96 / 222
3章:その出会いはきっと必然
5
しおりを挟むその上のメモをタップして開く。内容は、アデルのお兄さんを襲ったって言う日記だった。詳細については語らないことにしよう。お兄さん、大変だったね……と同情するが、元々はアデルの貞操(?)を狙っていたみたいだから、自業自得とも言えるような……。
さらに読み進めていくと、アデルがこの国に来た頃までたどり着いた。
『本編終了後の世界かよ! 攻略キャラどこ行った!』
え? 本編終了後の世界? アデルがこの国に来た頃にはゲームの内容は終わっていた? ……なんでそんなことがわかるんだ?
『ルードはいるけどあまりにもそっけない。サディアスは想い人がいる、ニコロは行方不明。この国の王は幼すぎ。おかしいな、四十代くらいの人だったハズなのに。キャラはあのゲームと同じなんだけど、あまりにもボクの知っている内容とかけ離れている。どういうこと……?』
…………え、サディアスさんも攻略対象だったの……? そして一番はニコロの名前だよ! もしかしてニコロって……、ここに居るニコロ!? おれが呆然とニコロを見ると、彼は「なにかわかりました?」って聞いてきた。
パッケージにいたっけ? どうしよう、もう覚えていないよ、おれ!
『ルードとニコロ狙いだったんだけどなぁ。ああいうガタイの良い人を快楽でぐちゃぐちゃにするのがボクの目的だし』
どういう目的だよ……。アデル、お前……総受け主人公じゃなかったのか……? 快楽でぐちゃぐちゃになるって挿れる側もあるのかな。
それからまた読み進めると、おれのことも書いてあった。
『黒髪黒目ってこの世界で初めて見た。もしかして異世界転移者だったりして』
正解だよ……。って言うかサディアスさんとニコロの衝撃で吹っ飛んだけど、国王も攻略キャラだったわけ……? どうなっているのこのゲーム……。せめて王子じゃない……? どんどんと日記を読んでいく。
『最近シリウスがうざい!』
うざがられているよ、シリウスさん……。
『一度抱いたからって、ボクを独り占め出来るわけないのに。あー、もう、本当に面倒。いっそ触手でシリウスをぐちゃぐちゃにしてやろうかな。でも……あいつMっぽいし、それはそれで悦びそうでヤダなー。って言うかヒビキって名前、日本人確定っぽいよね』
……これはどっちの意味なんだろう。シリウスさんがアデルを抱いたの? それともアデルがシリウスさんを抱いたの? そしてさりげなくおれの名前が出てるし! うう、気になることが多すぎて読み進めるのが怖い。
『これを読んでいると仮定して、今、ボクはシリウスと一緒にいると思う。ここが八年前の世界ってことは理解してるよね? シリウスの目的がなんなのかわからないけど、一番最後の画面にあるアプリを起動すればボクのところに来るように設定したから、さっさと迎えに来てよ!』
――えっと……。うん……。助けられる側の圧がすごい……。
「読み終えたのか?」
おれがスマホから視線を外してため息を吐くと、ルードがスマホを覗き込んできた。……そう言えば、十五歳のルードとおれの身長って結構近いな……。おれよりちょっと高くなったくらい? それが二十三歳のルードとおれの身長差を考えると、成長期にどんだけ伸びたんだ……羨ましい。
「どうした?」
「あーえーと、おれらの探し人の落とし物、でした。さっさと助けに来いって」
「ふぅん」
それにしても、アデルがどうしてスマホと日本語を……? 異世界転移があるのなら、異世界転生もあるだろうし……。アデルは転生者? だけど、本編終了後の世界って本当にどういうことだろう。じっとふたりを見ると、彼らは同時に首を傾げた。
「どうやら、これを使えば行けるみたいです」
「魔法か?」
「……多分……」
アプリ起動してアデルの元に行くってどういうことなんだか……。アデルって魔法使えるのかな。魔法とスマホを組み合わせたってことなのか……。それにしても、圏外なのはわかるけど、全然電池が減らない気がする……。結構な時間メモアプリを読んでいたのに、充電は満タンのままだ。この世界の謎がまた増えた……。
「行くのか?」
「罠かもしれませんよ」
「罠なら罠でいいよ、聞きたいことあるし」
スマホに視線を戻して、アデルの望み通りに最後の画面まで移動してアプリに触れようとする。それをバシッとおれの手首を掴んで止めたのはニコロだ。
「頼みますから、もう少し慎重になりましょう!?」
すっごく必死の形相でニコロが声を出す。……おれが慎重だった時があっただろうかと一瞬考えてしまった。ニコロの形相に驚いて目を瞬かせると、ルードもこくんとうなずく。
「確かにホシナは後先考えずに行動しているように見える」
「うっ」
否定は出来ない。考えるより先に身体が動いてしまうから……。ふたりの視線から逃げるように顔を背ける。ニコロは大きくため息を吐いた。それから、これからどう動くかを話し合う。手がかりはこれだけだし、起動してみないとわからないし……。だから、おれはアプリを起動すること一択ってことをニコロとルードに伝えた。
「俺はホシナから離れませんからね。一緒に行きます」
「……? ふたりはそういう関係なのか?」
「違います! 恐ろしいことを言わないでください!」
うん? おれとニコロの関係がルードには恋人のように見えたんだろうか。それを即座に否定するニコロ。ルードは「そうか」とだけ呟いて考えるように目を伏せる。
「オレも共に行ったほうが良いか?」
「どうなんでしょう……」
シリウスさんは二十三歳のルードがこの絵画の中に入るのを拒絶しているみたいだけど、十五歳のルードはどうなんだろうか。正直ルードが力を貸してくれるのなら百人力だと思うけど。ニコロが得意なのは接近戦よりも遠距離戦っぽいし、おれは戦闘員としては論外だろうし、接近戦が得意なルードが居てくれるのはありがたいよな……。
「ルードはどうなんです? 一緒に行きたいと思いますか?」
逆に尋ねてみた。ルードはじっとおれとニコロを見つめる。そして、辺りを見渡して肩をすくめた。周りに魔物はいないけど……?
「ちょっと待ってて」
「え? あ、はい」
ルードがおれらの傍から離れて、五分もしないうちに戻って来た。その表情からはなにも読めない。こんなに表情が動かないルードってなんだか新鮮だ……。
「フェンリルに頼んで王都の魔物を蹴散らしてもらうことにした。共に行こう」
「えっ」
正直に言えば意外だった。一緒に行くことをルードを選ぶとは……。ニコロは「そうですか」と答えた。フェンリルが魔物を蹴散らすってどうやるんだろう……と想像してしまって少し和む。いやいや、あの子犬サイズで蹴散らすわけないか。最初に会ったようなデカい姿なら……魔物も……大変だな……とちょっと同情してしまう。
「王都は大丈夫なんですか?」
「団長が居れば何とかなるだろう。鬼だから」
サディアスさん、一体どんな戦い方をしているんだ……? ニコロからは怪物って呼ばれていたし……。あの時、サディアスさんは全然戦っていなかったからなぁ。さっぱり想像できないや。
「手がかりはこれしかないし、もしかしたら罠かもしれませんけど、それでも一緒に来てくれるんですか?」
「――その媒体を壊さないといけないからな」
ああ、おれらがスマホを壊さないかもしれないって考えているのか。なるほど。自分の手で壊したいタイプなのかな? こういうの。目に見えるものだけを信じる的な……? うーん?
「じゃあ、念のためおれの服を掴んでもらっても良いですか?」
ふたりはおれの服を掴む。おれはドキドキしながらアデルの言う通りにアプリを起動した。
一体どんなことがおれらを待っているのか――……。
15
あなたにおすすめの小説
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる