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練習試合2
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練習は日曜日を除き、毎日行われた。二週間ほどすると、一年生たちも徐々に慣れてきたのか、レシーブ練習だけでぐったりすることはなくなった。
真希と私は相変わらず居残り練習をしている。真希の動きのキレと力強さが日を追うごとに増していると私は肌で感じていた。
それを真希に言うと、首を捻りながら
「いやあ、まだまだかな。なんか微妙に違うんだよなあ」
と言うだけで納得していない様子だった。
四月の三週目、水曜日、練習前に全員が集められ、真希から土曜日に練習試合をすることを伝えられた。
「良子が南山高校のバレー部の友達に声をかけてくれた。とても全国レベルとは言えないけど、私たちの初陣にはちょうどいいと思う。場所はこの体育館で時間は午後から」
この県で全国レベルなど白峯しかない。県内で強い選手は全員白峯に進学する一極集中が何年も続いている。それどころか近隣の県からも人が集まる。
他の高校は白峯の足元にも及ばないチームばかりだ。そのチームに通じない攻撃など価値はない、真希の言わんとすることを私は汲み取った。
「当日は一年生を中心に攻撃を組み立てる。レシーブが悪くてどうしようもないときだけ私や奈緒が打つけどね。一年生の攻撃が通じないようじゃ、インハイなんか絶対にいけないからね」
真希は、絶対、の部分を強調した。
「気合入れていくよ」
土曜日を迎えた。
練習試合は午後からだが、私は九時頃には体育館に着いた。
「やっぱりいた」
真希はすでに来ていて、準備運動をしている。
「真希、今日は午後からだよ。時間間違えたの?」
「まさか。練習しようと思って」
私が柔軟を始めると同時に真希は立ち上がり、ボールを片手で掴んでエンドラインから五メートルほど離れた体育館の壁際に移動した。
真希はボールに回転をかけ、エンドラインより少しだけコート内側に着地するだろう位置に高くトスを上げる。ジャンプサーブだ。三歩助走をつけ、エンドラインを踏まないギリギリで前に飛び込みながら強くボールを打つ。ボールは普段のアタックと変わらぬスピードで、相手コートのエンドラインギリギリに落ちた。
真希が満足げな顔で少し笑っているのを見て、私もつられて笑った。
「真希のサーブだけで試合に勝っちゃいそうだね」
「いや、今のはたまたま。練習不足だから結構失敗するかも」
そう言いながら真希は黙々とボールを高く上げ、ジャンプサーブを打っていく。威力とスピードは安定しているが、時たまエンドラインを大きく超えてアウトになってしまう場合もある。
「こういうこともある」
真希が悔しさを滲ませる。
「今日はジャンプサーブなの?」
「今日は、というかこれから。点を取る方法を増やしたい」
真希は喋りながら再びトスを高く上げた。
私も柔軟を終え、ボールを掴んだ。真希と練習しようと思い早目に来たが、黙々とサーブの練習をする真希の邪魔をしてしまうのは憚られた。
「アタックの練習でもする?」
真希が綺麗にサーブを決めたところで私に声をかけてきた。
「サーブは?」
「何とかなると思う。それに暇そうだったし」
「暇ではないけど。まあ付き合って欲しい練習あるからお願いしたかったんだけど」
私はコートのレフト側に移動した。
「今日はたぶんレシーブが乱れることが多いと思う。それを想定して二段トスを上げて欲しくて」
「了解」
セッター以外がアタッカーにトスを遂げることを二段トスと言う。チームとしても個々の実力も未熟だからおそらくレシーブは綺麗にセッターに返らない。セッター以外のトスに慣れる練習がしたい。とはいえ、真希が上げるトスには慣れているのだが。
真希はボールを手に取り、片面コート中央へ移動した。いつもと同じ流れで真希は軽くボールを打ち、私が真希の真上にレシーブをし、真希がトスをする。
何回かアタックを打ってから真希と交代し、私がトスを上げる。
良子が普段上げる位置よりもネットから離れたり、逆に近くなったりしても真希は助走のテンポを細かく変え、アタックを問題なく決めていく。
「レシーブ乱れて私が上げると、こんなトスになるかも」
普段の練習だとネット際、コート中央でトスを上げる。飛距離は精々四メートルほどだが、今のように離れた場所からトスを上げるとなるとさらに飛距離が必要になる。自分にそれを飛ばせるだけの筋力が足りていない。それはおそらく一年生たちもだ。
「大丈夫、どんなトスでも決めるよ。でも月曜からこういう練習もしよう」
その後も練習をしたが、トスがネットに近かったり遠かったりとなかなか一定の位置に上がることはなかった。それでも真希は何も言わず、同じようにアタックを決めていく。
全員が集まり練習開始後しばらくして、対戦相手のチーム南山高校も到着した。全員で十人いたが、平均で一六〇センチといったところで、一七〇センチの私より大きい選手はいない。
全員が並んで挨拶をし、それぞれが準備運動を始めようとしていたところで、南山高校の部長で良子の友達が良子に話しかけた。
「良子、急で本当に悪いんだけど、もう一校来ることになっちゃった。勝手にごめん」
相手の部長は手を合わせ、何度も頭を下げていた。
「別にいいけど、急だね」
良子はいいよねと、壁打ちをしていた真希に視線を送り確認し、真希は小さく頷いた。
「それで、その相手なんだけど、星和なんだよね」
春日さんとパスをして体を温めていた私は思わず動きを止めた。
真希は私が何に驚いているのか分からないのか黙って壁打ちを続けている。
「星和って強いんですか?」
私が突然動きを止めてしまい、手持ち無沙汰になった春日さんが不服そうにしている。
「県で二位だよ。県内の大会だと決勝は毎回星和対白峯になるくらい県の中では強いよ」
私は、春日さんとおそらく白峯以外を知らない真希に聞こえるように説明した。私がちらりと真希の顔を見ると、そうなのか、と驚いた顔をしている。
「ますます燃えてきましたよ。練習試合とはいえ、県二位を倒しちゃいますよ!」
春日さんが大きな声で宣言すると同時に、入り口からお願いします! と挨拶が聞こえ、その場の全員が注目した。
全員で七人と少数ながら、全員身長が一七〇センチ近く、眼光が鋭い。星和の全員が真希の姿を認めると、本当にいる、などと話しているのが私の耳に届いた。
どうやら、真希のチームがどれほどのものか偵察に来た、というところのようだ。真希はモテるなあと、私は呑気に考えながら全員で挨拶を済ませ、南山高校と私たちの試合が始まった。
コート中央で六人が円形となり、真希が指示を出す。
「前も言ったと思うけど、攻撃は一年生中心。特にクイックは積極的に使うから、そのつもりで」
「真希の言った通り、トスは一年生中心に上げる。けど、五点差付いたら、真希を中心にトス回しをする。練習試合といえども負ける気はないよ」
はい! と一年生が応え、各々がポジションについた。
主審が笛を吹き、南山高校のサーブで始まる。
相手のサーブが山なりに春日さんの正面に飛んできた。春日さんはそれをセンターとライトの中間にいる良子の真上に丁寧にレシーブをする。
北村さんは上がったボールを見ながら、良子の手にボールが収まったと同時にネット間際でジャンプした。
良子は北村さんがジャンプしているのをちらりと見てから、そこに素早くほぼ直線的にトスを上げた。
北村さんが思い切り腕を振り切り、ボールをだれもいないコートに叩きつける。
「いいじゃん、息ぴったり」
真希は北村さんの背中を軽く叩きながら褒めた。
真希は相手が転がしてきたボールを拾い、一回バウンドさせ良子に渡した。
「サーブよろしく」
主審が笛を吹き、良子がサーブを打ち、相手の攻撃態勢を崩す。相手のエースと思われる人が苦し紛れにその場でジャンプをして軽く打って返球してきた。
良子は素早くネット際に移動して、ボールが飛んでいった方向の双海さんに声をかけた。
「双海さん、チャンスボール」
私は良子がいる真上に上がってくると思っていたが、レシーブしたボールは短くアタックライン上までしか届かない。良子の反応が遅れたが、それなりに高さはあり、良子は空中で態勢を崩しながら北村さんがいる位置にクイックを上げた。
北村さんはトスが上がってくるとは思っていなかったのか、慌ててジャンプし何とか相手コートに返そうと手を伸ばしたが、ボールには届かず、ボールはそのままネットを超え相手コートのサイドラインも超え落ちた。
おそらく良子にアタッカーを見る余裕がなかったのだろう。練習とは違って状況は刻々と変わる、良子を含め全員まだ実践に慣れていない。
「北村さん、あれくらいのレシーブならクイックを使っていく。常に自分が打つつもりで跳んでね」
真希が北村さんにアドバイスをする。Bクイックなら多少のレシーブの乱れは吸収できる、Bクイックを練習し続けた理由である。
その後は真希の指示通り、クイックを中心に攻撃をし、点を重ねた。真希が後衛に下がってからは、春日さんを中心に点を重ねていく。
やっぱり、わざわざ福岡から来ただけあって、実力は本物だ。相手の南山高校に春日さんを止められる人はいない。この試合では自分の出番はなさそうだ。
気がつけば試合はワンサイドゲームになり、私たちが勝利した。
お互いのチームがエンドラインで、ありがとうございました、と挨拶をし、南山高校の面々はコートから退き、入れ替わりで星和高校が入って来た。
今日の練習試合では、一セットごとに試合相手を入れ替え、空いているチームが審判をすることになっている。
私たちは少しの休憩を挟んだのち、試合がすぐに開始された。
「相手の星和は県二位らしい」
真希の声から少しだけ闘争心が滲み出ている。らしい、というのは今の今までそのことを知らなかったからだ。
「春日さんが言っていたように倒すよ。星和を倒せば後は白峯だけだからね」
真希が一度切り、一年生、特に春日さんに発破をかけた。
「とはいえ、トス回しはさっきと同じ、一年生中心。県二位相手でも攻撃が通じるところを見せて」
はい! と春日さんは一段と大きな声を上げて応えた。
真希と私は相変わらず居残り練習をしている。真希の動きのキレと力強さが日を追うごとに増していると私は肌で感じていた。
それを真希に言うと、首を捻りながら
「いやあ、まだまだかな。なんか微妙に違うんだよなあ」
と言うだけで納得していない様子だった。
四月の三週目、水曜日、練習前に全員が集められ、真希から土曜日に練習試合をすることを伝えられた。
「良子が南山高校のバレー部の友達に声をかけてくれた。とても全国レベルとは言えないけど、私たちの初陣にはちょうどいいと思う。場所はこの体育館で時間は午後から」
この県で全国レベルなど白峯しかない。県内で強い選手は全員白峯に進学する一極集中が何年も続いている。それどころか近隣の県からも人が集まる。
他の高校は白峯の足元にも及ばないチームばかりだ。そのチームに通じない攻撃など価値はない、真希の言わんとすることを私は汲み取った。
「当日は一年生を中心に攻撃を組み立てる。レシーブが悪くてどうしようもないときだけ私や奈緒が打つけどね。一年生の攻撃が通じないようじゃ、インハイなんか絶対にいけないからね」
真希は、絶対、の部分を強調した。
「気合入れていくよ」
土曜日を迎えた。
練習試合は午後からだが、私は九時頃には体育館に着いた。
「やっぱりいた」
真希はすでに来ていて、準備運動をしている。
「真希、今日は午後からだよ。時間間違えたの?」
「まさか。練習しようと思って」
私が柔軟を始めると同時に真希は立ち上がり、ボールを片手で掴んでエンドラインから五メートルほど離れた体育館の壁際に移動した。
真希はボールに回転をかけ、エンドラインより少しだけコート内側に着地するだろう位置に高くトスを上げる。ジャンプサーブだ。三歩助走をつけ、エンドラインを踏まないギリギリで前に飛び込みながら強くボールを打つ。ボールは普段のアタックと変わらぬスピードで、相手コートのエンドラインギリギリに落ちた。
真希が満足げな顔で少し笑っているのを見て、私もつられて笑った。
「真希のサーブだけで試合に勝っちゃいそうだね」
「いや、今のはたまたま。練習不足だから結構失敗するかも」
そう言いながら真希は黙々とボールを高く上げ、ジャンプサーブを打っていく。威力とスピードは安定しているが、時たまエンドラインを大きく超えてアウトになってしまう場合もある。
「こういうこともある」
真希が悔しさを滲ませる。
「今日はジャンプサーブなの?」
「今日は、というかこれから。点を取る方法を増やしたい」
真希は喋りながら再びトスを高く上げた。
私も柔軟を終え、ボールを掴んだ。真希と練習しようと思い早目に来たが、黙々とサーブの練習をする真希の邪魔をしてしまうのは憚られた。
「アタックの練習でもする?」
真希が綺麗にサーブを決めたところで私に声をかけてきた。
「サーブは?」
「何とかなると思う。それに暇そうだったし」
「暇ではないけど。まあ付き合って欲しい練習あるからお願いしたかったんだけど」
私はコートのレフト側に移動した。
「今日はたぶんレシーブが乱れることが多いと思う。それを想定して二段トスを上げて欲しくて」
「了解」
セッター以外がアタッカーにトスを遂げることを二段トスと言う。チームとしても個々の実力も未熟だからおそらくレシーブは綺麗にセッターに返らない。セッター以外のトスに慣れる練習がしたい。とはいえ、真希が上げるトスには慣れているのだが。
真希はボールを手に取り、片面コート中央へ移動した。いつもと同じ流れで真希は軽くボールを打ち、私が真希の真上にレシーブをし、真希がトスをする。
何回かアタックを打ってから真希と交代し、私がトスを上げる。
良子が普段上げる位置よりもネットから離れたり、逆に近くなったりしても真希は助走のテンポを細かく変え、アタックを問題なく決めていく。
「レシーブ乱れて私が上げると、こんなトスになるかも」
普段の練習だとネット際、コート中央でトスを上げる。飛距離は精々四メートルほどだが、今のように離れた場所からトスを上げるとなるとさらに飛距離が必要になる。自分にそれを飛ばせるだけの筋力が足りていない。それはおそらく一年生たちもだ。
「大丈夫、どんなトスでも決めるよ。でも月曜からこういう練習もしよう」
その後も練習をしたが、トスがネットに近かったり遠かったりとなかなか一定の位置に上がることはなかった。それでも真希は何も言わず、同じようにアタックを決めていく。
全員が集まり練習開始後しばらくして、対戦相手のチーム南山高校も到着した。全員で十人いたが、平均で一六〇センチといったところで、一七〇センチの私より大きい選手はいない。
全員が並んで挨拶をし、それぞれが準備運動を始めようとしていたところで、南山高校の部長で良子の友達が良子に話しかけた。
「良子、急で本当に悪いんだけど、もう一校来ることになっちゃった。勝手にごめん」
相手の部長は手を合わせ、何度も頭を下げていた。
「別にいいけど、急だね」
良子はいいよねと、壁打ちをしていた真希に視線を送り確認し、真希は小さく頷いた。
「それで、その相手なんだけど、星和なんだよね」
春日さんとパスをして体を温めていた私は思わず動きを止めた。
真希は私が何に驚いているのか分からないのか黙って壁打ちを続けている。
「星和って強いんですか?」
私が突然動きを止めてしまい、手持ち無沙汰になった春日さんが不服そうにしている。
「県で二位だよ。県内の大会だと決勝は毎回星和対白峯になるくらい県の中では強いよ」
私は、春日さんとおそらく白峯以外を知らない真希に聞こえるように説明した。私がちらりと真希の顔を見ると、そうなのか、と驚いた顔をしている。
「ますます燃えてきましたよ。練習試合とはいえ、県二位を倒しちゃいますよ!」
春日さんが大きな声で宣言すると同時に、入り口からお願いします! と挨拶が聞こえ、その場の全員が注目した。
全員で七人と少数ながら、全員身長が一七〇センチ近く、眼光が鋭い。星和の全員が真希の姿を認めると、本当にいる、などと話しているのが私の耳に届いた。
どうやら、真希のチームがどれほどのものか偵察に来た、というところのようだ。真希はモテるなあと、私は呑気に考えながら全員で挨拶を済ませ、南山高校と私たちの試合が始まった。
コート中央で六人が円形となり、真希が指示を出す。
「前も言ったと思うけど、攻撃は一年生中心。特にクイックは積極的に使うから、そのつもりで」
「真希の言った通り、トスは一年生中心に上げる。けど、五点差付いたら、真希を中心にトス回しをする。練習試合といえども負ける気はないよ」
はい! と一年生が応え、各々がポジションについた。
主審が笛を吹き、南山高校のサーブで始まる。
相手のサーブが山なりに春日さんの正面に飛んできた。春日さんはそれをセンターとライトの中間にいる良子の真上に丁寧にレシーブをする。
北村さんは上がったボールを見ながら、良子の手にボールが収まったと同時にネット間際でジャンプした。
良子は北村さんがジャンプしているのをちらりと見てから、そこに素早くほぼ直線的にトスを上げた。
北村さんが思い切り腕を振り切り、ボールをだれもいないコートに叩きつける。
「いいじゃん、息ぴったり」
真希は北村さんの背中を軽く叩きながら褒めた。
真希は相手が転がしてきたボールを拾い、一回バウンドさせ良子に渡した。
「サーブよろしく」
主審が笛を吹き、良子がサーブを打ち、相手の攻撃態勢を崩す。相手のエースと思われる人が苦し紛れにその場でジャンプをして軽く打って返球してきた。
良子は素早くネット際に移動して、ボールが飛んでいった方向の双海さんに声をかけた。
「双海さん、チャンスボール」
私は良子がいる真上に上がってくると思っていたが、レシーブしたボールは短くアタックライン上までしか届かない。良子の反応が遅れたが、それなりに高さはあり、良子は空中で態勢を崩しながら北村さんがいる位置にクイックを上げた。
北村さんはトスが上がってくるとは思っていなかったのか、慌ててジャンプし何とか相手コートに返そうと手を伸ばしたが、ボールには届かず、ボールはそのままネットを超え相手コートのサイドラインも超え落ちた。
おそらく良子にアタッカーを見る余裕がなかったのだろう。練習とは違って状況は刻々と変わる、良子を含め全員まだ実践に慣れていない。
「北村さん、あれくらいのレシーブならクイックを使っていく。常に自分が打つつもりで跳んでね」
真希が北村さんにアドバイスをする。Bクイックなら多少のレシーブの乱れは吸収できる、Bクイックを練習し続けた理由である。
その後は真希の指示通り、クイックを中心に攻撃をし、点を重ねた。真希が後衛に下がってからは、春日さんを中心に点を重ねていく。
やっぱり、わざわざ福岡から来ただけあって、実力は本物だ。相手の南山高校に春日さんを止められる人はいない。この試合では自分の出番はなさそうだ。
気がつけば試合はワンサイドゲームになり、私たちが勝利した。
お互いのチームがエンドラインで、ありがとうございました、と挨拶をし、南山高校の面々はコートから退き、入れ替わりで星和高校が入って来た。
今日の練習試合では、一セットごとに試合相手を入れ替え、空いているチームが審判をすることになっている。
私たちは少しの休憩を挟んだのち、試合がすぐに開始された。
「相手の星和は県二位らしい」
真希の声から少しだけ闘争心が滲み出ている。らしい、というのは今の今までそのことを知らなかったからだ。
「春日さんが言っていたように倒すよ。星和を倒せば後は白峯だけだからね」
真希が一度切り、一年生、特に春日さんに発破をかけた。
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