アタクシとアタイ

キタさん

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アタクシとアタイ

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「王妃様、今宵は大都会から、小生意気そうな小娘……えーっと、コギャルなる者を召し取って参りましたので、煮るなり焼くなりお好きになさいませ」

爺が仰々しく言うと、後方から別の者が金髪の確かに小娘を連れて入ってきた。

アタクシも燃えるような金髪で、パツキン女などと愚弄する輩も含め、エロい男どもをなで斬りにしてきたが、このコギャルなる小娘の髪の毛は純粋な金髪では無いように見えた。

「爺よ、有難く頂きましょう……そこのコギャルとやら、今からお前はアタクシの慰み者となるのです。よいな」

するとコギャルはハァ?と呆れたような口調で叫んだ。

「何がよいなだ!アタイは迷惑してんだよ。せっかくカモのおじさんとホテルに入ろうとしたら、このヘンテコなジジイと部下がやってきて、アタイを訳の分からないとこに連れてきた、いや、さらってきたんだからね……アンタ、お姫様なのかい?大奥の人には見えないしな」

コギャルは明らかに生意気な口を叩いたが、最後は質問タイムとしゃれこんだ。

「さよう、アタクシはお姫様……というか、陛下のために若き血や肉を欲している冷酷な令嬢だ。大奥とは何だ?」

コギャルは懸命に考えているようだったが、なかなか答えが出ないので、爺に調べて貰うと、どうやら日本なる国に存在した制度らしい。

「ほう、将軍に仕えた女たちばかりが集っていた場所があったのだな?確かにワタクシは陛下に身を捧げたが、陛下は人の血や肉をこよなく愛する人物だから、アタクシは夜ごと、陛下に血を提供しておる。だが、陛下はアタクシの肉は興味が無いらしく、物色中だったのだ。そこで様々な人たちが行き交う街に爺たちに行って貰った訳だが、まさか東洋まで赴いたとは、爺らも大変だったろう。褒めて遣わすぞ……ただ……」

アタクシはコギャルをじっと見て、首を横に振った。

「ならんな、爺……このコギャルなる生物は陛下が気にいるとは限らんぞ……あ、陛下!」

そこにアタクシの愛すべき陛下が颯爽と現れた。

陛下はアタクシの顔を見て、笑うと、コギャルのほうを向いて、厳しい顔付きをした。

コギャルも陛下をじっと睨み付けていたが、やがて2人は……抱き合ったのだ!

「オヤジ!また会ったじゃん!」

「おぉ、パツキン娘ではないか?いきなり消えたかと思ったら、こんなところに……爺、これはどうしたことなんだ?」

陛下は怒りのこもった声で爺を問い詰めた。

爺は明らかに狼狽していたが、アタクシをチラチラ見ながら、しどろもどろに答えた。

「は、はぁ……実は王妃様の命を受けまして、東洋なる場所の喧騒甚だしい場所に赴きまして、コギャルなるこの娘を、かっさらってきたのでございますが、まさか陛下のお連れだったとは……しかし、陛下はあの場におられなかったと記憶しておるのですが……」

するとコギャルがわめき出した。

「陛下だか何だか知らないけど、このオジサン、いや、オジサマはアタイのために避妊具を買いに薬局まで行ってくれてたんだよ。それを待ってたら、ジジイと部下が無理矢理……」

陛下はもうよいぞと言って、コギャルの言葉を制止させ、爺を睨み付けた。

「爺、お前、何てことをしてくれたのだ……私はこのパツキン娘と大事な用があったのに、たいへんなことをしでかしてくれたな。まずは、爺、お前からだ!」

そう言うと、陛下は爺の両目玉に右手の中指と人差し指をグリグリと勢いよく押し込み、血がたれる前に取り去り、食べてしまった。

しかし、食べた瞬間、オエッと言い、吐き出しそうになった。

「やはり爺の腐った目ん玉はまずいな……しかし、妃よ、お前の恥知らずな目はもっとまずそうだぞ!よくもパツキン娘を捕えさせたな!」

アタクシは陛下の言葉に我慢ならなかった。

「何をおっしゃいますか!あなた様はアタクシに隠れて、夜な夜な街を徘徊なされていたようですわね。しかも遥か彼方の東洋なる所まで赴き、この汚らしい小娘に手を出そうとしていたなんて、許せませんわ!」

すると黙って聞いていたコギャルが苦々しそうに口を出してきた。

「痴話喧嘩はいい加減にしなよ!おい、姫様よ。アタイが言った大奥には将軍様の慰み者が沢山おられた訳よ。さっき、あんたがアタイを慰み者にしようと言っていたようにな。ま、アタイは同性は好きじゃないけどね。ところでおじさんさ、こんな姫様、捨てちゃってさ、アタイと一緒にならない?」

アタクシはコギャルが無礼千万な口を叩いたことを聞き逃さなかったので、すぐに部下に取り押さえさせようとしたところ、陛下がニヤニヤしながら言った。

「そうだな……妃よ。私はこのパツキン娘が気に入ってな。私にはむかうお前にはウンザリだ。さ、出て行け!」

アタクシは陛下の言葉に耳を疑ったが、泣く泣く去ろうとした瞬間、いきなりコギャルが陛下に突進し、陛下が爺にしたと同じように目潰しをくらわし、目玉を引っこ抜き、食べてしまったものの、すぐさまオエッと、吐き出した。

コギャルはアタクシのほうを見ると、ニッコリと微笑んだ。

「姫様よ、このオジサンの目ん玉、まずいよ!アタイさ、爺さんの仇を取ってやったんだ。お年寄りにあんなことをするなんて、さすがに酷いと思ったからさ。それに、アタイ……」

コギャルはアタクシを恥ずかしそうに見て、か細い声で言った。

「……実は女装した男なんだ。言っても分からないけど、コスプレイヤーってやつなんだけど……だから、避妊具なんて必要なかったのに、オジサンが男だと言っても信用しなくてさ。ま、オジサンをホテルに誘い込んで、シャワーを浴びさせている間に、金盗んで、逃げようと考えてたんだけどね。でさ、その、あんたが……」

アタクシはもうよいと言って、コギャルを強く抱きしめた。

「そうであったか。アタクシもお前の優しい気持ちに心が潤んだぞ。わたしもそなたが好きだ。一緒になろう!」

アタクシはコギャル否、パツキン君を好きになり、再び熱く抱擁した。


陛下と言うか無様なオジサンは病死したことにして、アタクシは陛下が信頼していた人物と嘘をつき、パツキン君を後継の夫君とした。

皆の衆は、東洋から来た男を初めはいぶかしがったが、アタクシが強く亡き陛下の思い(嘘だが……)を伝えると、皆、オリエンタル・キングスマンと言い、祝福してくれた。

アタクシはまさかこんな展開になろうとは夢にも見なかったが、隣にいるパツキン君と見つめ合い、今日もディープなキスを重ねるのだった。
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