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第26話 結ばれなかった二人
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「ショーゴ!? ショーゴって言ったか!? あれが!?」
レオンが驚愕の声を上げる。
俺の名を知っている……なんだろう、そのことに俺には驚きがない。むしろそれが当たり前だと認識しているような……。
俺は輝く少年に近付いた。
「気を付けろ!!」
「うん、大丈夫……」
ライルの記憶を奪ったあの剣のような禍々しさは感じない。大丈夫だ。
「この子は俺だから……」
「「!?」」
レオンとロキが驚き俺を見た。
「どういうことだ!?」
「分からない。けど、あの子が俺だって分かる……」
説明のしようがない。俺にも分からないんだから。でもなぜだかあの子は俺だと分かるんだ。なんだこの不思議な感じは……。
ゆっくりとその少年に近付くと、その少年はにこりと微笑んだ。
『やっと会えた。僕のショーゴ』
「俺は君が《俺》だということは分かるんだ。でもそれがなぜだか分からない。教えてくれないか……」
そう言うと少年はクスッと笑った。そしてふわふわと浮き上がりくるりと回転して見せた。
『フフ、そうだね。僕は君。君は僕……僕たちは同じであって同じでない……君の大事な人を救うためにも……僕の大事な人を救うためにも……君に助けてもらいたい……』
レオンもロキも訳が分からないといった顔。俺自身も言われていることは全く分からない。しかし分かるようなそんな不思議な感覚。ライルの記憶を取り戻すためにはこの子の話を聞かなくてはならない、それだけははっきりと分かった。
『僕はね、この国が出来るもっともっと以前に生きていたんだ……』
ふわふわと楽しそうに回転しながら、その少年は自分が生きていた頃の話を語りだした。
『遥か彼方昔、今の国が出来る前、過去に大きな争いがあったんだ……』
――――始まりはたった一つの命からだった。
この地には遥か彼方昔、小さな村があった。
その村に住む一人の青年は幼馴染の少年と恋仲だった。今でこそ同性同士の恋愛も自由となっているが、その当時はまだ許されぬ恋だった。
二人は村の人間には隠れて愛を育んでいたが、あるときそれが村の人間にバレた。
二人は糾弾され、逃げようとしたが、少年は殺されてしまった。青年は愛する者を殺され嘆き悲しみ、その後さらに追われ、自身も殺された。
絶命する寸前、自身が持っていた剣に己の魂を宿し、憎しみは呪いとなり、その地に災いをもたらした。
呪いの剣は多くの人々の悪意を吸い取り、争いを起こす。災いとなりて人々の命を奪っていく。そしてその地は多くの人間が死んだ土地となった。
多くの命を失ったその地は不浄の地となり、より多くの人間の悪意を集めるようになった。
呪いはいつしか瘴気を放ち、聖女と呼ばれる少女が生まれるようになった。瘴気を浄化するために生まれ、力を使い、そして時代は流れ、再び悪意が集まり瘴気を放つ……。
そうやってこの国は浄化と瘴気を繰り返すのだ――――
「君はその最初に殺された少年?」
『うん』
その少年は悲観になるわけでもなく笑顔で答えた。
『僕はね、村の人たちを恨んではいないんだ。あのときは許されないことだったから。仕方がなかったと思える。でもね、彼は違ったんだ……』
少し寂しそうに笑う少年。
『僕は死ぬ寸前に神様に平和な世を願った。そこで彼と幸せになりたかった。今世では結ばれることが難しくとも、来世では二人で幸せになりたいと願った。必死に願ったんだ……』
そう言ってにこりと俺を見た少年は、そっと俺に近付いた。そして触れられる訳でもないのに、俺の手に自分の手をそっと重ねた。
『僕は平和な世に生まれ変われたんだよ』
「それが……俺?」
『フフ』
「ショーゴの前世だとでも言うのか!?」
レオンが驚いた顔で叫んだ。ロキもどうしたらいいのか分からないといった顔だ。
『前世というものなのかは分からないけれど、僕の魂はショーゴのなかにある。そして僕の肉体はこの地にあるんだよ』
少年の足元を見た。そこにはあの黒い墓石。そうか、ここにこの少年が眠っているのか。
『殺された僕に同情してくれた村人がこっそりと埋葬してくれたんだ』
そうか、罪を犯した者を丁重に埋葬していたとなれば、その埋葬した人間も罪に問われかねない。だから墓石に名が彫られていなかったんだな。
『僕の魂と肉体が近付いたおかげで、僕はこうしてショーゴと会話が出来た。ずっとこの場所に戻ってきたかった……』
『ショーゴ、彼を救って欲しい』
「彼……それはあの剣のこと?」
ライルの記憶を奪ったあの剣。呪いの剣。この少年の愛する者の魂が宿った剣。
『彼はあの剣に魂が縛り付けられてしまっている。憎しみ呪い、そのせいで彼はもう自分が何者であったかも覚えていない。ただ人々を呪うだけの存在となってしまっている。魂が縛られている限り、生まれ変わることが出来ない。僕だけ……僕だけが彼を置いて生まれ変わってしまったんだよ……』
少年はぽろぽろと涙を零す。
レオンもロキももう警戒はしていない。剣は鞘に収め顔を見合わせる。そして三人とも頷き合った。
「どうしたらいい?」
顔を上げた少年は涙を流しながら微笑んだ。
『ありがとう、もうこれ以上彼に多くの人の命を奪わせたくない……。彼を呪縛から解き放ってあげて欲しい。そうすればきっと君の大事な人の記憶も戻るはずだから……』
少年の話では浄化と結界を融合させ、その剣を清浄化し封印をしろ、とのことだった。
そ、そんなこと出来るんだろうか。少しの不安を覚えたが、やるしかない。
少年はキラキラと輝く粒となって消えた。いや、消えたというのは語弊があるかな。俺のなかにあの少年はいる。あの少年の気配を感じる。
少年と共に剣を封印する!
俺たちは平原となった瘴気の森へと向かった。
何度となく向かった瘴気の森。ライルの記憶を奪った場所。過去の二人が命を落とした場所。多くの人間の命を奪った場所。
今まで多くの聖女がこの地を浄化してきた。何度も浄化を繰り返してきた。
今回なぜ男の俺が召喚されたのか疑問だった。それには理由があったんだ。
俺のなかにいるあの少年が神に願った。
たった一人の愛する人のために、愛する人を解放してやりたいがために、神に願い俺を呼んだ。
俺は少年の愛する人を解放し、俺の愛する人も取り戻すんだ!!
レオンが驚愕の声を上げる。
俺の名を知っている……なんだろう、そのことに俺には驚きがない。むしろそれが当たり前だと認識しているような……。
俺は輝く少年に近付いた。
「気を付けろ!!」
「うん、大丈夫……」
ライルの記憶を奪ったあの剣のような禍々しさは感じない。大丈夫だ。
「この子は俺だから……」
「「!?」」
レオンとロキが驚き俺を見た。
「どういうことだ!?」
「分からない。けど、あの子が俺だって分かる……」
説明のしようがない。俺にも分からないんだから。でもなぜだかあの子は俺だと分かるんだ。なんだこの不思議な感じは……。
ゆっくりとその少年に近付くと、その少年はにこりと微笑んだ。
『やっと会えた。僕のショーゴ』
「俺は君が《俺》だということは分かるんだ。でもそれがなぜだか分からない。教えてくれないか……」
そう言うと少年はクスッと笑った。そしてふわふわと浮き上がりくるりと回転して見せた。
『フフ、そうだね。僕は君。君は僕……僕たちは同じであって同じでない……君の大事な人を救うためにも……僕の大事な人を救うためにも……君に助けてもらいたい……』
レオンもロキも訳が分からないといった顔。俺自身も言われていることは全く分からない。しかし分かるようなそんな不思議な感覚。ライルの記憶を取り戻すためにはこの子の話を聞かなくてはならない、それだけははっきりと分かった。
『僕はね、この国が出来るもっともっと以前に生きていたんだ……』
ふわふわと楽しそうに回転しながら、その少年は自分が生きていた頃の話を語りだした。
『遥か彼方昔、今の国が出来る前、過去に大きな争いがあったんだ……』
――――始まりはたった一つの命からだった。
この地には遥か彼方昔、小さな村があった。
その村に住む一人の青年は幼馴染の少年と恋仲だった。今でこそ同性同士の恋愛も自由となっているが、その当時はまだ許されぬ恋だった。
二人は村の人間には隠れて愛を育んでいたが、あるときそれが村の人間にバレた。
二人は糾弾され、逃げようとしたが、少年は殺されてしまった。青年は愛する者を殺され嘆き悲しみ、その後さらに追われ、自身も殺された。
絶命する寸前、自身が持っていた剣に己の魂を宿し、憎しみは呪いとなり、その地に災いをもたらした。
呪いの剣は多くの人々の悪意を吸い取り、争いを起こす。災いとなりて人々の命を奪っていく。そしてその地は多くの人間が死んだ土地となった。
多くの命を失ったその地は不浄の地となり、より多くの人間の悪意を集めるようになった。
呪いはいつしか瘴気を放ち、聖女と呼ばれる少女が生まれるようになった。瘴気を浄化するために生まれ、力を使い、そして時代は流れ、再び悪意が集まり瘴気を放つ……。
そうやってこの国は浄化と瘴気を繰り返すのだ――――
「君はその最初に殺された少年?」
『うん』
その少年は悲観になるわけでもなく笑顔で答えた。
『僕はね、村の人たちを恨んではいないんだ。あのときは許されないことだったから。仕方がなかったと思える。でもね、彼は違ったんだ……』
少し寂しそうに笑う少年。
『僕は死ぬ寸前に神様に平和な世を願った。そこで彼と幸せになりたかった。今世では結ばれることが難しくとも、来世では二人で幸せになりたいと願った。必死に願ったんだ……』
そう言ってにこりと俺を見た少年は、そっと俺に近付いた。そして触れられる訳でもないのに、俺の手に自分の手をそっと重ねた。
『僕は平和な世に生まれ変われたんだよ』
「それが……俺?」
『フフ』
「ショーゴの前世だとでも言うのか!?」
レオンが驚いた顔で叫んだ。ロキもどうしたらいいのか分からないといった顔だ。
『前世というものなのかは分からないけれど、僕の魂はショーゴのなかにある。そして僕の肉体はこの地にあるんだよ』
少年の足元を見た。そこにはあの黒い墓石。そうか、ここにこの少年が眠っているのか。
『殺された僕に同情してくれた村人がこっそりと埋葬してくれたんだ』
そうか、罪を犯した者を丁重に埋葬していたとなれば、その埋葬した人間も罪に問われかねない。だから墓石に名が彫られていなかったんだな。
『僕の魂と肉体が近付いたおかげで、僕はこうしてショーゴと会話が出来た。ずっとこの場所に戻ってきたかった……』
『ショーゴ、彼を救って欲しい』
「彼……それはあの剣のこと?」
ライルの記憶を奪ったあの剣。呪いの剣。この少年の愛する者の魂が宿った剣。
『彼はあの剣に魂が縛り付けられてしまっている。憎しみ呪い、そのせいで彼はもう自分が何者であったかも覚えていない。ただ人々を呪うだけの存在となってしまっている。魂が縛られている限り、生まれ変わることが出来ない。僕だけ……僕だけが彼を置いて生まれ変わってしまったんだよ……』
少年はぽろぽろと涙を零す。
レオンもロキももう警戒はしていない。剣は鞘に収め顔を見合わせる。そして三人とも頷き合った。
「どうしたらいい?」
顔を上げた少年は涙を流しながら微笑んだ。
『ありがとう、もうこれ以上彼に多くの人の命を奪わせたくない……。彼を呪縛から解き放ってあげて欲しい。そうすればきっと君の大事な人の記憶も戻るはずだから……』
少年の話では浄化と結界を融合させ、その剣を清浄化し封印をしろ、とのことだった。
そ、そんなこと出来るんだろうか。少しの不安を覚えたが、やるしかない。
少年はキラキラと輝く粒となって消えた。いや、消えたというのは語弊があるかな。俺のなかにあの少年はいる。あの少年の気配を感じる。
少年と共に剣を封印する!
俺たちは平原となった瘴気の森へと向かった。
何度となく向かった瘴気の森。ライルの記憶を奪った場所。過去の二人が命を落とした場所。多くの人間の命を奪った場所。
今まで多くの聖女がこの地を浄化してきた。何度も浄化を繰り返してきた。
今回なぜ男の俺が召喚されたのか疑問だった。それには理由があったんだ。
俺のなかにいるあの少年が神に願った。
たった一人の愛する人のために、愛する人を解放してやりたいがために、神に願い俺を呼んだ。
俺は少年の愛する人を解放し、俺の愛する人も取り戻すんだ!!
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