ、とローハンは通信機越しに困った顔をする。ついでに奏多もなんでだよ、という顔でジークベルトを見上げる。この期に及んでその態度とは、さすがに肝が据わっているというかなんというか…


(でも、私を守る為だけに騎士の人たちを連れ回すのは、ちょっと気が引けるなぁ)

なんて内心で思っていた奏多であったが、その気持ちとは裏腹に護衛を希望する者は後を絶たなかった。結局ジークベルト、カイロス、メルディの他に後5人ほどを選ぶことになり、明日はその選別と移動の準備に費やすこととなった。







「…近衛騎士の人たちやジルベール殿下を、ここに残して行って平気なの?」

荷造りをしながら奏多はジークベルトにそう聞いてみる。すると「監視役をつけているから大丈夫だ」との返答がかえってきた。

「監視役?」
「ああ、アイツらが勝手な行動を取らない為の抑止力も兼ねてもらう」
「…………(誰のことだろう?)」
「移動先に着いてから、詳しい話はそこでしよう。ここは壁が薄いし、誰が聞いているかわからないからな」
「?ここ、壁薄かったっけ??」
「ああ、ついでに鼠も出るようだ」

そう言った瞬間、いきなりジークベルトが抜刀した。えっ、と思った時には既に扉に剣が突き刺さっていた。あまりに突然の出来事に奏多が呆然としていると、扉の向こうから苦しげな声が聞こえてくる。だ、誰かそこにいるの!!?


「立ち聞きとは随分と行儀が悪い」
「……貴様…」
「わっ、あっ、血!血が出てるっ!!」

扉の向こうに立っていたのは先程ジークベルトと揉めていた金髪の近衛騎士だった。前髪を後ろに撫でつけた所謂オールバックのいかにも神経質そうな男である。その男が、右手から血を流しながらこちらを物凄い形相で睨みつけていた。
感想 10

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