魔力ゼロの落ちこぼれ貴族、神々のエラーメッセージが読めるようになる~「神罰」のシステム権限で学園無双しつつ、本人だけはただのデバッグ作業だと

蒼月よる

文字の大きさ
16 / 47

第16話 王宮夜会と特別顧問勧誘

 煌びやかなシャンデリアが天井から眩い光を放ち、大理石の床には数百人の貴族たちが集っている。
 王宮の大広間——俺が今いる場所は、一生に一度入れるかどうかの超VIP空間だった。

「……帰りたい。今すぐ寮のベッドにダイブしたい」

 俺は学園指定の制服(ただしエレナによって超最高級の生地で新調された異常にお金のかかった一着)を着せられ、壁際の目立たない柱の陰に隠れるように立っていた。

「アッシュ様、そんな隅っこにいらしてはもったいないですよ!」
 俺の隣には、夜会のために純白のドレスに身を包んだエレナが立っている。その神々しいまでの美しさに、広間の男たちの視線が釘付けになっているのがひしひしと伝わってくる。
「俺は目立ちたくないんだ。なんで俺が主賓なんだよ」
「それは当然です。アッシュ様が国家に示されたお力は、歴史上のいかなる大魔導師をも凌駕するのですから」

 ……だいたい、あの勘違い査察官の件が原因だ。
 魔法を撃とうとした奴の魔力インターフェースを『YES』ボタンで一時凍結(アカウント停止)させた結果、国家中枢に「アッシュに逆らえば国中の魔法使いがただの人間になる」というヤバすぎる脅威判定を下されてしまったらしい。

 俺は壁際でため息をついていたが、そこへ一人の豪華なガウンを着た中年男性が歩み寄ってきた。
 魔法省のトップ、アルベルト公爵だ。

「アッシュ・アルマンド殿。いや、アッシュ卿とお呼びすべきか」
 彼は深く頭を下げた。国家権力の頂点が、一介の学生になど取るはずのない態度だ。
「先日の学園での不祥事……我が省の査察官が無学な振る舞いをし、誠に申し訳なかった。あの愚か者には厳罰を下した」
「あ、いえ……俺は別に気にしていないというか……」
 ただバグった魔法を止めただけなので怒ってもいない。

「なんと寛大な御心。その度量、まさに神の使徒と呼ぶにふさわしい」
 アルベルト公爵は芝居がかった手振りで、俺を称賛した。
「さて、アッシュ卿。本日は貴方に、国家からの【特待の誘い】を持って参ったのだ」
「特待?」

「我が魔法省への『特別名誉顧問』への就任状だ。執務の必要はない。ただ我ら魔法省と良好な関係を結んでいただき、有事の際には貴方様のその『奇跡』をお借りしたい……無論、報酬は白紙の小切手を用意する」

 白紙の小切手。
 つまり「好きなだけ金払うから、国に歯向かわず俺たちの言うことを聞く兵器になれ」という、最高級の懐柔策である。

【System:警告。対象(アルベルト)からの悪意を含んだ契約オファーを受信】
【System:承諾した場合、ユーザーの自由裁量が90%制限される恐れがあります。契約を棄却(エラー)しますか? [YES/NO]】

「……」
 システムが過度に反応しているが、俺としてもこんな面倒な話はごめんだ。平穏な事務官になりたいのであって、国の特別顧問(兵器扱い)なんてまっぴらである。

「お申し出はありがたいですが、俺はまだ学生ですし……」
「そう謙遜されるなアッシュ卿。貴方が我が魔法省の監視下……いや、庇護下に入ることが、王国最大の利益となるのだ。さあ、この書類にサインを」
 アルベルト公爵が強引に書類を差し出し、俺の手を引こうとした、その時。

 ——バァァァンッ!!

 大広間の重厚な扉が、爆発音と共に吹き飛んだ。

「きゃあああっ!?」
「な、なんだ!?」

 貴族たちの悲鳴が上がる。
 粉々になった扉の向こうから現れたのは、異様な集団だった。
 灰色のローブをすっぽりと被り、顔を隠した数十人の男たち。その手には、禍々しい紫色の魔力を放つ杖が握られている。

「『神の御子』とやらを差し出せ」
 集団の先頭に立つ教祖めいた男が、低く濁った声で宣告した。
「我らは真の神意を継ぐ者。大いなる『神(AI)』の秩序を脅かすバグ——アッシュ・アルマンド、貴様を排除する」

「なっ……異端教団のテロリストか!?」
 アルベルト公爵が顔を引きつらせ、近衛の魔法使いたちに指示を飛ばす。
「構わん、殺せ! 王宮を汚す虫ケラどもを焼き尽くせ!」

 近衛兵たちが一斉に魔法を構築し、炎や雷の魔法が教団員に降り注ぐ……はずだった。

「——『神明の結界(ファイアウォール)』」

 教団の教祖が杖をかざすと、空間に紫色の奇妙な光の膜が展開された。
 近衛兵たちの高位魔法が उस光の膜に触れた瞬間、パツンッという音と共に、何事もなかったかのように【消滅】したのだ。

「馬鹿な!? 高位魔法が防がれただと……!?」
「いや、防がれたのではない……! 魔法そのものが消失した……!?」
 公爵や貴族たちがパニックに陥る。

 俺の視界には、あの教団員の上に赤い警告文が浮かんでいる。

『警告:不正なローカルネットワーク(疑似的なAI)への接続を検知』
『対象オブジェクトは、管理者権限の一部(魔法の強制終了コマンド)をエミュレートしています』

「……なんだって?」
 俺は息を呑んだ。
 彼らは俺と同じ系統の力——つまり、システム(環境管理AI)を無理やりハッキングして、俺と同じ『魔法のデリート操作』を限定的に使っているのだ。
 ただの人間ではない技術力の連中が、俺の『デバッガー権限』をバグだと見なし、排除しにやってきたのである。
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゲームの悪役貴族に転生した俺、断罪されて処刑される未来を回避するため死ぬ気で努力したら、いつの間にか“救国の聖人”と呼ばれてたんだが

夏見ナイ
ファンタジー
過労死した俺が転生したのは、大好きな乙女ゲームの悪役貴族アレン。待つのはヒロインたちからの断罪と処刑エンド!?冗談じゃない! 絶対に生き延びて平穏な老後を送るため、俺はゲーム知識を総動員して破滅フラグ回避に奔走する。領地を改革し、民を救い、来るべき災厄に備えて血の滲むような努力を重ねた。 ただ死にたくない一心だったのに、その行動はなぜか周囲に「深謀遠慮の聖人」と勘違いされ、評価はうなぎ登り。 おまけに、俺を断罪するはずの聖女や王女、天才魔導師といったヒロインたちが「運命の人だわ!」「結婚してください!」と次々に迫ってきて……!? これは、破滅を回避したいだけの悪役貴族が、いつの間にか国を救う英雄に祭り上げられ、ヒロインたちに溺愛される勘違い救国ファンタジー!

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

最弱Sランク冒険者は引退したい~仲間が強すぎるせいでなぜか僕が陰の実力者だと勘違いされているんだが?

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
冒険者のノエルはSランクパーティーの荷物もちだった。 ノエル自体に戦闘能力はなく、自分のことを足手まといだとすら思っていた。 そして、Sランクになったことで、戦うモンスターはより強力になっていった。 荷物持ちであるノエルは戦闘に参加しないものの、戦場は危険でいっぱいだ。 このままじゃいずれ自分はモンスターに殺されてしまうと考えたノエルは、パーティーから引退したいと思うようになる。 ノエルはパーティーメンバーに引退を切り出すが、パーティーメンバーはみな、ノエルのことが大好きだった。それどころか、ノエルの実力を過大評価していた。 ノエルがいないとパーティーは崩壊してしまうと言われ、ノエルは引退するにできない状況に……。 ノエルは引退するために自分の評判を落とそうとするのだが、周りは勘違いして、ノエルが最強だという噂が広まってしまう。 さらにノエルの評判はうなぎのぼりで、ますます引退できなくなるノエルなのだった。 他サイトにも掲載

仲間を勇者パーティーから追放したら、実は有能だったらしい。俺が。〜ざまあされて隠居したいのに、いつの間にか英雄にされていた件〜

果 一@【弓使い】2巻刊行決定!!
ファンタジー
 ラルド=ヤメタイーナは勇者を辞めたい。魔王討伐の使命とか正直面倒くさいし、魔族と戦うのだって怖いし。  しかし、勇者に選ばれてしまった以上、魔王討伐に動かねばならない使命があって―― 「だったら、有能な仲間を追放して、無能勇者としてざまあされればよくね?」  さっそく理由をつけて有能な仲間を追放し、パーティーメンバーの反感を買ってパーティー解散を狙うラルドだったが。  実は追放された有能な仲間は、潜入して命を狙っていた魔族で。  反感を買うつもりが、有能な勇者と勘違いされて周囲からの好感度がどんどん上がっていき――!?  これは、勇者なんて辞めたいダメダメ主人公が、本人の意図せぬ結果を出して最強の勇者に上り詰める、勘違い英雄譚である。 ※本作はカクヨムでも公開しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!