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あの男
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「じゃあ、早速聞くがあの男はどういう関係だ?」
「俺を買ってくれた人だぜ。ま、正確には買わせたんだけど。
この国の貴族だろう?」
「そうだな、それは確かだ」
ミアーネの貴族は皆、国章をあしらった銅製のバッジを身に付ける。先程のマルタとかいう男は確かに首元にそれをつけていた。ミアーネの貴族というのは本当だろう。正式な許可もとっていないようだったのに国営施設である闘技場の裏側にまで入ってこれたのも、おそらくバッジのおかげだ。
「俺の国の闘技場にはしょっちゅう他国の視察団が来るからな。ミアーネの奴でよさそうなのを厳選して、俺を買わせたってわけだ」
「無茶をする…」
「そうか?これでもちゃんと見極めたんだぜ?だから時間かかったけど」
「触れられては?」
「ない!!」
腰に手を当てて、リヴァーダはフン!と胸を張る。
「怖い……って触られそうになる度に言ってたらぜんっぜん触ってこないんだよな、あのおっさん」
リヴァーダにメロメロだったからそうだろうな、とルドゥロは思った。
それはそれで複雑でもあったが。
「でも、ちょっと失敗したかなっても思うんだよな、人選」
「なにか無体を働かれたか?」
「殺気立つなよ!…じゃなくて、俺には何もされてないよ」
「じゃあどうして?」
そう聞かれると途端にリヴァーダは難しい顔をして腕を組んだ。
ルドゥロが思わず手を伸ばしてその眉間の皺を解くように揉むと、へにゃ、とリヴァーダも笑うがすぐに顔を引き締める。
「ミアーネは随分前に奴隷制は廃止されてるだろう?」
「ああ。罪人の奴隷落ちの代わりが闘技場送りになった」
「だから奴隷扱いされることはないだろうと思ってたんだけど…確かに俺はされなかったけど、マルタは『愛人』って名目で年齢性別関係なく人間囲ってんだよ。そんで奴隷みたいな扱いをしてる」
「そりゃあまた…」
「ぼろっちい服着せてなんでもかんでも言いつけて…執事たちも労働は大抵『愛人』の人たちにさせるし。酷い時には犬で遊ぶみたいに、床に投げた食べ物舐めさせたりして笑ってんだ」
「酷いな。奴隷以下かもしれないぞ」
「俺、一応奴隷あがりだから、そういうの本当に大っ嫌いなんだ。
元々闘技場に入ったのも前の主人の戯れで放り込まれたんだぜ。どうせすぐ死ぬと思ってたんだろうな、『10勝できたら奴隷契約なしにしてやる』って言われたから、ひゃっほう!って勝ち進んだんだけど」
「惚れ直すぜ」
「ありがと。…でも今の屋敷で『愛人』たちの扱い見てると本当に胸糞悪くてさ」
「……なるほどな」
「俺の言いたい事分かってくれた?」
可愛い子ぶった様で上目づかいで首を傾げるリヴァーダに、ルドゥロはにっこりと満面の笑みを返して見せた。
「今日の夜でいいか?」
「出られんの闘技場」
「俺を誰だと思ってる」
「んふ、じゃあおっけ!」
2人はニコニコと邪気のない笑顔で微笑み合う。
彼らが言葉に出さずに何の約束を交わしたのか、2人以外には分からない。
「それで?」
唐突にルドゥロが、その長い片腕をリヴァーダの首めがけて突き出した。
男らしく太いリヴァーダの首…正確にはそこに巻き付くチョーカーが、がしっと勢いよく大きな掌に掴まれ、リヴァーダは情けない声を上げる。
「ひぇっ」
「俺におあずけをしといて、他の人間にコレを許した言い訳は?」
「ひぇぇっ」
「俺を買ってくれた人だぜ。ま、正確には買わせたんだけど。
この国の貴族だろう?」
「そうだな、それは確かだ」
ミアーネの貴族は皆、国章をあしらった銅製のバッジを身に付ける。先程のマルタとかいう男は確かに首元にそれをつけていた。ミアーネの貴族というのは本当だろう。正式な許可もとっていないようだったのに国営施設である闘技場の裏側にまで入ってこれたのも、おそらくバッジのおかげだ。
「俺の国の闘技場にはしょっちゅう他国の視察団が来るからな。ミアーネの奴でよさそうなのを厳選して、俺を買わせたってわけだ」
「無茶をする…」
「そうか?これでもちゃんと見極めたんだぜ?だから時間かかったけど」
「触れられては?」
「ない!!」
腰に手を当てて、リヴァーダはフン!と胸を張る。
「怖い……って触られそうになる度に言ってたらぜんっぜん触ってこないんだよな、あのおっさん」
リヴァーダにメロメロだったからそうだろうな、とルドゥロは思った。
それはそれで複雑でもあったが。
「でも、ちょっと失敗したかなっても思うんだよな、人選」
「なにか無体を働かれたか?」
「殺気立つなよ!…じゃなくて、俺には何もされてないよ」
「じゃあどうして?」
そう聞かれると途端にリヴァーダは難しい顔をして腕を組んだ。
ルドゥロが思わず手を伸ばしてその眉間の皺を解くように揉むと、へにゃ、とリヴァーダも笑うがすぐに顔を引き締める。
「ミアーネは随分前に奴隷制は廃止されてるだろう?」
「ああ。罪人の奴隷落ちの代わりが闘技場送りになった」
「だから奴隷扱いされることはないだろうと思ってたんだけど…確かに俺はされなかったけど、マルタは『愛人』って名目で年齢性別関係なく人間囲ってんだよ。そんで奴隷みたいな扱いをしてる」
「そりゃあまた…」
「ぼろっちい服着せてなんでもかんでも言いつけて…執事たちも労働は大抵『愛人』の人たちにさせるし。酷い時には犬で遊ぶみたいに、床に投げた食べ物舐めさせたりして笑ってんだ」
「酷いな。奴隷以下かもしれないぞ」
「俺、一応奴隷あがりだから、そういうの本当に大っ嫌いなんだ。
元々闘技場に入ったのも前の主人の戯れで放り込まれたんだぜ。どうせすぐ死ぬと思ってたんだろうな、『10勝できたら奴隷契約なしにしてやる』って言われたから、ひゃっほう!って勝ち進んだんだけど」
「惚れ直すぜ」
「ありがと。…でも今の屋敷で『愛人』たちの扱い見てると本当に胸糞悪くてさ」
「……なるほどな」
「俺の言いたい事分かってくれた?」
可愛い子ぶった様で上目づかいで首を傾げるリヴァーダに、ルドゥロはにっこりと満面の笑みを返して見せた。
「今日の夜でいいか?」
「出られんの闘技場」
「俺を誰だと思ってる」
「んふ、じゃあおっけ!」
2人はニコニコと邪気のない笑顔で微笑み合う。
彼らが言葉に出さずに何の約束を交わしたのか、2人以外には分からない。
「それで?」
唐突にルドゥロが、その長い片腕をリヴァーダの首めがけて突き出した。
男らしく太いリヴァーダの首…正確にはそこに巻き付くチョーカーが、がしっと勢いよく大きな掌に掴まれ、リヴァーダは情けない声を上げる。
「ひぇっ」
「俺におあずけをしといて、他の人間にコレを許した言い訳は?」
「ひぇぇっ」
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