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21-1 魔女
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ディークとセルヴィは再び書庫へと戻り、地下へと降りた。
「改めて見ても不思議な部屋ですね」
「あぁ……」
下から見上げると地上の部屋が透けて見える上に、置いてあるものが明らかに普通とは違う。王妃が使っていた、というには違和感がありすぎる。ディークはひとしきり周りを眺めてから、魔導書らしきものを手に取った。
中身はやはり予想通りの魔法について。しかも専門知識を要するような内容ばかりだ。魔法を使ったことがないディークにはさっぱり分からない。
普通の魔導書くらいならばディークも読んだことはある。騎士となるにあたって、魔法も一通り勉強をしたのだ。なにかにつけ熱心だったディークは、本来必要はないのだろうが、騎士の訓練だけでなく、教養や魔法についても勉強をしていた。教養については貴族たちに馬鹿にされないように、という理由もあったのだが。
普通の一般人よりは明らかに魔法についても知識はあるディークだが、それでもここにある魔導書は読んでも全く理解出来ない内容だった。
「明らかに魔法の専門書ですよね。初代王妃様が使っていたんですかね?」
「…………」
セルヴィは怪訝な顔をしている。ディーク同様、セルヴィも魔導書を手に取り眺めるが、ディークの言う通り、明らかに一般的ではない魔導書。こんなものがなぜこんなにこの場所に集まっているのか、それが分からない。
ディークとセルヴィは手当たり次第、魔導書を読み漁り、あちこちに置かれている不思議な道具を手に取り調べる。しかし、どうやら魔法に関連するもののようだ、ということ以外全く分からない。
そうやってひとしきり探していると、なにやら綺麗な金属で出来ている箱を発見する。手で持ち上げられるくらいのそれほど大きくもない箱。綺麗な装飾で飾られてあるが、かなりの年月が経っているからか、もとは金色だったのだろうか、と思われる装飾がくすんだ色となっていた。
「なんですかね、これ。どうやって開けるんだろ」
ディークはその箱を持ち、振ってみるとなかで何かが動く音がする。そのためこれは箱になっていて、なかに何かがあるのだと気付いた。しかし鍵穴もなにもない。どうやって開けるのか見当もつかない。
「ちょっと見せてくれ」
セルヴィはそう言うとディークからその箱を受け取る。セルヴィはその箱をじっくり観察していくと、金色の装飾のさらに下に、薄っすらと王家の紋が入っていることに気付いた。
「王家の紋だ」
「王家の紋? ということは、やはり初代国王か初代王妃の持ち物……」
そしてその紋にセルヴィがそっと指を這わせた瞬間、地下が現れたときのように箱に魔法陣が現れ光り輝いた。
「殿下!!」
ディークは慌てて、それを取り上げようとセルヴィに近寄ったが、セルヴィは「おそらく大丈夫だ」とディークに向かって頷いた。それを見たディークは安堵したが、そのままセルヴィに寄り添い、その箱を受け取った。
次第に光が収まってくると、箱は一瞬にして消滅し、手の上には一冊のノートが残った。
「き、消えた?」
ディークとセルヴィは驚き目を見開き、顔を見合わせると頷き合った。
「中身を見てみますか?」
「あぁ」
ディークはそのノートをそっと開いた。その中身はどうやら日記のようだった……。
最初のうちはこの日記を書いた主の研究日誌のようだった。どうやら魔法を研究しているらしく、今日はなにを試してみた、今日はなにを行った、これは成功だ、これは失敗した、などの魔法についてのことばかりが書かれていた。しかし、ある時期から急に内容が変わり出す。
「改めて見ても不思議な部屋ですね」
「あぁ……」
下から見上げると地上の部屋が透けて見える上に、置いてあるものが明らかに普通とは違う。王妃が使っていた、というには違和感がありすぎる。ディークはひとしきり周りを眺めてから、魔導書らしきものを手に取った。
中身はやはり予想通りの魔法について。しかも専門知識を要するような内容ばかりだ。魔法を使ったことがないディークにはさっぱり分からない。
普通の魔導書くらいならばディークも読んだことはある。騎士となるにあたって、魔法も一通り勉強をしたのだ。なにかにつけ熱心だったディークは、本来必要はないのだろうが、騎士の訓練だけでなく、教養や魔法についても勉強をしていた。教養については貴族たちに馬鹿にされないように、という理由もあったのだが。
普通の一般人よりは明らかに魔法についても知識はあるディークだが、それでもここにある魔導書は読んでも全く理解出来ない内容だった。
「明らかに魔法の専門書ですよね。初代王妃様が使っていたんですかね?」
「…………」
セルヴィは怪訝な顔をしている。ディーク同様、セルヴィも魔導書を手に取り眺めるが、ディークの言う通り、明らかに一般的ではない魔導書。こんなものがなぜこんなにこの場所に集まっているのか、それが分からない。
ディークとセルヴィは手当たり次第、魔導書を読み漁り、あちこちに置かれている不思議な道具を手に取り調べる。しかし、どうやら魔法に関連するもののようだ、ということ以外全く分からない。
そうやってひとしきり探していると、なにやら綺麗な金属で出来ている箱を発見する。手で持ち上げられるくらいのそれほど大きくもない箱。綺麗な装飾で飾られてあるが、かなりの年月が経っているからか、もとは金色だったのだろうか、と思われる装飾がくすんだ色となっていた。
「なんですかね、これ。どうやって開けるんだろ」
ディークはその箱を持ち、振ってみるとなかで何かが動く音がする。そのためこれは箱になっていて、なかに何かがあるのだと気付いた。しかし鍵穴もなにもない。どうやって開けるのか見当もつかない。
「ちょっと見せてくれ」
セルヴィはそう言うとディークからその箱を受け取る。セルヴィはその箱をじっくり観察していくと、金色の装飾のさらに下に、薄っすらと王家の紋が入っていることに気付いた。
「王家の紋だ」
「王家の紋? ということは、やはり初代国王か初代王妃の持ち物……」
そしてその紋にセルヴィがそっと指を這わせた瞬間、地下が現れたときのように箱に魔法陣が現れ光り輝いた。
「殿下!!」
ディークは慌てて、それを取り上げようとセルヴィに近寄ったが、セルヴィは「おそらく大丈夫だ」とディークに向かって頷いた。それを見たディークは安堵したが、そのままセルヴィに寄り添い、その箱を受け取った。
次第に光が収まってくると、箱は一瞬にして消滅し、手の上には一冊のノートが残った。
「き、消えた?」
ディークとセルヴィは驚き目を見開き、顔を見合わせると頷き合った。
「中身を見てみますか?」
「あぁ」
ディークはそのノートをそっと開いた。その中身はどうやら日記のようだった……。
最初のうちはこの日記を書いた主の研究日誌のようだった。どうやら魔法を研究しているらしく、今日はなにを試してみた、今日はなにを行った、これは成功だ、これは失敗した、などの魔法についてのことばかりが書かれていた。しかし、ある時期から急に内容が変わり出す。
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