98 / 120
49-2 最後の試練
しおりを挟む
ハッとし、ジウシードは自身の服を掴み、開いたかと思うと自身の胸を見た。そこには以前と変わらぬままの誓約の証。そのことにホッとする。
「なにしてんだ、と思ったら、誓約の証か。俺もそのままだな。でもリョウはいない……どういうことなんだ」
ジェイクも自身の胸にある誓約の証を確認し、安堵の溜め息を吐くが、しかし、リョウの姿がないことに落ち着かない気分となる。
「誓約の証があるということは、伴侶がいたのは間違いないんだよな。夢とかではないよな……」
ウェジエが不安そうな顔で呟いた。
「夢な訳がないだろう! アキラは確かにここにいた! 俺と一生を共にしてくれると誓ったんだ!」
ジウシードは叫んだ。それはまるで自分に言い聞かせるような、そんな叫びだった。しかし、ウェジエもジェイクもそんなジウシードの気持ちは痛いほどに理解をしていた。自分たちも同様だからだ。
一生を共にする覚悟を決め愛し合ったのだ。それが夢であるはずも、嘘であるはずもない。
「とにかく皆を探そう」
「あぁ」
ジウシード、ウェジエ、ジェイクは頷き合い、城のなかを探し回った。自分たちの部屋、演習場、大広間や晩餐を行った部屋、厨房も探した。一体何時間探し続けたのか、それでもアキラたちの姿は一向に見当たらない。
「くそっ。どういうことなんだ……アキラ……」
ジウシードに焦りの色が浮かぶ。全く姿が見えないことに不安になる。どこに飛ばされたのか……危険な目に遭っていないのか……ひとりで不安になってはいないか……、そんなことばかりが頭を占める。
ギリッと唇を噛み締め、どうすべきかを必死に考える。そんなときバンッと扉が開いた。部屋へと現れたのはラウルだった。自身の部屋で改めて考え込んでいたジウシードは、ノックもなしに飛び込んで来るラウルに怪訝な目をした。普段ならばそんなことをするはずもない。
ラウルたち側近と使用人たちも、突然帰還したジウシードたちに驚いていた。
試練が完了したとき、どのように帰還するかは、試練の内容が分からないためタイミングや方法などは未知だった。
しかし未知ではあるが、洞窟へ向かったジウシードたちは当然城の外から戻って来ると、ラウルたちは思っていた。それなのに、城へと帰還したという知らせもない状態で、すでに城内に三領主が帰還し、さらにはなにやら緊迫した雰囲気で城内を徘徊していた三領主たち。そのことに使用人たちは驚きを隠せなかった。
そして伴侶たちが行方不明だ、ということを聞き、ラウルたちはなおさら驚愕の顔となった。そして、伴侶たちを見付け次第、三領主へと連絡する、という連携となり、城内に勤める者全てに伴侶捜索の伝令が出されたのだった。
「どうした?」
確認もなしに飛び込んで来たラウルを咎めるでもなく、ジウシードは冷静に聞いた。ラウルがこんな状態で飛び込んで来るということは、おそらく伴侶のことだろう、とジウシードは判断した。
普段とは違い、髪が乱れ荒い呼吸を繰り返し、全くラウルらしくない。そんな姿に緊急性を感じ緊張が走る。
「フェシス様が見付かりました!」
「!!」
ラウルの言葉にジウシードは目を見開き、ガタッと椅子から立ち上がり叫ぶ。
「どこだ!?」
「今、顔合わせをした大広間におられます!!」
ジウシードはすでに走り出し、背後から叫ぶラウルの言葉を聞いた。そして、その言葉を聞いたと同時に駆ける速度は上がり、使用人たちが驚く姿を気にするでもなく大広間へと急いだ。
バンッ! と勢い良く扉を開きなかへと入ると、そこにはすでにウェジエとジェイクの姿が見える。部屋へと飛び込んで来たジウシードにふたりはビクリと身体を震わせ振り向いた。そして一番奥にはフェシスの姿が……
「なにしてんだ、と思ったら、誓約の証か。俺もそのままだな。でもリョウはいない……どういうことなんだ」
ジェイクも自身の胸にある誓約の証を確認し、安堵の溜め息を吐くが、しかし、リョウの姿がないことに落ち着かない気分となる。
「誓約の証があるということは、伴侶がいたのは間違いないんだよな。夢とかではないよな……」
ウェジエが不安そうな顔で呟いた。
「夢な訳がないだろう! アキラは確かにここにいた! 俺と一生を共にしてくれると誓ったんだ!」
ジウシードは叫んだ。それはまるで自分に言い聞かせるような、そんな叫びだった。しかし、ウェジエもジェイクもそんなジウシードの気持ちは痛いほどに理解をしていた。自分たちも同様だからだ。
一生を共にする覚悟を決め愛し合ったのだ。それが夢であるはずも、嘘であるはずもない。
「とにかく皆を探そう」
「あぁ」
ジウシード、ウェジエ、ジェイクは頷き合い、城のなかを探し回った。自分たちの部屋、演習場、大広間や晩餐を行った部屋、厨房も探した。一体何時間探し続けたのか、それでもアキラたちの姿は一向に見当たらない。
「くそっ。どういうことなんだ……アキラ……」
ジウシードに焦りの色が浮かぶ。全く姿が見えないことに不安になる。どこに飛ばされたのか……危険な目に遭っていないのか……ひとりで不安になってはいないか……、そんなことばかりが頭を占める。
ギリッと唇を噛み締め、どうすべきかを必死に考える。そんなときバンッと扉が開いた。部屋へと現れたのはラウルだった。自身の部屋で改めて考え込んでいたジウシードは、ノックもなしに飛び込んで来るラウルに怪訝な目をした。普段ならばそんなことをするはずもない。
ラウルたち側近と使用人たちも、突然帰還したジウシードたちに驚いていた。
試練が完了したとき、どのように帰還するかは、試練の内容が分からないためタイミングや方法などは未知だった。
しかし未知ではあるが、洞窟へ向かったジウシードたちは当然城の外から戻って来ると、ラウルたちは思っていた。それなのに、城へと帰還したという知らせもない状態で、すでに城内に三領主が帰還し、さらにはなにやら緊迫した雰囲気で城内を徘徊していた三領主たち。そのことに使用人たちは驚きを隠せなかった。
そして伴侶たちが行方不明だ、ということを聞き、ラウルたちはなおさら驚愕の顔となった。そして、伴侶たちを見付け次第、三領主へと連絡する、という連携となり、城内に勤める者全てに伴侶捜索の伝令が出されたのだった。
「どうした?」
確認もなしに飛び込んで来たラウルを咎めるでもなく、ジウシードは冷静に聞いた。ラウルがこんな状態で飛び込んで来るということは、おそらく伴侶のことだろう、とジウシードは判断した。
普段とは違い、髪が乱れ荒い呼吸を繰り返し、全くラウルらしくない。そんな姿に緊急性を感じ緊張が走る。
「フェシス様が見付かりました!」
「!!」
ラウルの言葉にジウシードは目を見開き、ガタッと椅子から立ち上がり叫ぶ。
「どこだ!?」
「今、顔合わせをした大広間におられます!!」
ジウシードはすでに走り出し、背後から叫ぶラウルの言葉を聞いた。そして、その言葉を聞いたと同時に駆ける速度は上がり、使用人たちが驚く姿を気にするでもなく大広間へと急いだ。
バンッ! と勢い良く扉を開きなかへと入ると、そこにはすでにウェジエとジェイクの姿が見える。部屋へと飛び込んで来たジウシードにふたりはビクリと身体を震わせ振り向いた。そして一番奥にはフェシスの姿が……
35
あなたにおすすめの小説
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。
かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年
勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました
雪
BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」
え?勇者って誰のこと?
突如勇者として召喚された俺。
いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう?
俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?
魔王に転生したら幼馴染が勇者になって僕を倒しに来ました。
なつか
BL
ある日、目を開けると魔王になっていた。
この世界の魔王は必ずいつか勇者に倒されるらしい。でも、争いごとは嫌いだし、平和に暮らしたい!
そう思って魔界作りをがんばっていたのに、突然やってきた勇者にあっさりと敗北。
死ぬ直前に過去を思い出して、勇者が大好きだった幼馴染だったことに気が付いたけど、もうどうしようもない。
次、生まれ変わるとしたらもう魔王は嫌だな、と思いながら再び目を覚ますと、なぜかベッドにつながれていた――。
6話完結の短編です。前半は受けの魔王視点。後半は攻めの勇者視点。
性描写は最終話のみに入ります。
※注意
・攻めは過去に女性と関係を持っていますが、詳細な描写はありません。
・多少の流血表現があるため、「残酷な描写あり」タグを保険としてつけています。
異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない
春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。
路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。
「――僕を見てほしいんです」
奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。
愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。
金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年
助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!
夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。 ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公
【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)
てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。
言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち―――
大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡)
20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる