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FILE 01 女学園バラバラ死体事件
FILE01 女学園バラバラ死体事件-7
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天ヶ崎は案の定、居留守を使ってきた。
ゲーム機からのメッセージで、「いることはわかってる。令状をとってもいいのだが?」と送ると部屋に入れてくれた。
「さっそく役に立ってるし……」
とミカはたいそう感心していた。
「さて、被害者――柳優南としていた取引について教えてもらおうか」
「取引? なにを言っているのかわからないね」
「とぼけるのは自由だけどな。ここで話しておかないと、令状を取ってきてからじゃ、PCの中身を全部押収されちまうぜ」
こちらも証拠のないカマかけだけどな。
「僕に対してそんなことはできないよ」
俺のセリフにも、天ヶ崎はポーカーフェイスを崩さない。
『できない』という単語は気になるが、後回しだ。
「それに、PCの中には何も入ってないよ」
それはほんと……みたいだな。
「じゃあ大事なデータは別の場所かな」
「人に見られたくないデータの1つや2つ、誰でも持ってるよね」
だが、彼は普通の人が見られたくない以上のものを持ってるな。
彼は一般人からすると、隠し事は上手い方だ。
ちょっとやそっと、他人の顔色をうかがうのが得意な程度じゃわからないだろう。
だが、俺は魔王だからな。
そしてこの男、予想通りかなりキレる。
俺が嘘を見抜けると感じとり、そうされても被害がすくなくなるような回答を選んでくる。
「どこかに外付けのドライブでも……いや、違うなもっと大規模なものか?」
俺は天ヶ崎の目を見ながら言葉を選んで、反応を探っていく。
さすがに視線や呼吸、体の動きだけでは判断しにくい。
聴覚強化で鼓動も聞きつつ、彼の無意識が向かう先を探っていく。
魔術が使えなくても、才能があれば訓練や道具で可能な技術だ。
「特別な部屋があるのか」
「な、なんでそんなことまで……」
ポーカーフェイスが崩れてきたぜ。
「本棚あたりに秘密が……いや、キッチン……ちがうな。トロフィーの棚か」
「そんな……視線には気をつけていたのに……」
わかっていないヤツは、隠したい場所に視線がいく。
少しわかっているヤツは、そこから視線を『遠いところ』に外す。
もっとわかっているヤツは、視線で罠をかける。
だが、そこに何らかの意思が含まれる以上、俺にとってはいずれもヒントでしかない。
もちろん、相手の性格をある程度把握している必要はあるが。
「さて、ここに何があるのかなっと……」
俺はトロフィー棚をあれこれチェックしてみる。
トロフィーを動かした跡があるな……。
ガラスでできた棚のホコリはきれいに拭き取ってあるが、人間の目では見過ごしてしまうような、わずかな傷が残っている。
その傷の数、深さ、サイズ、向きなどからトロフィーの配置を入れ替えていく。
「なんでわかるんだ……」
説明してやる義理はないからな。
トロフィーを特定の位置に並べると、音もなくトロフィー棚が横にスライドし、隠し部屋が現れた。
「なんてベタな展開……」
ミカがあきれる気持ちもわかる。
「隠し部屋は結構有効な方法なんだよ。
いくらPCをスタンドアローンにしても、物理的な盗難だったりと、情報を盗む方法は色々あるからな」
隠し扉を開ける方法も、なにげに最新技術なのだろう。
センサーの類が、普通に目視しただけでは見当たらない。
隠し部屋といっても、そこだけで20畳以上は余裕であるだろう。
業務用のサーバーとそれに繋がったモニター。
その他、スタンドアローンらしきPCなど、いくつもの機材が並んでいる。
「それで、ここで何をやってるんだ?」
「言うと思うのかい?」
「ソーシャルゲームの何かかな。それもゲームを作ってるわけじゃなさそうだ」
「な……っ! どこまで知っている」
被害者の行動を見ていればここまではわかる。
だが、ここからは勘に頼る割合が大きくなる。
安定した組織運営をするならバクチは避けるべきだが、時には確率の低いカケにでなければ、逆に滅ぶこともある。
魔王時代に学んだことだ。
安定を向かいすぎることもまた、リスクなのだ。
「キミがしゃべらなくても、ネタはあがってるんだよ。
ソーシャルゲーム……いや、サーバーにデータを保存するタイプのゲーム全般のチートツールだろ?」
これだけの規模の部屋を使っているくらいだ。
イタズラでやってるとは思えない。
金になる何かだ。
たかがゲームのチートツールごときと思うかもしれないが、これがそれなりの金額で取引される。
特に某人口の多い国では、これで一財産を築いた者もいるらしい。
とはいえ、チートツールなんてのは、人気タイトルが出るとすぐ現れるものだ。
彼がわざわざ手がけるとも思えない。
「それも、ただのチートツールじゃない。
どんなゲームにも使えるとか、ゲーム側のどんなアップデートも即座に解析してくれるとか、チートをしているとギリギリバレないラインをAIが解析し続けつつけて対応してくれるとか」
天ヶ崎の眉が一瞬だけ、ぴくんとはねたのを、俺は見のがさない。
「おいおい、全部かよ。
これで、今までわからなかった動機が見えてきたな」
ゲーム機からのメッセージで、「いることはわかってる。令状をとってもいいのだが?」と送ると部屋に入れてくれた。
「さっそく役に立ってるし……」
とミカはたいそう感心していた。
「さて、被害者――柳優南としていた取引について教えてもらおうか」
「取引? なにを言っているのかわからないね」
「とぼけるのは自由だけどな。ここで話しておかないと、令状を取ってきてからじゃ、PCの中身を全部押収されちまうぜ」
こちらも証拠のないカマかけだけどな。
「僕に対してそんなことはできないよ」
俺のセリフにも、天ヶ崎はポーカーフェイスを崩さない。
『できない』という単語は気になるが、後回しだ。
「それに、PCの中には何も入ってないよ」
それはほんと……みたいだな。
「じゃあ大事なデータは別の場所かな」
「人に見られたくないデータの1つや2つ、誰でも持ってるよね」
だが、彼は普通の人が見られたくない以上のものを持ってるな。
彼は一般人からすると、隠し事は上手い方だ。
ちょっとやそっと、他人の顔色をうかがうのが得意な程度じゃわからないだろう。
だが、俺は魔王だからな。
そしてこの男、予想通りかなりキレる。
俺が嘘を見抜けると感じとり、そうされても被害がすくなくなるような回答を選んでくる。
「どこかに外付けのドライブでも……いや、違うなもっと大規模なものか?」
俺は天ヶ崎の目を見ながら言葉を選んで、反応を探っていく。
さすがに視線や呼吸、体の動きだけでは判断しにくい。
聴覚強化で鼓動も聞きつつ、彼の無意識が向かう先を探っていく。
魔術が使えなくても、才能があれば訓練や道具で可能な技術だ。
「特別な部屋があるのか」
「な、なんでそんなことまで……」
ポーカーフェイスが崩れてきたぜ。
「本棚あたりに秘密が……いや、キッチン……ちがうな。トロフィーの棚か」
「そんな……視線には気をつけていたのに……」
わかっていないヤツは、隠したい場所に視線がいく。
少しわかっているヤツは、そこから視線を『遠いところ』に外す。
もっとわかっているヤツは、視線で罠をかける。
だが、そこに何らかの意思が含まれる以上、俺にとってはいずれもヒントでしかない。
もちろん、相手の性格をある程度把握している必要はあるが。
「さて、ここに何があるのかなっと……」
俺はトロフィー棚をあれこれチェックしてみる。
トロフィーを動かした跡があるな……。
ガラスでできた棚のホコリはきれいに拭き取ってあるが、人間の目では見過ごしてしまうような、わずかな傷が残っている。
その傷の数、深さ、サイズ、向きなどからトロフィーの配置を入れ替えていく。
「なんでわかるんだ……」
説明してやる義理はないからな。
トロフィーを特定の位置に並べると、音もなくトロフィー棚が横にスライドし、隠し部屋が現れた。
「なんてベタな展開……」
ミカがあきれる気持ちもわかる。
「隠し部屋は結構有効な方法なんだよ。
いくらPCをスタンドアローンにしても、物理的な盗難だったりと、情報を盗む方法は色々あるからな」
隠し扉を開ける方法も、なにげに最新技術なのだろう。
センサーの類が、普通に目視しただけでは見当たらない。
隠し部屋といっても、そこだけで20畳以上は余裕であるだろう。
業務用のサーバーとそれに繋がったモニター。
その他、スタンドアローンらしきPCなど、いくつもの機材が並んでいる。
「それで、ここで何をやってるんだ?」
「言うと思うのかい?」
「ソーシャルゲームの何かかな。それもゲームを作ってるわけじゃなさそうだ」
「な……っ! どこまで知っている」
被害者の行動を見ていればここまではわかる。
だが、ここからは勘に頼る割合が大きくなる。
安定した組織運営をするならバクチは避けるべきだが、時には確率の低いカケにでなければ、逆に滅ぶこともある。
魔王時代に学んだことだ。
安定を向かいすぎることもまた、リスクなのだ。
「キミがしゃべらなくても、ネタはあがってるんだよ。
ソーシャルゲーム……いや、サーバーにデータを保存するタイプのゲーム全般のチートツールだろ?」
これだけの規模の部屋を使っているくらいだ。
イタズラでやってるとは思えない。
金になる何かだ。
たかがゲームのチートツールごときと思うかもしれないが、これがそれなりの金額で取引される。
特に某人口の多い国では、これで一財産を築いた者もいるらしい。
とはいえ、チートツールなんてのは、人気タイトルが出るとすぐ現れるものだ。
彼がわざわざ手がけるとも思えない。
「それも、ただのチートツールじゃない。
どんなゲームにも使えるとか、ゲーム側のどんなアップデートも即座に解析してくれるとか、チートをしているとギリギリバレないラインをAIが解析し続けつつけて対応してくれるとか」
天ヶ崎の眉が一瞬だけ、ぴくんとはねたのを、俺は見のがさない。
「おいおい、全部かよ。
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