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本編
第五話 その距離、マイナス何センチ?
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「だよな? 修二」
同意を求める京さんの声を合図に、凍り付いていた時間がゆっくりと動き出す。
「え……、あ、……」
そして俺は思わず慶に視線を走らせたことをすぐに後悔した。慶が傷ついた顔で俺を見ていたから。慶にあんな顔をさせてしまうのは、今日二度目だ。
ごめん、慶。軽蔑した? けど、これが俺なんだ。
好きでもない男と、ディープキスどころかセックスだってできる。
お前は俺のこと好きって言うけど、俺とヤるなんて考えたことないだろ?
俺はあるよ。何度だってある。
お前に突っ込まれて、めちゃくちゃにされたいって。
お前の舐めて勃たせて、お前に跨って腰振って、お前のイキ顔見たいって。
そんな生々しいこと、お前は想像したこともないだろ?
けど、付き合うってことはそういうことだろ?
いざってときに、やっぱり勃ちませんでした、なんて。
目も当てられない。俺は嫌だ。
俺はもう慶を傷つけたくないし、自分も傷つきたくない。
だから慶を拒まなきゃいけない。
さっき慶のキスを受け入れてしまいそうになったのは気の迷い。
京さんが来てくれてよかった。
「そ、だよ」
からからに乾いた喉にことばがつっかえて、情けなく掠れた声になる。それでも慶から目を逸らさなかったことだけが、俺のちっぽけなプライドだった。
「はっ。だからなんだよ」
慶が乾いた声で笑い飛ばす。
「あんた、修二と付き合ってんの?」
「いや? 付き合ってはねえけど?」
「だったらあんたこそ関係ねえじゃん。黙ってろよ、おっさん」
京さんに捨て台詞を吐いた慶が、俺のほうに一歩二歩と近づいてくる。
「修二、お前、あいつのこと好きなわけ?」
「別にそういうわけじゃ……」
「だよな。お前が好きなのは俺なんだから」
俺のすぐ目の前で立ち止まり、慶がさも当然のように言った。
「お、俺はお前のことなんか……」
「嘘吐くなよ、修二。お前、俺のこと好きだろ? 一年前のあんときも、好きだったろ? 好きなくせに振ったんだろ?」
「な、なに言って……」
さっきまでの余裕のなさはどこへやら、落ち着き払って核心をついてくる慶に戸惑いを隠せない。
「正直俺にはわかんねえけどさ、修二、お前が気にしてんのは世間体だろ? 家族にバレたくねえとか? いいじゃん別にそんなこと。気にすんなよ。ゲイでもいいじゃん。男同士だっていいじゃん」
「よくねえよっ!」
「なんでだよ。大事なのは俺らの気持ちだろ? 俺はお前が好きで、お前は俺が好きなんだから。それでいいだろ?」
「俺はお前なんか好きじゃねえっ! 離せよっ!」
「離すかよっ! もう絶対に逃がさねえ」
慶にきつく抱き締められて、慶の鼓動を肌で感じて、このまま慶に身を預けてしまいたいと思ってしまう自分がいる。逃げなきゃいけないのに、拒まなきゃいけないのに、この温もりを手放したくないと願ってしまう。
「なあ修二、言えよ。俺が好きだって。ほんとのこと言っちまえよ」
慶には、ほんと困る。
慶は自身家で、俺様で、自由だから、俺はいつだって慶に振り回されてばかりいて。
けど、いつだって自分の気持ちに正直で、真っ直ぐで、ブレない慶は俺の憧れで。
初めて会ったその瞬間から、俺は慶に魅かれてた。
ずっとずっと好きだった。
そして今も……
「好きだよ」
ぽつりと呟けば、慶が慌てた様子で俺の顔を覗き込む。
「ちょ、もっかい。もっかい言って。ちゃんと聞こえなかった」
急にガキっぽい顔を見せる慶に思わずふっと笑いが漏れた。
「あ、笑った」
「笑ってねえよ」
「笑ったじゃん、今。もっと笑えよ。俺、修二の笑った顔すげえ好き」
「お前ってほんと……、自由だよな」
「そんな俺も好きだろ?」
そう言って、慶が無邪気に笑う。
「好きだよ。俺、お前のこと以外好きになったことねえし、これからも、お前以外の誰かを好きになるとは思えない。そんくらい。慶、俺、お前が好きだ」
意外なことを聞いたとでもいうように、慶が大きく目を見開く。
「けど、俺、お前と付き合うつもりねえから」
慶の腕の中から抜け出して、そう締めくくった。
慶に想いを告げるつもりなんてなかった。
本音を言うつもりなんてなかった。
けどこうなったらしょうがない。
格好悪くても、自分を曝け出すしかない。
「また振り出しに戻んのかよ。それは世間体を気にしてっからだろ? だったら俺……」
慶のことだから焦れて怒るか強引に喚くかすると思ったのに、慶の反応は落ち着いたものだった。
「確かにそれもある。けど、それだけじゃねえよ」
「じゃあ、俺がノンケだから?」
「は?」
慶がノンケなんてことばを知ってるとは思わなくて、ぽかんと間抜けな顔を曝す俺に、慶がふふんと勝ち誇ったように笑う。
「修二はノンケは相手にしねえんだって。さっき店の常連ってやつにそう言われて牽制された」
「ちっ、誰だよそれ。まあ、いいや、誰でも。確かにそうだし」
「じゃあ何? 俺がノンケじゃなきゃ付き合ってくれるってこと? 俺がゲイになればいいわけ?」
「は? お前なに言ってんの? んなの無理に決まってんだろ」
突拍子もないことを言い始めた慶が、ふと裏口のドアのほうに視線を投げる。
「なあ、聞いてんだろ? あんたもゲイ? どうやったらゲイになれんの?」
慶の視線の先には煙草を燻らす京さんがいた。京さんの存在をすっかり忘れていた自分の余裕のなさを反省している場合ではないと気付いたのは、京さんが悪ノリしていい加減なことを言い始めたからだ。
「うーん、ノンケがゲイにねえ……、とりあえず男とヤってみんのが一番じゃね? なんなら俺が手取り足取り教えてやるぜ?」
「ちょっと、京さん、なに適当なこと言ってんだよ」
眉を顰める俺のすぐ隣で、慶はうーんと唸っている。
「ちょ、慶、信じちゃダメだから。あの人はただヤりたいだけだから。てかムリだから」
「うん、俺もムリだと思う」
「だろ? だったら……」
「俺、男は修二しかムリ。修二にしか勃たねえし」
「は?」
慶が俺に勃つ?
本当に?
俺に?
嘘だ。
「修二、聞いたか? こいつ、お前とヤりてえんだってよ。とりあえず一発ヤらしてやれば?」
にやにやとエロ親父丸出しで笑う京さんに、俺と慶の二人がほとんど同時に怒鳴った。
「京さんは黙っててよっ!」
「おっさんは黙ってろっ!」
思わず慶と顔を見合わせると、京さんがまた無責任なことを言う。
「おいおい気が合うなー、お前ら。やっぱもう付き合っちゃえばいいんじゃね?」
「京さん、もうまじでやめてよ。てかこんなとこで油売ってたら、また朔夜さんに怒られるよ?」
「はいはい、わかりましたー。邪魔者は消えますよー」
ま、頑張れ。と片手をあげて裏口のドアから店へ戻っていく京さんの後ろ姿を横目で見送る。ほっと息を吐いく間もなく、今度は慶に後ろから抱き竦められた。
「なあ、修二。ゲイは男しか好きになんないからゲイなんだろ? そしたら俺もゲイだし。だって俺も、今までお前以外のやつ好きになったことねえもん」
「そんなの……、そんなの屁理屈だし。彼女いっぱいいたじゃん。女とヤってんじゃん。お前がゲイなわけねえじゃん」
「そりゃ女は抱けるけど。。俺、今まで好きになった女なんてひとりもいない。男でも女でも、俺が今まで好きになったのはお前だけなんだ、修二。それにお前だってさっきのやつとヤってんだろ? セックスすんのに好きとかなんとか別に関係ねえだろ?」
「関係なくねえし。俺は誰だっていいってわけじゃ……」
「俺もだよ。俺も好きなやつとヤりたい。もう俺、好きなやつとしかヤりたくねえ。女なんかどうでもいい。俺、お前とヤりたい、修二」
好きだ。
ダメ押しのように耳元に囁かれ、俺は文字通り腰砕けになった。今日はいろいろありすぎて、精神的にも肉体的にももう限界を超えている。
「やめ……、慶。まじで、やめろよ。俺もう……」
がくつく足を叱咤して腕の中から逃れようと身を捩った拍子に、慶にくるりと向きを変えられ、正面から慶に抱きとめられる。
「諦めろよ、修二。俺のもんになっちまえよ」
欲に濡れた目で、慶が俺を見ていた。初めて見る慶のオスの顔に、下半身がずくりと疼く。そんな俺の変化に気付いたのか、慶がにやりと笑う。
「慶……」
「好きだよ、修二。ずっと好きだった。これからもずっと、お前だけが好きだ」
もうダメだ。
もう拒めない。
もう誤魔化せない。
「……俺も、好き。慶が好き」
「修二……」
慶の熱い吐息が唇にかかる。それだけで泣いてしまいそうになって目を閉じた。
「ふっ、……ぁ、んんっ」
乱暴に入り込んできた慶の熱く濡れた舌に、乾ききっていた俺のすべてが慶を求めて暴れ出す。
「ぁ……、け、ぃ……、っ、ぁ……、ぅん……」
俺の口の中を犯す、慶の舌が熱い。
俺の体を這う、慶の手が熱い。
「は、……ぁ、修二、っ……修……」
脳天まで痺れる。
体中の血が沸騰する。
「け、……も、っとぉ……、ん……は、ぁっ」
ほんの少しの隙間も許せずにかたく抱き合って、お互いを貪り合った。
・
・
・
「なあ慶、お前の舌の長さって何センチ?」
「はあ? なにその質問。なんで?」
「なんでって……」
慶とベロチューしたら、
その距離、およそマイナス何センチ?
そんなことを考えたのは、それからしばらく経ってからのこと。
同意を求める京さんの声を合図に、凍り付いていた時間がゆっくりと動き出す。
「え……、あ、……」
そして俺は思わず慶に視線を走らせたことをすぐに後悔した。慶が傷ついた顔で俺を見ていたから。慶にあんな顔をさせてしまうのは、今日二度目だ。
ごめん、慶。軽蔑した? けど、これが俺なんだ。
好きでもない男と、ディープキスどころかセックスだってできる。
お前は俺のこと好きって言うけど、俺とヤるなんて考えたことないだろ?
俺はあるよ。何度だってある。
お前に突っ込まれて、めちゃくちゃにされたいって。
お前の舐めて勃たせて、お前に跨って腰振って、お前のイキ顔見たいって。
そんな生々しいこと、お前は想像したこともないだろ?
けど、付き合うってことはそういうことだろ?
いざってときに、やっぱり勃ちませんでした、なんて。
目も当てられない。俺は嫌だ。
俺はもう慶を傷つけたくないし、自分も傷つきたくない。
だから慶を拒まなきゃいけない。
さっき慶のキスを受け入れてしまいそうになったのは気の迷い。
京さんが来てくれてよかった。
「そ、だよ」
からからに乾いた喉にことばがつっかえて、情けなく掠れた声になる。それでも慶から目を逸らさなかったことだけが、俺のちっぽけなプライドだった。
「はっ。だからなんだよ」
慶が乾いた声で笑い飛ばす。
「あんた、修二と付き合ってんの?」
「いや? 付き合ってはねえけど?」
「だったらあんたこそ関係ねえじゃん。黙ってろよ、おっさん」
京さんに捨て台詞を吐いた慶が、俺のほうに一歩二歩と近づいてくる。
「修二、お前、あいつのこと好きなわけ?」
「別にそういうわけじゃ……」
「だよな。お前が好きなのは俺なんだから」
俺のすぐ目の前で立ち止まり、慶がさも当然のように言った。
「お、俺はお前のことなんか……」
「嘘吐くなよ、修二。お前、俺のこと好きだろ? 一年前のあんときも、好きだったろ? 好きなくせに振ったんだろ?」
「な、なに言って……」
さっきまでの余裕のなさはどこへやら、落ち着き払って核心をついてくる慶に戸惑いを隠せない。
「正直俺にはわかんねえけどさ、修二、お前が気にしてんのは世間体だろ? 家族にバレたくねえとか? いいじゃん別にそんなこと。気にすんなよ。ゲイでもいいじゃん。男同士だっていいじゃん」
「よくねえよっ!」
「なんでだよ。大事なのは俺らの気持ちだろ? 俺はお前が好きで、お前は俺が好きなんだから。それでいいだろ?」
「俺はお前なんか好きじゃねえっ! 離せよっ!」
「離すかよっ! もう絶対に逃がさねえ」
慶にきつく抱き締められて、慶の鼓動を肌で感じて、このまま慶に身を預けてしまいたいと思ってしまう自分がいる。逃げなきゃいけないのに、拒まなきゃいけないのに、この温もりを手放したくないと願ってしまう。
「なあ修二、言えよ。俺が好きだって。ほんとのこと言っちまえよ」
慶には、ほんと困る。
慶は自身家で、俺様で、自由だから、俺はいつだって慶に振り回されてばかりいて。
けど、いつだって自分の気持ちに正直で、真っ直ぐで、ブレない慶は俺の憧れで。
初めて会ったその瞬間から、俺は慶に魅かれてた。
ずっとずっと好きだった。
そして今も……
「好きだよ」
ぽつりと呟けば、慶が慌てた様子で俺の顔を覗き込む。
「ちょ、もっかい。もっかい言って。ちゃんと聞こえなかった」
急にガキっぽい顔を見せる慶に思わずふっと笑いが漏れた。
「あ、笑った」
「笑ってねえよ」
「笑ったじゃん、今。もっと笑えよ。俺、修二の笑った顔すげえ好き」
「お前ってほんと……、自由だよな」
「そんな俺も好きだろ?」
そう言って、慶が無邪気に笑う。
「好きだよ。俺、お前のこと以外好きになったことねえし、これからも、お前以外の誰かを好きになるとは思えない。そんくらい。慶、俺、お前が好きだ」
意外なことを聞いたとでもいうように、慶が大きく目を見開く。
「けど、俺、お前と付き合うつもりねえから」
慶の腕の中から抜け出して、そう締めくくった。
慶に想いを告げるつもりなんてなかった。
本音を言うつもりなんてなかった。
けどこうなったらしょうがない。
格好悪くても、自分を曝け出すしかない。
「また振り出しに戻んのかよ。それは世間体を気にしてっからだろ? だったら俺……」
慶のことだから焦れて怒るか強引に喚くかすると思ったのに、慶の反応は落ち着いたものだった。
「確かにそれもある。けど、それだけじゃねえよ」
「じゃあ、俺がノンケだから?」
「は?」
慶がノンケなんてことばを知ってるとは思わなくて、ぽかんと間抜けな顔を曝す俺に、慶がふふんと勝ち誇ったように笑う。
「修二はノンケは相手にしねえんだって。さっき店の常連ってやつにそう言われて牽制された」
「ちっ、誰だよそれ。まあ、いいや、誰でも。確かにそうだし」
「じゃあ何? 俺がノンケじゃなきゃ付き合ってくれるってこと? 俺がゲイになればいいわけ?」
「は? お前なに言ってんの? んなの無理に決まってんだろ」
突拍子もないことを言い始めた慶が、ふと裏口のドアのほうに視線を投げる。
「なあ、聞いてんだろ? あんたもゲイ? どうやったらゲイになれんの?」
慶の視線の先には煙草を燻らす京さんがいた。京さんの存在をすっかり忘れていた自分の余裕のなさを反省している場合ではないと気付いたのは、京さんが悪ノリしていい加減なことを言い始めたからだ。
「うーん、ノンケがゲイにねえ……、とりあえず男とヤってみんのが一番じゃね? なんなら俺が手取り足取り教えてやるぜ?」
「ちょっと、京さん、なに適当なこと言ってんだよ」
眉を顰める俺のすぐ隣で、慶はうーんと唸っている。
「ちょ、慶、信じちゃダメだから。あの人はただヤりたいだけだから。てかムリだから」
「うん、俺もムリだと思う」
「だろ? だったら……」
「俺、男は修二しかムリ。修二にしか勃たねえし」
「は?」
慶が俺に勃つ?
本当に?
俺に?
嘘だ。
「修二、聞いたか? こいつ、お前とヤりてえんだってよ。とりあえず一発ヤらしてやれば?」
にやにやとエロ親父丸出しで笑う京さんに、俺と慶の二人がほとんど同時に怒鳴った。
「京さんは黙っててよっ!」
「おっさんは黙ってろっ!」
思わず慶と顔を見合わせると、京さんがまた無責任なことを言う。
「おいおい気が合うなー、お前ら。やっぱもう付き合っちゃえばいいんじゃね?」
「京さん、もうまじでやめてよ。てかこんなとこで油売ってたら、また朔夜さんに怒られるよ?」
「はいはい、わかりましたー。邪魔者は消えますよー」
ま、頑張れ。と片手をあげて裏口のドアから店へ戻っていく京さんの後ろ姿を横目で見送る。ほっと息を吐いく間もなく、今度は慶に後ろから抱き竦められた。
「なあ、修二。ゲイは男しか好きになんないからゲイなんだろ? そしたら俺もゲイだし。だって俺も、今までお前以外のやつ好きになったことねえもん」
「そんなの……、そんなの屁理屈だし。彼女いっぱいいたじゃん。女とヤってんじゃん。お前がゲイなわけねえじゃん」
「そりゃ女は抱けるけど。。俺、今まで好きになった女なんてひとりもいない。男でも女でも、俺が今まで好きになったのはお前だけなんだ、修二。それにお前だってさっきのやつとヤってんだろ? セックスすんのに好きとかなんとか別に関係ねえだろ?」
「関係なくねえし。俺は誰だっていいってわけじゃ……」
「俺もだよ。俺も好きなやつとヤりたい。もう俺、好きなやつとしかヤりたくねえ。女なんかどうでもいい。俺、お前とヤりたい、修二」
好きだ。
ダメ押しのように耳元に囁かれ、俺は文字通り腰砕けになった。今日はいろいろありすぎて、精神的にも肉体的にももう限界を超えている。
「やめ……、慶。まじで、やめろよ。俺もう……」
がくつく足を叱咤して腕の中から逃れようと身を捩った拍子に、慶にくるりと向きを変えられ、正面から慶に抱きとめられる。
「諦めろよ、修二。俺のもんになっちまえよ」
欲に濡れた目で、慶が俺を見ていた。初めて見る慶のオスの顔に、下半身がずくりと疼く。そんな俺の変化に気付いたのか、慶がにやりと笑う。
「慶……」
「好きだよ、修二。ずっと好きだった。これからもずっと、お前だけが好きだ」
もうダメだ。
もう拒めない。
もう誤魔化せない。
「……俺も、好き。慶が好き」
「修二……」
慶の熱い吐息が唇にかかる。それだけで泣いてしまいそうになって目を閉じた。
「ふっ、……ぁ、んんっ」
乱暴に入り込んできた慶の熱く濡れた舌に、乾ききっていた俺のすべてが慶を求めて暴れ出す。
「ぁ……、け、ぃ……、っ、ぁ……、ぅん……」
俺の口の中を犯す、慶の舌が熱い。
俺の体を這う、慶の手が熱い。
「は、……ぁ、修二、っ……修……」
脳天まで痺れる。
体中の血が沸騰する。
「け、……も、っとぉ……、ん……は、ぁっ」
ほんの少しの隙間も許せずにかたく抱き合って、お互いを貪り合った。
・
・
・
「なあ慶、お前の舌の長さって何センチ?」
「はあ? なにその質問。なんで?」
「なんでって……」
慶とベロチューしたら、
その距離、およそマイナス何センチ?
そんなことを考えたのは、それからしばらく経ってからのこと。
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