6 / 14
第6話 学園長室の尋問と推薦状
しおりを挟む
数日後、俺は学園で最も権威ある場所——学園長室に呼び出された。
無試験パスのはずが、どう見ても取り調べの空気である。
「単刀直入に聞こう、アルマンド君」
重厚なマホガニーのデスク越しに、眉間に深い皺を刻んだ白髪の老人が手を組んでいる。
王都至高魔法学園の頂点にして、王国屈指の大魔導師とも称される学園長、マクシミリアン卿だ。
「君がこの数日で起こしたという『奇跡』……他者の魔法を、詠唱も魔力の放射も一切伴わずに消滅させたという噂。あれは事実かね?」
「えーと……」
俺はチラリと、学園長の後ろに立つエレナとレディスを見た。なぜかこの二人は「我らがアッシュ様の証人」として勝手についてきている。
「事実でございます、学園長閣下!」
「アッシュ様の御力は、我々が用いる『魔素の操作』などという低次元なものではありません。現象そのものを司る、まさに神の領域です!」
二人が勝手に答えてしまった。
学園長は重々しく頷き、鋭い眼光を俺に向けた。
「君の魔力測定値は『ゼロ』だった。何度計り直しても、極小の魔素すら検出されなかったことは記録に残っている」
「はい。ですから俺は魔法なんて——」
「つまり、君が使っているのは我々の知る体系とは全く異なるアプローチ……そう、『遺跡の未知の術理』か、あるいは『失われた旧文明の絶魔機構』を直接行使しているということか……!」
学園長の言葉に、俺はあっけに取られた。
……あれ?
この爺さん、ただの勘違いじゃなくて、もっと深読み(しかも妙に的を射た深読み)をしていないか?
「実はな、アルマンド君」
学園長は立ち上がり、窓の外——学園の敷地のさらに奥、深い森の方角を指差した。
「数日前から、学園に隣接する『第4遺跡区域』の防衛システムが異常活性化を起こしているのだ。我々教師陣の解析魔法でも原因が掴めず、内部に強靭な魔獣(恐らくは古代の自律兵器)が這い出してきている」
【System:アラート。対象区域(ローカルグリッド4)において、致命的なセキュリティ違反(ウイルスプロセス)が検出された状態のまま放置されています】
視界の右上に、赤い文字が流れた。
なるほど、学園長の言う通り、あそこにバグ(魔獣)が発生しているのか。
「国の騎士団に討伐を要請することもできるが……下手に力で破壊すれば、あの遺跡そのものが崩落する危険がある。魔素の流出による環境汚染も計り知れん」
学園長は振り返り、真っ直ぐに俺を見た。
「そこで、君の『絶魔』の力だ。君のその力なら、魔素を暴走させることなく、あの自律兵器だけを安全に消滅させられるのではないか?」
「え、俺っすか?」
「危険な役目を任せることにはなるが……もしこれを解決してくれたなら、君の落ちこぼれという不名誉を即座に返上しよう。いや、それどころか『名誉特待生』として卒業証書を今この場で授与し、魔法省への無試験パスすらも用意しよう!」
「無試験パス!?」
俺はガタッと立ち上がった。
魔法省の末端事務官になりたい俺にとって、こんなに魅力的なワードはない。
面倒な試験勉強も面接もすっ飛ばして、確実に平穏な未来が手に入るのだ!
「や、やります! 俺に任せてください!」
「おお……なんという決断の早さ。自らの危険を顧みず、学園のため、ひいては国のために引き受けてくれるというのだな」
学園長が感極まったように目に涙を浮かべる。
違う、俺はただ公務員になりたいだけだ。
「さすがは我らがアッシュ様! このエレナ、どこまでもお供いたします!」
「私など足手まといかもしれませんが、弾除けの肉壁としてお使いください!」
「お前らはついてこなくていい!」
かくして俺は、就職活動の一環(としか思っていないデバッグ作業)のために、学園の教師すら恐れる古代遺跡へと足を踏み入れることになったのだった。
無試験パスのはずが、どう見ても取り調べの空気である。
「単刀直入に聞こう、アルマンド君」
重厚なマホガニーのデスク越しに、眉間に深い皺を刻んだ白髪の老人が手を組んでいる。
王都至高魔法学園の頂点にして、王国屈指の大魔導師とも称される学園長、マクシミリアン卿だ。
「君がこの数日で起こしたという『奇跡』……他者の魔法を、詠唱も魔力の放射も一切伴わずに消滅させたという噂。あれは事実かね?」
「えーと……」
俺はチラリと、学園長の後ろに立つエレナとレディスを見た。なぜかこの二人は「我らがアッシュ様の証人」として勝手についてきている。
「事実でございます、学園長閣下!」
「アッシュ様の御力は、我々が用いる『魔素の操作』などという低次元なものではありません。現象そのものを司る、まさに神の領域です!」
二人が勝手に答えてしまった。
学園長は重々しく頷き、鋭い眼光を俺に向けた。
「君の魔力測定値は『ゼロ』だった。何度計り直しても、極小の魔素すら検出されなかったことは記録に残っている」
「はい。ですから俺は魔法なんて——」
「つまり、君が使っているのは我々の知る体系とは全く異なるアプローチ……そう、『遺跡の未知の術理』か、あるいは『失われた旧文明の絶魔機構』を直接行使しているということか……!」
学園長の言葉に、俺はあっけに取られた。
……あれ?
この爺さん、ただの勘違いじゃなくて、もっと深読み(しかも妙に的を射た深読み)をしていないか?
「実はな、アルマンド君」
学園長は立ち上がり、窓の外——学園の敷地のさらに奥、深い森の方角を指差した。
「数日前から、学園に隣接する『第4遺跡区域』の防衛システムが異常活性化を起こしているのだ。我々教師陣の解析魔法でも原因が掴めず、内部に強靭な魔獣(恐らくは古代の自律兵器)が這い出してきている」
【System:アラート。対象区域(ローカルグリッド4)において、致命的なセキュリティ違反(ウイルスプロセス)が検出された状態のまま放置されています】
視界の右上に、赤い文字が流れた。
なるほど、学園長の言う通り、あそこにバグ(魔獣)が発生しているのか。
「国の騎士団に討伐を要請することもできるが……下手に力で破壊すれば、あの遺跡そのものが崩落する危険がある。魔素の流出による環境汚染も計り知れん」
学園長は振り返り、真っ直ぐに俺を見た。
「そこで、君の『絶魔』の力だ。君のその力なら、魔素を暴走させることなく、あの自律兵器だけを安全に消滅させられるのではないか?」
「え、俺っすか?」
「危険な役目を任せることにはなるが……もしこれを解決してくれたなら、君の落ちこぼれという不名誉を即座に返上しよう。いや、それどころか『名誉特待生』として卒業証書を今この場で授与し、魔法省への無試験パスすらも用意しよう!」
「無試験パス!?」
俺はガタッと立ち上がった。
魔法省の末端事務官になりたい俺にとって、こんなに魅力的なワードはない。
面倒な試験勉強も面接もすっ飛ばして、確実に平穏な未来が手に入るのだ!
「や、やります! 俺に任せてください!」
「おお……なんという決断の早さ。自らの危険を顧みず、学園のため、ひいては国のために引き受けてくれるというのだな」
学園長が感極まったように目に涙を浮かべる。
違う、俺はただ公務員になりたいだけだ。
「さすがは我らがアッシュ様! このエレナ、どこまでもお供いたします!」
「私など足手まといかもしれませんが、弾除けの肉壁としてお使いください!」
「お前らはついてこなくていい!」
かくして俺は、就職活動の一環(としか思っていないデバッグ作業)のために、学園の教師すら恐れる古代遺跡へと足を踏み入れることになったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす
蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。
追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。
しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。
港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。
イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。
犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。
被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。
追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
『婚約もしていないのに婚約破棄ですか? 〜岩塩で殴れば目が覚めます?〜』
しおしお
恋愛
「岩を売る田舎娘と婚約?そんなもの破棄だ!」
――そう言い放ったのは、まだ婚約すら成立していないのに“婚約破棄”を宣言した内陸王国の王太子。
塩は海から来るもの。
白く精製された粉こそ本物。
岩塩など不純物の塊に過ぎない。
そう思い込んだ彼は、ハライト公国公爵令嬢ヴィエリチカを侮辱し、交易を軽んじた。
だが――
王都に届くその“白い粉”は、すべてハライト産の岩塩から精製されたものだった。
供給が止まった瞬間、王国は気づく。
塩は保存であり、兵站であり、治療であり、冬越しの生命線であったことを。
謝罪の席で提示された条件はただ一つ。
民への販売価格は据え置き。
だが国家は十倍で買い取ること。
誇りを守るために契約を受け入れた王太子。
守られたのは民。
削られたのは国家。
やがて赤字は膨らみ、担保は差し出され、王国は静かに編入されていく。
処刑はない。
復讐もない。
あるのは――帰結。
「塩は、穢れを流すためのものです」
笑顔で告げるヴィエリチカと、
王宮衛生管理局へ配属された元王太子。
これは、岩塩を侮った物語の、静かな終着点。
---
もしアルファポリス向けにもう少し軽くする版も欲しければ、作ります。
それとも、
・タグもまとめる?
・もっと煽る版にする?
・文学寄りにする?
どの方向で仕上げますか?
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる