【完結】呪われ王子は生意気な騎士に仮面を外される

りゆき

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9-1 セルヴィ徘徊

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 セルヴィは朝食後、部屋へと戻りそわそわとしながらディークを待ったが一向に現れる気配はない。

「…………」

 護衛は必要ないとディークにどこかへ行け、と言ったのは自分なのだ。セルヴィは意気揚々と姿を消したディークの姿を思い出す。

「探しに行くか……」

 このまま昨夜ディークがいたのかをはっきりさせないとモヤモヤしたままになる。セルヴィはおもむろに立ち上がり、部屋を出た。

「しかし……どこを探せば良い……」

 ディークがどこにいるかなど、全く予想がつかない。それでなくとも、セルヴィは使用人たちの居場所も把握していない。
 今まで使用人たちと関わらなかったことを後悔することはないが、今回に限ってだけはもう少し皆の行動を把握しておけば良かったと思うのだった。

 仕方なく闇雲にうろつくはめになったセルヴィは、とりあえず、と使用人食堂を覗く。
 そこにはすでに誰もおらず、隣の厨房からは片付けだろうか、食器のカチャカチャという音に、水音が聞こえる。

 こっそりと厨房を覗くと、イアンとノアが片付けをしていた。

「あれ? 殿下!? どうされたのですか!?」

 イアンが振り向きざまにセルヴィに気付き声を上げる。その声にノアもそちらへ向くと、明らかにぎょっとした顔をする。まさかセルヴィがこんなところへやって来るとは思いもしなかった二人は茫然とした。

「いや……その……」

 もごもごと口篭る。ノアはそんなセルヴィに恐れを抱いたのか、身体を強ばらせている。それを見兼ねたイアンは慌ててセルヴィに近寄り声をかける。

「ど、どうかされましたか?」

 改めてゆっくりと言葉にしたイアンの顔をちらりと見るセルヴィ。
 なんと説明をしたら良いのか、なぜディークを探しているのかを突っ込まれはしないかと、内心そわそわとして落ち着かない。しかし顔はそれを隠すためにより一層冷たい顔になる。
 冷静になろうとすればするだけ、顔は強張り怖い顔となる。

 イアンを睨み付けるセルヴィは自身がそんな目付きになっていることなど気付かずに小さく言葉にした。

「ディークは?」
「は?」

 イアンはセルヴィの目付きに怯えることはないが、予期せぬ質問に一瞬思考が停止してしまった。

 固まったイアンを前にセルヴィは苛立ち、カッと顔が熱くなる。もう一度ディークの名を口にしなければならない、ということが、セルヴィの羞恥心を刺激した。ディークを探している、という行為自体がセルヴィにとって受け入れ難い行為だからだ。

「ディークはどこだ、と聞いている!!」

 思わず声を張り上げてしまい、セルヴィはそれだけ言葉にすると、イアンから目を逸らした。

「は? ディーク、ですか? えっと……いや、すみません、分かりません……」

(これだけ恥ずかしい思いをさせておいて分からないだと!?)

 セルヴィはジロリとイアンを睨んだ。

「あ、ハハ……すみません。使用人たちの仕事を見に行くとか言っていたので、誰かの元にいるかとは思いますが」

 イアンは苦笑しながら言う。ノアは相変わらず怯えたままだ。

「分かった、邪魔をして悪かった」

 セルヴィはそう呟くと、イアンと目を合わせるでもなくすぐさま厨房を後にした。イアンとノアはしばらくの間、茫然とするのだった。


(くそっ、どこにいる、なぜ私がこんな恥ずかしい思いをしながら探し回らなければならないのだ)

 ブツブツと文句を言いながら、セルヴィは再び城内を歩き回る。
 厩舎の修理をしていたダンとザックの元へ行ったときもイアンと同じような顔をされる。

 驚き目を見開いた二人からもイアンと同様にディークがどこにいるかは知らないと言われた。

「さっきまでここで手伝ってくれていたんですけどねぇ」
「チッ」
「ひっ」

 酷い目付きで睨まれた挙げ句、舌打ちをされ、ダンとザックは顔を引き攣らせた。

 セルヴィは再び速足で歩き回る。あまりに見付からないディークに苛つきを覚え、無駄に広い城に一棟丸々壊してやろうか、とすら思っていた。

「全く! あいつはどこにいるんだ!」

 イライラしながら歩くセルヴィは賑やかな声に気付きそちらに向かった。

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