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31-2 日本との共通点
しおりを挟む「ジウシードは大丈夫なのか?」
リョウが苦笑しながら聞いてくる。お披露目のあとからずっとあの調子で、さらには翌日からなにやらジウシードの奇行……じゃなく、あちこちで一心不乱になにかをしている姿が目撃されていることを言っているのだろう。剣の訓練はともかく料理だしな……ハハ。
「う、うん、まあ……きっと大丈夫……ジウシードならちゃんと自分で答えを見付けるよ」
うん、そうだよ。ジウシードはきっと大丈夫だ。母親のためじゃないにしろ、領民のために国王になる、と決めたとしても、それはきっとジウシードがやはり領民から慕われていることを見捨てられないから。それはジウシードが優しいからだし、責任感が強いということでもある。それはジウシードの良いところだろう。
もしそれを無理矢理見捨てたとしても、きっとずっと心の重荷になる。それならば誰かのために国王になることだって、決して悪いことではない。自分が納得するかどうかだ。
「そっか。まああいつのことは別に心配はしていないけどな。兄貴が変なことに巻き込まれなければそれで」
「ハハ、うん。ありがとうな」
思わず向かいに座るリョウの頭をワシワシと撫でた。
「ちょっ、やめろ」
驚いた顔となったリョウはほんの少し顔を赤らめ、俺の手を振り払った。
「アハハ、照れるなよ」
「照れてない」
プイッと横を向いたリョウは耳を赤くさせ拗ねたような顔をしていた。それがなんだか子供のようで懐かしくなってしまった。ハハ。
「まあ、ジウシードのことはどうでも良いんだよ。それよりも……」
「それよりも?」
拗ねた顔はすぐさま通常の冷静なリョウに戻ってしまい、若干寂しさも覚えたが、それよりも、というのはなんの話だ?
「この世界についてなんだが……なんかおかしいと思わないか?」
「おかしい?」
「あぁ、この前出た食事に兄貴も反応していただろ?」
「この前の食事?」
「お披露目の日の晩餐」
「晩餐……あぁ! 大豆か!」
「そうそう」
あの日食べた料理はなにやらやたらと和テイストだったことに驚いたのだ。そういえばそのときリョウがなにやら目配せしていたな。
「なにか変な感じがしないか? 明らかに和食だろ。味噌に豆腐に醤油って。素材の名前は違うにしてもほぼ同じ味だ」
「うん、まあ、あまりに和食っぽくてびっくりしたな」
「だろ? それに他の料理も日本で食べられるような食材や調味料と似たものばかりだ」
他の料理……確かにサンドイッチを食べたときも全く違和感がなかったな。他の食事も異世界ぽい、という食事はなく、日本で食べ馴染んでいるような味付けばかりだった。
なんとなくイメージだけど、異世界って西洋のイメージだからそれっぽい料理なのかな、とか、異世界料理って不味そう、としか思っていなかった。だから料理が旨いのはめちゃくちゃ有難かったんだよな。
「それにさ……」
「?」
「言葉が通じるのも変だと思わなかったか?」
「言葉……それは異世界チートとかじゃ……」
そう言いながら自分で苦笑した。漫画やアニメの世界じゃあるまいし、チートって。
「日本に転移して来たジェイクとも普通に言葉が通じたんだぞ? 兄貴とジウシードもそうじゃないのか?」
「あ……そういやそうだな」
日本の俺の部屋に落ちて来たジウシードは最初から言葉が通じていた。その理由を聞いてもジウシードも分からないと言っていたはず。
「他にも色々日本と共通することが多くある」
「共通すること?」
「あぁ、兄貴はこっちに来てからあまり時間が経ってないから知らないかもだが、俺はこちらの世界に来てから兄貴たちが来るまでの間、かなり暇だったもんでね。色々調べた」
「あ、ハハ、すまん……」
俺が来るまでの間……俺がジウシード相手に渋っていた間だよな、ハハ……目が泳いだ……。
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