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9-2 セルヴィ徘徊
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そこにはキャアキャアと騒がしいメイドたち。
そのなかに入ることは、今までの男たちに話しかけるのとは訳が違うほどに抵抗があった。
見たところディークの姿は見えない。わざわざ話しかけてまで確認する必要はないだろう、とセルヴィはメイドたちを無視して別の場所へと行こうとしたが、そういうときに限って見付かるのは最早お決まりなのか。
目ざとくセルヴィを見付けたメイドたちは悲鳴にも似た声を張り上げた。
「キャァァアア!! セルヴィ殿下!!」
「はっ、もしやディーク様をお探しに!?」
目を輝かせ群がられたかと思うと、なぜかセルヴィがディークを探している、ということを伝えずとも言い当てたメイドたちに、セルヴィは目を見開いた。
「な、なぜ分かった!?」
「キャァァアア!! やっぱり!!」
「なんてこと!! 萌える!!」
「最高です!! ありがとうございます!!」
なぜかメイドたちに拝まれる。訳が分からずセルヴィは後退った。
「私たちはお二人を応援しておりますので!」
「は?」
(二人を応援? 私とディークのことか? 応援とはなんだ? なにを応援するのだ)
全く意味が分からない、と茫然としてしまう。
「ディーク様ならあちらに向かわれましたよ!」
メリッサが指差しニコニコとする。他のメイドたちもなぜかやたらと笑顔で見詰めている。そのことに異様な気配を感じたセルヴィは、早くこの場から離れなければ、と本能で感じた。
「わ、分かった、ありがとう」
そう呟くと早々にその場を離れる。背後ではいまだ興奮気味にキャアキャアと叫んでいるメイドたちの視線がセルヴィの背中にグサグサと突き刺さるのだった。
(なぜかやたらと疲れた……)
大きな溜め息を吐きながら、さらに進むとディークの声が聞こえてきた。
そしてセルヴィは激しく項垂れる。ディークがいたその場所は、一番最初に覗いた場所、厨房だった。
「くそっ、完全に無駄足じゃないか!」
散々歩き回らされた挙句、今まで話したことがないような使用人たちと言葉を交わすはめになり、激しく消耗した。文句のひとつでも言ってやろうかと厨房に乗り込もうとしたとき、ディークがイアンと話す声が聞こえて来た。
思わず足を止め、それを聞く。
「芋の皮むきは得意だぞ? なんせ一人暮らしが長いからな、自炊もしていたし」
「そうなのか?」
「俺、ちっさい頃から孤児なんだよね」
「そうか……世話をしてくれる施設や人間はいなかったのか?」
「んー、まあ小さい村だったからなぁ……ダトス村って知ってるか?」
「え、ダトス村!?」
「あ、イアンの歳ならさすがに知ってるか、ハハ」
「す、すまん、余計なことを聞いた」
「ハハ、気にしないで良いよ。もう過去のことだ」
「しかし、あの村は……確か……」
「あー……」
表情は見えないが、イアンが聞きづらそうに言葉を濁す。セルヴィはディークの話を本人が知らぬ間に、勝手に聞いて良い話ではないと思った。
(ダトス村……あの村の出身なのか……)
なぜ自分がディークを追っていたのかの目的も忘れ、『ダトス村』という村の名に意識が行ってしまい、声を掛けるでもなくその場をそっと離れた。
(あの村は……魔物に襲われ、全滅した……)
記憶を辿り胸の奥がギシリと痛んだ。
そのなかに入ることは、今までの男たちに話しかけるのとは訳が違うほどに抵抗があった。
見たところディークの姿は見えない。わざわざ話しかけてまで確認する必要はないだろう、とセルヴィはメイドたちを無視して別の場所へと行こうとしたが、そういうときに限って見付かるのは最早お決まりなのか。
目ざとくセルヴィを見付けたメイドたちは悲鳴にも似た声を張り上げた。
「キャァァアア!! セルヴィ殿下!!」
「はっ、もしやディーク様をお探しに!?」
目を輝かせ群がられたかと思うと、なぜかセルヴィがディークを探している、ということを伝えずとも言い当てたメイドたちに、セルヴィは目を見開いた。
「な、なぜ分かった!?」
「キャァァアア!! やっぱり!!」
「なんてこと!! 萌える!!」
「最高です!! ありがとうございます!!」
なぜかメイドたちに拝まれる。訳が分からずセルヴィは後退った。
「私たちはお二人を応援しておりますので!」
「は?」
(二人を応援? 私とディークのことか? 応援とはなんだ? なにを応援するのだ)
全く意味が分からない、と茫然としてしまう。
「ディーク様ならあちらに向かわれましたよ!」
メリッサが指差しニコニコとする。他のメイドたちもなぜかやたらと笑顔で見詰めている。そのことに異様な気配を感じたセルヴィは、早くこの場から離れなければ、と本能で感じた。
「わ、分かった、ありがとう」
そう呟くと早々にその場を離れる。背後ではいまだ興奮気味にキャアキャアと叫んでいるメイドたちの視線がセルヴィの背中にグサグサと突き刺さるのだった。
(なぜかやたらと疲れた……)
大きな溜め息を吐きながら、さらに進むとディークの声が聞こえてきた。
そしてセルヴィは激しく項垂れる。ディークがいたその場所は、一番最初に覗いた場所、厨房だった。
「くそっ、完全に無駄足じゃないか!」
散々歩き回らされた挙句、今まで話したことがないような使用人たちと言葉を交わすはめになり、激しく消耗した。文句のひとつでも言ってやろうかと厨房に乗り込もうとしたとき、ディークがイアンと話す声が聞こえて来た。
思わず足を止め、それを聞く。
「芋の皮むきは得意だぞ? なんせ一人暮らしが長いからな、自炊もしていたし」
「そうなのか?」
「俺、ちっさい頃から孤児なんだよね」
「そうか……世話をしてくれる施設や人間はいなかったのか?」
「んー、まあ小さい村だったからなぁ……ダトス村って知ってるか?」
「え、ダトス村!?」
「あ、イアンの歳ならさすがに知ってるか、ハハ」
「す、すまん、余計なことを聞いた」
「ハハ、気にしないで良いよ。もう過去のことだ」
「しかし、あの村は……確か……」
「あー……」
表情は見えないが、イアンが聞きづらそうに言葉を濁す。セルヴィはディークの話を本人が知らぬ間に、勝手に聞いて良い話ではないと思った。
(ダトス村……あの村の出身なのか……)
なぜ自分がディークを追っていたのかの目的も忘れ、『ダトス村』という村の名に意識が行ってしまい、声を掛けるでもなくその場をそっと離れた。
(あの村は……魔物に襲われ、全滅した……)
記憶を辿り胸の奥がギシリと痛んだ。
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