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4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!
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しおりを挟む「……でも、その前に少し話そうか」
「へ?」
てっきりこのままエッチになるかと思ったら、ルードが臀部を撫でまわすのをやめてベッドまでおれを連れて行く。ベッドに座って、一体なにを言い出す気なんだろうとルードを見上げると、ルードは愛おしそうに目元を細めておれを見る。視線にこもった熱に、くらくらするような、感覚。
「これから先、きっとたくさんの幸せなことや苦しいことが待っていると思う。ヒビキにも社交界に出てもらうことになるだろうし、私が支えてもらうこともあると思う。……本当に、ヒビキはそれで良いの?」
「おれが社交界に?」
「だってヒビキは私のパートナーだから」
そっと手を取ってちゅっと手の甲に唇を落とされた。そっか、そうだよな。社交界がどういう場所なのかわからないけれど……。わかるのは、おれが今までルードに守られていたことだけ。あの屋敷と言う箱庭の中で、傷つかないように、迷わないようにと愛されてきたという自信がある。
「おれ、おれは……」
なんて言えば良いのだろう。言葉が出て来ない。ルードの言う通り、きっと色んなことがおれらを待っている。それでも、どうしても、おれはルードの傍に居たい。一緒に居て、楽しい時には笑い合って、悲しい時には一緒に悲しんで、そんな風に、生きていきたい。
「……おれね、一般家庭に産まれたんです。両親が居て、姉が居て……本当は下に妹か弟が欲しかったなぁ……。でもね、えっと、多分、家族仲はすごく良くて、両親からも、姉からも、愛されていることを知っています」
「……うん」
「だから、えっと、ルードのことを本当の意味で理解は出来ないかもしれない。だって、おれは知らないから。想像することしか、出来ないから。だけど、だけど……! ルードは、おれのことを愛してくれているって自信を持って言えます。おれがルードの支えになるのなら、嬉しいと思うし、そうなりたいと思う。家族になろうって言ったのは、ルードのことを好きだからでもあるし、ルードと一緒の家庭なら、幸せだと思ったからで、えっと……」
一度、言葉を出せば次々に紡がれていく。ただ、自分でもなにを言っているのか、なにを伝えたいのか、言葉がごちゃごちゃ過ぎてわかってない。ただ、ただ溢れ出す想いを口にするのが精いっぱいで……。
「――おれは、ルードと一緒に生きていきたい。ルードの居ない未来なんて、考えられないくらいに、――ルードのことを、愛している……から」
ニコロは、おれのことを強いと言った。未来を信じることが出来るのは、強いからだと。でも、でもね、ニコロ。本当に考えられないんだ。おれが生きていく中で、ルードの存在がないなんてこと。多分、ルードが思っているよりもずっと、おれはルードのことを想っているんだと思う。ルードの抱えた寂しさは、きっと大きくておれだけじゃ埋まらないかもしれない。それでも――、それでも、おれは――。
「愛をもらったから、それ以上の愛を返したいと思ったんです、ルードに。あなたが、おれを愛してくれたから」
そりゃあ出逢って初日であんなことをしたりしたけど、それでも、ルードの手はいつだって優しかった。その後、おれがルードのことを待たせていたと知って、驚いた。驚いたけど、嬉しかった。ルードがずっとおれのことを待っていてくれたのが。
「だから――おれのぜんぶ、ルードにあげます。心も、躰も、ルードのものだから」
「……私は果報者だな。ヒビキに――愛する人に、こんなに愛されて」
そっと、ルードがおれの目元を擦った。いつの間にか、涙が流れていたらしい。そして、そのまま、ルードが言葉を紡ぐ。
「……誰かを、愛することはないと思っていた。ヒビキも知っただろう? 私は、メルクーシン家ではあのような扱いだったから。私を不憫に思ったのか、じいやたちは私に良くしてくれたが……。思えば、じいやはあの頃からメルクーシン家のことをなにも言わなくなったな……」
ルードがぽつりぽつりと自分の過去を振り返るように話す。おれはただ、それを黙って聞いていた。ルードはふっと目を伏せると、おれの目元を擦るのをやめて、また淡々と話し始めた。
「ヒビキと最初に逢った時、私に対して敵対心を抱かず、さらに好意的な態度を取られて戸惑ったのを覚えている。周りは大体、私を恐れたからな。だが、その好意がとても嬉しかったし、肌を重ねた時にこんなにも心地良いものなのかと思った。……多分、ヒビキ以外ではダメだった。ヒビキだからこそ、私は、身を預けることが出来た。……だからこそ、十五歳のヒビキと出逢って、真っ白な躰だということに驚いた」
年齢を聞いた時の反応を思い出して、ひっそりと納得する。
「それでも、触れれば触れるだけ、もっとヒビキを感じたいと思うようになった。気付けば、私はヒビキに溺れていた。これが愛なのだろうかと考えた。確かに、ヒビキと出逢う前と後で私の考えは色々変わったと思う。ただ、八年の間でこれは本当に愛なのだろうかと考えることも多かった。――ヒビキに触れることで、そんな考えも吹き飛んでいった。触れる肌の感触、感じた表情、蕩けるような声。もっと見たい、もっと感じさせたい、そうすれば、私だけを――見てくれるのではないか、と」
ルードはこつんとおれの額と自分の額を合わせた。
「……ヒビキはいつだって、等身大の私を見てくれたな。だから、私も段々と素が出るようになったのだと思う。恐らく、こっちが本来の私の姿なのだ。ヒビキが、私を『私ルード』にしてくれた。――ありがとう」
「――……ッ!」
お礼を言われることを、おれはしていない。口を開こうとすると、そっとルードの人差し指がおれの唇に触れる。
「ヒビキを愛することが、私にとってどれだけの幸福なのか……。多分、ヒビキにはわからないと思う。私は、それで良いと思うんだ。完全に、私を理解しなくて良い。ただ、ありのままの私を受け止めてくれるヒビキに、私は救われているのだから」
「ルード……」
おれらの中にあるのは、きっと『恋心』や『愛情』よりも深いもので、一言で言える感情ではないのだろう。それでも、良いのだ。ルードがおれのことを愛してくれて、おれもルードを愛していると、胸を張って言えるのだから。
「一緒に生きよう、ヒビキ。これから先の未来、ずっと一緒に」
「……はい。おれも、ルードとずっと一緒に生きていきたいです」
ルードはおれの手を取ると、今度は手のひらに唇を押し付けた。――もしかして、この話をするためにおれをここに連れてきてくれたのかな。そう思ってルードを見ると、すごく優しい顔をしておれを見た。――好き、と愛しい、が混ざったような、そんな感情が溢れてくる、表情。
「……ふたりきりでって、覚えていてくれたんですね」
「ヒビキにあそこまでされたら、私も負けられないしね」
メルクーシン家で、おれはふたりきりの時にプロポーズして欲しいと言った。ルードは陛下たちの前でプロポーズしてくれたけど、きっと気に掛けてくれていたんだよね。だから、おれだけに告げるためにここに連れてきてくれたんだと思う。屋敷の中は、使用人さんたちで完全なふたりきりと言うわけではないから。
この完璧に密閉された部屋で、ルードはまたおれにプロポーズしてくれたんだ。そう思うと、思わず顔がにやけてしまう。こんなにルードを好きで大丈夫なんだろうか、おれ。「ヒビキ?」とルードがおれの顔を覗き込む。真っ赤になっている気がして、ルードの目から隠れるように俯くと、ルードが「かわいい」と呟くのが聞こえた。
……フェリクス陛下たちの前でプロポーズしたのって、もしかして、おれと張り合ったんだろうか。……なんてね。でも、もしそうだとしたなら、ルードってかわいいところがあるよね。
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