【完結】異世界転移で落ちて来たイケメンからいきなり嫁認定された件

りゆき

文字の大きさ
102 / 120

51-2 禁書庫

しおりを挟む
 数時間後、宣言通りにリョウは実家であるこの家に帰って来た。しばらくおばあちゃんも含め三人で談笑していたが、おばあちゃんは途中で帰宅し、原田さんは色々気になるから、と帰ることなく一緒にリョウを出迎えた。な、なにを聞かれるか怖い……。

「で、お前たちはどこに行ってたんだ?」

 ダイニングのテーブルを挟み、俺とリョウが並んで座らされ、腕組みをした原田さんにじとっと見詰められる。俺とリョウはチラリと目を合わせ、どうしたもんかと考えるが、どうにも説明のしようがなかった。

「あー、えっと、ごめん、原田さんには迷惑をかけたと思う。でも、ごめん、言えない」

 リョウが意を決したようにそう言った。いつもならば相手が反論出来ないくらいに言い負かすリョウだが、さすがに今度のことは嘘を吐いたところでバレそうだという判断なのだろう。下手な言い訳をすると余計に突っ込まれる可能性も高い。原田さんにはそういった嘘や言い訳は通用しない。それならばいっそ「言えない」と言ったほうが早いという訳か……。

「言えない、か」

 原田さんはしばらく俺たちをじっと見詰めていたが、ハァァと深い溜め息を吐き俯いた。そして頭をガシガシと掻くと、再び顔を上げ苦笑した。

「言えないとか言われたら、これ以上なにも聞けないじゃないか」
「ごめん」

 俺たちはふたりして謝った。その言葉に原田さんは再び苦笑し、俺たちの頭をワシワシと撫でる。

「ま、お前たちももう子供じゃないしな……いつか話せるようになったら教えてくれ」

 そう笑った原田さんは立ち上がり、俺たちに優しい目を向けた。そして小さく呟く。

「お前たちはあいつにそっくりだな」
「あいつ?」
「あぁ、お前たちの父親。お前たちと一緒で頑固者だったよ」

 ハハ、と笑い、そして手をひらひらとさせながら原田さんは帰って行った。



 ◇◇



 ジウシードたちは禁書庫へと向かった。本来ならば国王とその伴侶しか入ることの叶わない禁書庫。しかし今回はそんなことを言っていられない。ジウシードたちは禁書庫の管理をしている官吏に閲覧の許可をもらう……というか、半ば脅しのように閲覧許可をもぎ取った。

 ジウシードたちは通常の書庫の一角にあるもうひとつの扉へと向かった。そこには重厚な扉がある。重々しい扉に威圧感を覚えるが、手に入れた禁書庫の鍵を鍵穴に差し込む。ガチャリと重い金属音が響くと、扉全体に魔法陣が広がり輝いた。そしてその光が収まると、ギィィと鈍い音が響き、自然と扉が開いた。

「行くぞ」

 お互い顔を見合わせ頷き合う。進んだ先には通常書庫よりは圧倒的に狭い部屋が広がっていた。ふわりと紙とインクの匂いが漂う。びっしりと並んだ本棚と中央には大きな机。窓はなく部屋にある魔導ランプは入室したと同時に点灯したが、それでも通常の部屋よりは薄暗い。

 本棚に並ぶ書物は年代物なのだろうと思われる、装丁自体がなにやら古惚けたものばかりだ。魔法についてや、他国について、各々の領地についてなどが、遥か昔から今までの記録として残された書物が並んでいる。

「歴代の領主、国王について書かれたものもあるようですね」

 フェシスが一冊の書物を取り出し、眺めながら呟いた。フェシスの眺めるその書物を机に広げ、皆で覗き込むと、確かにそこには歴代王たちの名が刻まれていた。そして領主たちの名も。

 全員で手分けしながらそれらの書物を読み漁っていくと、歴代領主たちの伴侶に異世界から連れて来たとされる伴侶が数人見受けられた。

「この領主たちは皆、異世界に行って戻って来た。それからは皆、アルヴェスタにいるままだな。特になにかこの後異世界に戻った、など記されているものはなさそうだ……」

 ウェジエが呟き溜め息を吐く。ジウシードは眉間に皺を寄せ、そんなウェジエの言葉を無視するかのように他の書物を読み漁った。ジェイクも普段ならば書物を手にすることなどない。領主教育終了後には基本的に身体を動かす姿しか目撃されることはなかった。そんなジェイクですら、真剣な眼差しで書物に目を通していた。
 その必死さにウェジエとフェシスも、顔を見合わせ、同じように再び書物に目をやる。なにか見落としがないか、慎重に読み進めて行った。

「おい、これ!」

 ジェイクが声を張り上げた。皆がガバッと顔を上げ、ジェイクの手元にある書物を覗き込んだ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました

BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」 え?勇者って誰のこと? 突如勇者として召喚された俺。 いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう? 俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?

【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる

おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。 知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。 そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。 そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。 あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。 自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。 エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。 お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!? 無自覚両片思いのほっこりBL。 前半~当て馬女の出現 後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話 予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。 サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。 アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。 完結保証! このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。 ※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

処理中です...