【完結】聖女として召喚された挙句、仏頂面のイケメン騎士に溺愛される!?俺はオトコだ!!

りゆき

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第7話 口付け ※ライル視点

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 ショーゴという男は変わっていた。

 間違えて召喚されたというのにその国に対して怒りもしない。いや、最初少しだけ怒ってはいたか?
 しかし特にその後は文句を言うこともなく大人しくしていた。それどころか自身で聖女の代わりになれないか、と言い出した。

 悠々自適に暮らしていけばいいものをわざわざ自分から勉強し出し、さらには瘴気をどうにか出来ないか、と考え始めた。

 意味が分からない。ショーゴの国の人間はそういう人種なのか、それともショーゴがそういう性格なのか。
 自ら危険な場所にも赴いて行く。なぜだ。なぜそんな危険な場所へ自ら赴くのだ。
 私には関係ない、自分で危険なことをして危険な目に遭うのだ、放っておけばいい。そう思うのになぜか気になる。なぜか放っておけない。

 頼りないかと思えば行動力があったり、宰相やルースにいいように使われているだけのようなのに、それが分かっていそうな賢さだったり……。

 私たちに媚びるわけでもなく、だからといって横柄にするわけでもない。異世界人だからなのか、私に対しても萎縮したりすることも、過剰な期待を寄せられることもない。だからといって相手にしない、という訳でもない。
 普通。普通なんだ。今まで私の周りにはない自由さ。素直さ。幼馴染のあいつらとも違う存在……なぜだかそれが心地好くて仕方ない。不思議な奴だ。

 だが私は奴の護衛というだけだ。護らなければならない対象、それだけだ。特別な訳ではない。専属護衛だから仕方がない……それだけだ……。
 心配な訳ではない……そう、心配な訳では決してない……。

 そう思おうとした。思っていた。ついさっきまでは。


 目の前でショーゴが気を失って倒れた。瘴気にあてられたのか、真っ青な顔をし、呼吸が荒い。

 それを見た瞬間、私のなかでなにかが弾けた。

 ショーゴを助けなければ。失う訳にはいかない。失いたくない。ダメだ。死なせない!!

 聖女の力だとかそんなものは関係ない。私が、私自身がショーゴを失いたくないのだ。それがようやく分かった。ショーゴは私にとって特別なのだ……。

 だから…………私の前からいなくなることなんて許さない!

 ショーゴ!!



 ショーゴを抱き締め、馬を走らせ瘴気の森を出る。魔物の気配を感じない辺りまで戻ると、岩場の陰にショーゴを下ろし様子を見る。
 真っ青な顔に呼吸も荒い。身体は冷たくなっていた。

 どうしたら、どうしたらいい!? 必死に考えを巡らせる。

 通信用魔導具で国の魔導師と連絡を取る。その通信に応えたのはルースではなかった。通信用魔導具は魔導師団執務室に設置されている。その場にいる誰かが対応する。
 聞き覚えのある魔導師の声。おそらく会ったことのある人物なのだろう。しかし今はそんなことはどうでもよかった。名を聞くでもなく、自分の名だけ伝え状況を説明する。そしてショーゴの症状を伝え、対処法を聞く。

『もしかしたら瘴気を取り込んでしまったのかもしれません。魔力で中和させてあげてください!』

「魔力で中和?」

『はい、魔力をショーゴ殿に少しずつ送り、体内の瘴気を中和させるんです』

「分かった」

 魔導師との連絡を切り、ショーゴを抱き締める。苦しそうな表情のショーゴ。顔にかかる前髪をそっと横に撫でると、額には汗が滲んでいた。

「魔力……」

 魔力を送るには……。

 真っ青な顔に荒い息のショーゴを目にすると、それは自然と動いた。

 ショーゴの荒い息を抑え込むように、私は唇を重ねた。

 座り込んだ中心にショーゴを抱き、片腕でショーゴの身体を支えながら、もう片方の手でショーゴの頬に触れる。そして顔をこちらに向かせ唇を重ねた。
 初めは苦しそうな表情のままのショーゴだったが、唇が触れ、そこから魔力を流し込み、一度離すと、ぷはっと大きく息を吸ったショーゴの表情は少し和らいだ。

 そのことに少し安堵し、そしてもう一度唇を重ねる。少し落ち着いたため、今度はさらに深く。チュッと音を立てながら舌を入れる。唾液がショーゴの口内に流れ込んでいく。それをコクリと喉を動かし飲み込んだショーゴにぞくりとする。

 あぁ、なんだこの感情は……。

 意識がまだなかったショーゴは少しずつ半覚醒しているのか、口内をまさぐるように舌を動かすと、それに釣られるようにショーゴの舌も追って来た。少し熱っぽくなってきたのかショーゴの口内や舌は熱く、冷たさを求めているのか渇きを潤したいのか、ショーゴは私の舌を執拗に求めた。

 息苦しさから少し口を離すと透明の糸が引く。しかしそれを気にすることなく、私の舌を追いかけ突き出されたショーゴの舌に再び深く齧り付いた。

 魔力を送るという処置を忘れてしまいそうになるほど、ショーゴとの口付けに次第に夢中になってしまっている自分がいた。

 少し目を開けたショーゴは意識を取り戻しつつあったようで、唇が少し離れた隙に「ライル?」と頼りなげに呼んだ。

 そのことに高揚する自分に気付く。

「大丈夫か?」

「ライル……ごめん、俺、倒れた?」

 少し泣きそうな顔に見えた。そんなショーゴの表情に心臓が鷲掴みされたような、そんな錯覚すら覚えた。

「大丈夫だ、私が治すから」

 そうやって魔力を送るために何度も口付けを交わした。

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