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月日は人の気など関係なく過ぎ去っていく。
行く月、逃げる月、去る月とはよく言ったものであっという間にひと月は過ぎて、ちらほらと桃の節句の可愛らしい飾りつけが見られるようになった。
「塩沢君」
「あ、三浦さん。お疲れ様です」
「うん」
三浦さんとは相変わらず度々一緒になり、毎回押し付けられる名刺を帰ってから理央に破り捨てられるのが定番の流れになっていたが、今年は今日が初めての仕事だった。
「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。今年もよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく」
そのまま世間話に花を咲かせていれば、ヘアメイクを終えた隼人が姿を現す。
その姿を見て取って、三浦さんが顎に手をあて感嘆の息を漏らす。
「ほぉ~概要は見てたけど、こりゃまた雰囲気がえらく変わったな」
「ですね…正直私もかなり驚いてます」
今回は男性向けの高級時計メーカーのイメージモデルに隼人が起用され、その広告用撮影の予定である。
その時計メーカーはビジネスマンや比較的裕福な男性をターゲットとしているため、シックなデザインが多い。
よってそのイメージに合わせるとなると、普段少年のような快活さで売っている隼人とは方向性がかなり違ってくる。
本人の強い希望で依頼を受けたものの、一体どうなるものかと密かに心配していたのだが。
現れた彼はそんな不安を吹き飛ばすどころか、スタジオ中の視線を釘づけにして離さない魅力を放っていた。
黒のシンプルなスリーピーススーツでその分メーカーのイメージカラーであるワインレッドのポケットチーフが良く映える。また程よい光沢からも気品が感じられる。
それより何より隼人自身。髪はオールバックで固められ、いつもは隠されているおでこが惜しげもなくさらされている。眉は凛々しめに描かれて顔つきも衣装にふさわしく引き締まっている。
隼人の後ろから誇らしげに現れたスタイリストさんに思わず拍手を送りたくなった。
「これはこれは、やる気が湧き上がってきたなあ」
隣にいたはずの三浦さんはニヤリとしながらそう言うと、いそいそとカメラの調子を確認し始めた。
カシャッカシャッ…
モデルの様子にふさわしいピリッとした雰囲気で進む撮影を一歩下がった位置で見守る。
すると、ズボンのポケットに入れていた携帯が振動し始めた。
一瞬メールかと思ったが、その振動の時間の長さに電話と判断してポケットから取り出しながらそっとスタジオを出る。
取り出したスマホの光る画面には『洋子さん』の文字。
(この時間に電話してくるなんて…?)
訝しみつつも応答ボタンをタップする。
「もしもし?」
『ああ、雪惟。仕事中に悪いね』
「なんかあったの?」
『……いや、雪惟。今日の仕事は今の撮影で終わりで間違いない?』
「うん、そうだけど…」
『二時間ぐらいなもんか?』
「終わるまで?さっき始まったから、まあ」
『じゃあそれが終わったらできるだけ急いで事務所に』
「はやとは?」
『家に送ってからでいい』
「おれだけ帰ればいいってことね?」
『そう。なるべく急いでね』
「ん…わかった」
『じゃあ、そういうことで』
「ん」
通話の切れたスマホの画面を見つめて思わず首を傾げた。
「ただいま戻りました~…」
声をかけて入ったものの、人の出払った事務所は不気味なほどにしんとしていた。
(暖房入ってるはずなのに…さむ)
気のせいに違いないが何となく感じる肌寒さに腕をさすりながら社長室に向かう。
トントン
「洋子さん。雪惟です」
中から応える声を聞いて扉を開ける。
「遅くなってすいません…ってなんでりおが?」
正面のデスクに腰掛ける洋子さん、それに加えて予想外にも理央が来客用のソファに腰を落ち着けていた。
「ふたりに関係ある話だからだよ。座りな」
洋子さんに指示された椅子に座る。
「隼人はちゃんと送り届けられたかい」
「あ、はい。…それよりなんの話なんですか。おれ達ふたりってことは家の話?」
いつもなら隼人の撮影の様子を一から十まで語りたいところだが、どうも雰囲気が落ち着かない。
「…家族の話でもあるし、仕事に関係ある話でもある」
「え?」
まさか週刊誌にでも撮られたかと身構えたが、彼女も理央も雑誌の類を持っているようには見えない。
「…??」
「…理央には先に話したが。先日の健康診断の結果が今日、全員分届いた」
「もしかして…またおれ引っかかってた?」
思いついた可能性を口に出すが、
洋子さんはゆっくりと首を振った。
「雪惟じゃない」
「おれじゃ、ない…?」
無意識に正面の理央の方を振り向く。
理央は、眉をこれ以上ないほど下げて、困ったように微笑んでいた。
「再検査が必要なのは、理央だ。
……かなりの確率で即日入院が必要だそうだ」
「え………?」
「どう、いうこと…?」
思わず洋子さんに尋ねたが、
答えたのは、おれの顔を見てさらに眉を下げ泣きそうな顔になった理央だった。
「いくつかの数値が基準値からかなり外れてたらしくて…。項目的に膵臓に異常があるかもしれないとは書いてあったけどまだ、わかんない」
「入院が必要なほどなの…?」
机をまたいで伸ばされてきた手に縋るように両手を絡める。
「えっと…いや、書いてあっただけだしそんな大したことじゃないかも…」
「大したことだから緊急通知書がきたんだろ」
黙っておれ達の会話を見守っていた洋子さんが静かに声をあげる。
「緊急通知書…きたの」
しゅん、と理央がしおれる。それは肯定の意。
緊急通知書。その名の通り健康診断で緊急の再検査、入院等が必要な場合に会社に届くものだ。
普通は結果が会社に知らされることはないが、特に緊急性がある際に必ず検査を受けさせるためにできた制度だ。
(それが来たってことは…)
ずきっと目の奥が痛み、視界が歪む。
慌てたように理央がこっち側に回ってきて肩を引き寄せる。
「ねえ、お願い。大丈夫、大丈夫だから泣かないで…」
「………」
喉の奥で引っかかってしまった様に声が出ない。
「…明日」
声を発した洋子さんをふたりして見る。
「ふたりで病院行ってきな。先方には私から連絡するから理央は心配しないでいい。明日以降の仕事も止めれるように調整しとく。隼人には他の社員をつけるから」
そこまで言った洋子さんは立ちあがり、おれ達の目の前まで来てしゃがみ込んだ。
それぞれ片手ずつ、おれ達の手をすくい上げる。
「…この業界はスケジュールが不規則だから検査に来ないつって、通知書は来やすくはあるんだよ。
楽観視はできないけど…今から気を病みすぎたらダメだよ、雪惟。理央も」
「……」
ぎこちなく頷くことが精一杯だった。
理央はそんなおれを心配そうに見て、洋子さんに向き直る。
「…洋子さん、今日は俺達帰りますね」
「ああ…、そうした方がいいね。病院の予約、こっちでしとこうか」
「いえ、自分でしますよ」
「そうか。じゃあまた明日一応連絡するから。気を付けて帰るんだよ」
「はい。失礼します」
理央に促されてゆっくりと立ち上がる。
腰に回された手に押されるまま、社長室を後にした。
行く月、逃げる月、去る月とはよく言ったものであっという間にひと月は過ぎて、ちらほらと桃の節句の可愛らしい飾りつけが見られるようになった。
「塩沢君」
「あ、三浦さん。お疲れ様です」
「うん」
三浦さんとは相変わらず度々一緒になり、毎回押し付けられる名刺を帰ってから理央に破り捨てられるのが定番の流れになっていたが、今年は今日が初めての仕事だった。
「ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。今年もよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく」
そのまま世間話に花を咲かせていれば、ヘアメイクを終えた隼人が姿を現す。
その姿を見て取って、三浦さんが顎に手をあて感嘆の息を漏らす。
「ほぉ~概要は見てたけど、こりゃまた雰囲気がえらく変わったな」
「ですね…正直私もかなり驚いてます」
今回は男性向けの高級時計メーカーのイメージモデルに隼人が起用され、その広告用撮影の予定である。
その時計メーカーはビジネスマンや比較的裕福な男性をターゲットとしているため、シックなデザインが多い。
よってそのイメージに合わせるとなると、普段少年のような快活さで売っている隼人とは方向性がかなり違ってくる。
本人の強い希望で依頼を受けたものの、一体どうなるものかと密かに心配していたのだが。
現れた彼はそんな不安を吹き飛ばすどころか、スタジオ中の視線を釘づけにして離さない魅力を放っていた。
黒のシンプルなスリーピーススーツでその分メーカーのイメージカラーであるワインレッドのポケットチーフが良く映える。また程よい光沢からも気品が感じられる。
それより何より隼人自身。髪はオールバックで固められ、いつもは隠されているおでこが惜しげもなくさらされている。眉は凛々しめに描かれて顔つきも衣装にふさわしく引き締まっている。
隼人の後ろから誇らしげに現れたスタイリストさんに思わず拍手を送りたくなった。
「これはこれは、やる気が湧き上がってきたなあ」
隣にいたはずの三浦さんはニヤリとしながらそう言うと、いそいそとカメラの調子を確認し始めた。
カシャッカシャッ…
モデルの様子にふさわしいピリッとした雰囲気で進む撮影を一歩下がった位置で見守る。
すると、ズボンのポケットに入れていた携帯が振動し始めた。
一瞬メールかと思ったが、その振動の時間の長さに電話と判断してポケットから取り出しながらそっとスタジオを出る。
取り出したスマホの光る画面には『洋子さん』の文字。
(この時間に電話してくるなんて…?)
訝しみつつも応答ボタンをタップする。
「もしもし?」
『ああ、雪惟。仕事中に悪いね』
「なんかあったの?」
『……いや、雪惟。今日の仕事は今の撮影で終わりで間違いない?』
「うん、そうだけど…」
『二時間ぐらいなもんか?』
「終わるまで?さっき始まったから、まあ」
『じゃあそれが終わったらできるだけ急いで事務所に』
「はやとは?」
『家に送ってからでいい』
「おれだけ帰ればいいってことね?」
『そう。なるべく急いでね』
「ん…わかった」
『じゃあ、そういうことで』
「ん」
通話の切れたスマホの画面を見つめて思わず首を傾げた。
「ただいま戻りました~…」
声をかけて入ったものの、人の出払った事務所は不気味なほどにしんとしていた。
(暖房入ってるはずなのに…さむ)
気のせいに違いないが何となく感じる肌寒さに腕をさすりながら社長室に向かう。
トントン
「洋子さん。雪惟です」
中から応える声を聞いて扉を開ける。
「遅くなってすいません…ってなんでりおが?」
正面のデスクに腰掛ける洋子さん、それに加えて予想外にも理央が来客用のソファに腰を落ち着けていた。
「ふたりに関係ある話だからだよ。座りな」
洋子さんに指示された椅子に座る。
「隼人はちゃんと送り届けられたかい」
「あ、はい。…それよりなんの話なんですか。おれ達ふたりってことは家の話?」
いつもなら隼人の撮影の様子を一から十まで語りたいところだが、どうも雰囲気が落ち着かない。
「…家族の話でもあるし、仕事に関係ある話でもある」
「え?」
まさか週刊誌にでも撮られたかと身構えたが、彼女も理央も雑誌の類を持っているようには見えない。
「…??」
「…理央には先に話したが。先日の健康診断の結果が今日、全員分届いた」
「もしかして…またおれ引っかかってた?」
思いついた可能性を口に出すが、
洋子さんはゆっくりと首を振った。
「雪惟じゃない」
「おれじゃ、ない…?」
無意識に正面の理央の方を振り向く。
理央は、眉をこれ以上ないほど下げて、困ったように微笑んでいた。
「再検査が必要なのは、理央だ。
……かなりの確率で即日入院が必要だそうだ」
「え………?」
「どう、いうこと…?」
思わず洋子さんに尋ねたが、
答えたのは、おれの顔を見てさらに眉を下げ泣きそうな顔になった理央だった。
「いくつかの数値が基準値からかなり外れてたらしくて…。項目的に膵臓に異常があるかもしれないとは書いてあったけどまだ、わかんない」
「入院が必要なほどなの…?」
机をまたいで伸ばされてきた手に縋るように両手を絡める。
「えっと…いや、書いてあっただけだしそんな大したことじゃないかも…」
「大したことだから緊急通知書がきたんだろ」
黙っておれ達の会話を見守っていた洋子さんが静かに声をあげる。
「緊急通知書…きたの」
しゅん、と理央がしおれる。それは肯定の意。
緊急通知書。その名の通り健康診断で緊急の再検査、入院等が必要な場合に会社に届くものだ。
普通は結果が会社に知らされることはないが、特に緊急性がある際に必ず検査を受けさせるためにできた制度だ。
(それが来たってことは…)
ずきっと目の奥が痛み、視界が歪む。
慌てたように理央がこっち側に回ってきて肩を引き寄せる。
「ねえ、お願い。大丈夫、大丈夫だから泣かないで…」
「………」
喉の奥で引っかかってしまった様に声が出ない。
「…明日」
声を発した洋子さんをふたりして見る。
「ふたりで病院行ってきな。先方には私から連絡するから理央は心配しないでいい。明日以降の仕事も止めれるように調整しとく。隼人には他の社員をつけるから」
そこまで言った洋子さんは立ちあがり、おれ達の目の前まで来てしゃがみ込んだ。
それぞれ片手ずつ、おれ達の手をすくい上げる。
「…この業界はスケジュールが不規則だから検査に来ないつって、通知書は来やすくはあるんだよ。
楽観視はできないけど…今から気を病みすぎたらダメだよ、雪惟。理央も」
「……」
ぎこちなく頷くことが精一杯だった。
理央はそんなおれを心配そうに見て、洋子さんに向き直る。
「…洋子さん、今日は俺達帰りますね」
「ああ…、そうした方がいいね。病院の予約、こっちでしとこうか」
「いえ、自分でしますよ」
「そうか。じゃあまた明日一応連絡するから。気を付けて帰るんだよ」
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