【完結】異世界転移で落ちて来たイケメンからいきなり嫁認定された件

りゆき

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32-1 不穏

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「言葉が通じること以外に通貨の概念や時間の単位もほぼ日本と同じだ」
「通貨や時間?」
「あぁ、どちらも言葉や名前は違うが、計算方法は日本と同じ十進法。一円、五円、十円、百円、五百円と同じ銅貨がある。千円、五千円、は銀貨、一万円は金貨。それぞれ大きさやデザインが違うが、ほぼ日本の通貨と同じ価値観のようだった」
「へぇ……」
「時間も二十四時間あって、名前は花の名前が付いているようで十二時間分しかないが、それを二度繰り返す。一時間辺り六十分というのも同じ。太陽や月もある。季節も日本と同じ春、夏、秋、冬とあるらしい」
「お、おぉ……な、なんだそれ……日本とほぼ一緒……?」
「だろ? 他にも色々共通することは色々ある。偶然とは思えないんだよな」
「日本と多くのことが共通している……それが意味するところはなんだ?」

 うむ、と二人で考え込む。そういえば過去にも異世界から伴侶を連れて来た領主がいたとか言っていたな。

「昔、異世界から連れて来た伴侶も日本人だったんだろうか……」
「あー、それな、俺も気になって調べてみようかと思ったが、さすがに国王選定の儀については調べることが禁止らしく、止められて結局なにも分からなかった……」
「それも調べたのか、凄いな、お前」

 リョウの行動力に感心する。俺がいくら遅れてこの世界にやって来たにしても、そこまで遅かったとも思えないんだけどなぁ。そんな短期間で色々調べる行動力に、観察眼に……弟だが尊敬するよ。

「まあね」

 ニヤッと笑ったリョウ。イケメンはなにをしても様になるから羨ましいことだ。

「それだけ多くの共通点があることで、俺が考えたのは……」
「考えたのは?」

 ゴクリと生唾を飲み込んだ。リョウは真面目な顔をし、少し小声になりながら言った。

「この世界は、日本のパラレルワールド的な世界じゃないかと思うんだ」
「パラレルワールド?」
「あぁ。もしくは合わせ鏡のように向かい合った世界……だからどこかで繋がっていて、選定の儀で運命の相手を探すときに日本にいる人間までもが対象となっている……」
「え……繋がっている!?」
「そう。まあ、俺の仮説だけど」

 あまりの突拍子もない話で、驚き固まってしまった。繋がっている……もし、そうなのだとしたら……もしかしたら元の世界に戻れるかもしれないのか?
 そう思っていたのがバレたのか、リョウが苦笑しながら言った。

「所詮、仮説だからな? 繋がっているのが確認出来るかも分からないし、もし繋がっていたとしても俺たちが再び世界を渡れるのか、という問題はある」
「う、うん、まあそうだよな……」
「まあでも少し調べてみるか……」



 それから俺たちはこの世界のことを知りたい、という名目で城にある書庫の閲覧許可をもらい調べていった。これといって日本について書かれている書物がある訳でもなく、しかし、文字すらも読めることにやはり違和感を覚えた。

 日本語が書かれている訳ではないのだが、しかし、なぜか読める。やはりチート能力なのか? とも思ったが、リョウにそんな訳ないだろ、と冷ややかな視線を向けられた……。兄の威厳が……まあ、元からそんなものはないが……シクシク。

 何日もリョウと過ごしていると、さすがにジウシードが拗ねだし、「一緒に行く」と言い出した。まあ別に構わないか、と思っていたのだが……しかし、その日はいつもと違うことが……。

「お前は誰だ?」

 俺とジウシードの部屋に今まで来たことがないメイドが現れた。ギロリと睨むジウシードの鋭い視線に負けることなく、ニコリと微笑んだメイドは金髪碧眼の美人で、黒いメイド服でありながらも分かるほどのデカい胸……い、いや、なに見てんだって感じだが……。

「お二人のお世話をさせていただくことになりました」

 そう言って綺麗なお辞儀をしたメイドは、ジウシードに近付くと華奢そうな手を伸ばし、ジウシードの腕に触れた。

「そんな話は聞いていない。ラウルを呼べ」

 ジウシードはメイドの手を振り払い、酷く冷たい視線を向け睨んだ。しかし、そのメイドはそんなジウシードの視線にも怯むことはなかった。す、凄いな……このメイド。今まで周りにいた使用人たちは皆、ジウシードの射殺しそうな目線で怯えた顔をしていたのに……。

「ラウル様に言われて来たのです。ジウシード様をお慰めするように、とも仰せつかっております」
「!?」

 ラウルがジウシードに!? そんな馬鹿な!?

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