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45-2 馬鹿二人組
しおりを挟む「ん、ということは……もしやもう一組は……」
今いるメンバー以外の残りとなると……
「ジウシードとジェイクだな。馬鹿ふたり……」
リョウが苦笑しながら言い、俺とウェジエは乾いた笑いが出た。
「あのふたり……大丈夫かな……」
「うーん、いくら馬鹿でも伴侶以外とヤルことはないだろうけどなぁ。だからといって答えが分かって出て来られるかどうか……」
「ア、ハハハ……」
ジウシードのことは信じているのだが、思わずジウシードとジェイクのふたりを想像してしまい、うぐっとなった。裏切られて悲しいという感情よりも、あのふたりがあれこれやっている姿はちょっと……いや、うん、怖い想像はやめておこう。
俺とウェジエが閉じ込められていた部屋から出ると、そこには再び広い空間が広がっていて、リョウとフェシスが出て来たのだろう、と思われる穴も繋がっていた。
「俺たちはあそこから出てきた。兄貴たちがなかなか出て来ないから待ちくたびれた」
「ハハハ、ごめん。しばらく悩んでた」
ウェジエとふたりで苦笑しつつ、四人で話していると、『ドォォォォオオオンッ!!』と激しい音が響き渡り、土埃が舞い上がる。
「な、なんだ!?」
ウェジエが俺たちを庇ってくれ、後退る。土埃が起こった場所から離れ見守ると、モクモクと上がる土埃のなかから、ぬっとなにかが出て来た。
「皆、下がれ」
ウェジエが剣を鞘から抜いたかと思うと、両手で構える。そして警戒しながら見守ると、土埃でいまだ姿は見えないが、明らかに不機嫌そうな声が響き渡った。
「だぁ!! 鬱陶しい!! こんなところに閉じ込められた挙句、こんな埃まみれになるとはな!!」
「お前が手当たり次第破壊するからだろうが」
「うるせー!! てめーがチンタラしてるからだろうが!!」
「慎重に壊せ、馬鹿。壊した先にアキラがいたらどうする……はぁ」
「なんだこら!! 喧嘩売ってんのか!?」
喧嘩腰にヤイヤイ言い合いながら出て来た……。
「ア、ハハ……ジウシード、ジェイク……無事でなにより……」
ウェジエは苦笑しつつ、剣を鞘に収め、リョウは溜め息を吐き、フェシスはシラーッとしていた。
「やっぱり馬鹿二人組……」
リョウがボソッと呟き、それに苦笑する。ま、まさか力業で脱出するとはな……ハハ。
「アキラ!! 無事だったか!!」
俺の姿を見付けたジウシードはすぐさま駆け寄り、ジェイクも目が泳ぎつつリョウの元へと向かった。
じとっとした目で睨むリョウに、ジェイクは明らかに視線を逸らしている。
「お前ら、ちょっとは頭使えよな……兄貴たちですら普通に出て来られたのに……」
呆れるように溜め息を吐いたリョウ。ジェイクは顔をカッと赤くさせ、怒るように反論する。
「んなもん分かるか!! 俺はお前を裏切らないためにだな!! その……」
怒鳴るように声を張り上げたジェイクは、しかし、次第に尻すぼみになり言葉が消えた。リョウはそのジェイクの姿にニヤッとし、ジェイクの顔を覗き込む。
「俺を想ってくれていた訳か」
「ち、ちげーわ!! だ、誰がお前なんかを!!」
「恥ずかしがるな、伴侶なんだから当然だろ」
そう言ってジェイクの顎を掴んだリョウは顔を近付け……ま、まさかキスするのか!? と、ドギマギしながら見守っていると……寸止めしたところでニヤッと笑った。ギシッと固まっていたジェイクは、これでもかというくらい目を見開いていた。
「ま、皆、無事で良かった」
ニヤッと笑ったリョウはジェイクの顎からパッと手を離すと、くるりとこちらに向き直り、爽やかな笑顔で言った。背後では真っ赤な顔のジェイクが固まり、そして我に返ると怒り心頭で意味不明な叫び声を上げていた……ハハハ……。
「ジウシードも無事で良かったよ」
苦笑しつつ、ジウシードに向き直り無事を確認するように腕を撫でた。ジウシードは嬉しそうに微笑み、しかし、なにやら嫌そうな顔に……ん?
「どうした?」
「いや、あの部屋にいたとき、ジェイクとふたりきりであんな言葉を投げ掛けられたことに不快になってな……」
「失礼な奴だな!! 俺だって不快だったっつーの!!」
ジェイクがジウシードの後ろから叫んでいるが、ジウシードは無視して俺を抱き締め、溜め息を吐いた。
「こらあぁぁっ!! 無視すんな!!」
ア、ハハハ……ジウシードにまで無視されるとは……ジェイク、不憫な奴……。ウェジエだけはジェイクに同情の視線を投げ掛けていた……ハハハ……。
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