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4章:十八禁BLゲームの中に迷い込んだら、最愛の人が出来ました!
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しおりを挟む「とりあえず、おれが考えているのはこんな感じかなぁ」
出来上がった絵を見てニコロは「じゃあ、それに合わせて雑誌を読んでいきましょう」と微笑んだ。おれはこくりとうなずいてぱらぱらと雑誌をめくった。そして、ニコロと一緒にこういうのが良いとか、ああいうのが便利だとか語り合いながら雑誌を眺めた。
「気に入るものがあると良いですね」
「うん。楽しみだなぁ~」
自分が選んだもので作り上げる部屋ってどんな感じかなぁと、今からワクワクしている。ニコロはそんなおれの様子を見て、微笑ましそうにしていた。
お茶を飲みながらニコロと話す。ニコロも昔は自分の部屋に憧れを抱いていたみたいだ。だから、ルードの屋敷に来て初めてひとり部屋をもらった時は嬉しかったらしい。足のことを考えると複雑だったみたいだけど。
「あれ、でもリハビリするのに大変だったんじゃない?」
「……家令がスパルタだったんですよ……」
「……ああ、なるほど……」
「とはいえ、完治するまでは面倒見てもらってましたが。その後のリハビリがスパルタでした……」
ふっと遠い目をするニコロに、どれだけのスパルタ具合だったのかとちょっと怖くなった。でも、そのおかげで歩けるようにはなったんですけどね、と肩をすくめるニコロを見て、じいやさんに感謝しているような感じがした。
「……じいやさんも謎の人だなぁ」
「俺にとっても謎の人ですよ」
じいやさん、自分のことあまり話さないもんな。……いや、もしかしたら聞かないからかもしれないけど。
「まぁ、じいやさんも色々あったろうしね……」
「そうですね。あ、これなんかはどうですか?」
「わ、シンプル。うん、こういうのも好きだよ」
ニコロが見せて来たのはすっごくシンプルな作りのクローゼットだった。そんなに何週間もはいないだろうし、一週間分くらいの服がしまえたらそれで良いし、余ったところに他の収納グッズを置いておけば……。
「そう言えば、ニコロはどこで服を買っているの?」
「商店街の服屋で。色んなの売ってますよ」
「そうなんだ?」
この世界に来てから服屋には行ったことないな。シャノンさんのお店は手芸屋だし、メイベルさんのお店は布屋だし……。行ったことのないお店ってもしかして結構あるのでは……?
「……ニコロはお店巡りみたいなことした?」
「店巡り? まぁ、一通りは……。なにか欲しいものがあるんですか?」
「んーと、特に思いつかないんだけど、決まったところしか行ってないなぁって」
「行動範囲が決まってますからね、ヒビキさま」
……確かに。屋敷の中でさえ行くところは決まっている。だって他の場所行って良いのかわからないし……。とりあえず、許されているであろう範囲を歩いている。厨房とか洗濯とか掃除とかはしなくて良い、むしろ仕事を取らないでくれ的なことも言われてしまったし……。まともに家事をしたのってあの隠れ家に一週間住んでいた時くらい?
「あれ、ニコロは護衛になった後の仕事ってどうなっているの?」
「ヒビキさまの予定次第なので、手伝える時に手伝う感じですかね」
「なるほど?」
割と自由な職場だよな、ルードの屋敷……。みんなも仕事というか自分の家のメンテナンスって感じで掃除や洗濯をしているような気がする……。
「基本的に隊長の屋敷ってお客さんも来ませんでしたし……。だからこそ、ヒビキさまを隊長が連れて来た時みんな驚いていたんですけど……」
「……そうだったんだ……」
確かに驚かれていたような、記憶が……。おれがルードの屋敷に来た時を思い出していると、ニコロは懐かしそうに笑っていた。
「まぁ、でも、ヒビキさまが外の世界に目を向けるのは、良いことだと思いますよ」
「そう?」
「ええ。その調子でどんどん外に目を向けて、隊長も引っ張りあげていってください。ヒビキさまと一緒なら、あの人も行くでしょ」
……ニコロって本当に面倒見が良いなぁ。図書館の本も全部読んだくらいだから、ニコロが三年前に雇われた時、ルードがあまり外に出なかったってことなのかな。帰ったら本を読んで寝る生活だったのかもしれない。
「そうやって、色々知っていけば良いと思いますよ」
「……うん、そうだね。これからは、もっとルードと出掛けようかな」
「そうしてください。隊長、仕事以外で外に出ること稀だったんですから。買い物も仕事帰りにしちゃうから、休日のほとんど本を読むか刺繍をしている姿しか思い出せないや」
「ルードが刺繍しているところ見たことあるんだ?」
「ありますよ。無表情で作っていたので、声掛けるの躊躇いました……」
想像してちょっとだけ笑ってしまった。刺繍……。あのシャノンさんが考えた図案、本当に家紋になるのかな。なるのなら、おれも刺繍できるようになりたいな……。ハンカチや、ルードの服に刺繍してみたい。でも、結構……いやかなり難しそうな感じがしたから、練習しないとなあ……。うーん。
そんなことを考えていると、いきなり鈴が震えた。びっくりしたけれど、鈴を取り出して魔力を込める。すると、ルードの声が聞こえた。
『ヒビキ、ちょっと良いかい?』
「ルード、どうしたんですか?」
『ちょっと城のほうまで来てくれないか。ニコロも居るね?』
「いますよー、隊長。聖騎士団のほうですか?」
『ああ。悪いが、ヒビキの力を借りたい。頼む』
「わ、わかりました、すぐに向かいます!」
ルードが、待っている、と口にすると鈴はなにも発しなくなった。おれとニコロは顔を見合わせて慌てて城のほうへと向かおうとして――その前に、寝室に戻ってショートパンツを穿いた。危ない。
ニコロと一緒に屋敷の外へ。途中で使用人さんたちに「ちょっと出掛けて来るね!」と声を掛けると、みんな笑顔で「行ってらっしゃいませ」と見送ってくれた。お城の近くで良かった……!
バタバタと走ってお城に向かう。通りすがりの人が何事かとこっちを見ていたけど、気にしている余裕はなかった。なにがあったんだろうと不安に思いながらも聖騎士団の元へと向かい――……。ルードの姿を見つけて、「ルード!」と声を掛けると彼はおれらに気
付くと、ちょっと眉を下げて困ったような表情を浮かべていた。
「なにがあったんですか……?」
「……新人訓練だったんだが……、その、少々やり過ぎてしまったようだ」
「なにこの死屍累々……」
「殺してはいない」
ぽそりと呟くニコロに、おれは思わず首を縦に振りそうになった。新人さんたちが積み重なっている……。
「弱すぎた……」
「そりゃ最初から強かったら、訓練なんて要らないでしょうが……」
呆れたように言いつつも、ニコロが「大丈夫か?」と声を掛けに行っていた。あ、もしかしてこれがフェリクス陛下の言っていたこと?
「重傷は負わせていないと思うが、治癒魔法をお願いできないだろうか……」
「別に良いですけれど……、手加減しなかったんですね……」
「……しようかとも思ったが、それでは訓練にならないかと思ってな。いや、全力は出していないが……」
新人さんたち大変だったな……。と思いつつ、おれは彼らに躰を向けて祈るように手を組み、精霊さんにお願いした。彼らの傷を癒してください、と。精霊さんは快く引き受けてくれたみたいで、ぱぁぁぁああっと一瞬辺りが明るくなった。そして、次の瞬間には消えて行く。ぴくりと新人さんたちの躰が動き、「あれ?」って起き上がり――ルードの顔を見て固まった。さぁ、と青ざめている人たちもいる。
「――えーっと、あの人、あれで結構慌てていたから、嫌わないでやってくれな。実際の魔物なんて、気を失った瞬間や戦意を失った瞬間に襲い掛かって来るんだから。それに比べれば無理矢理起こさないんだから、優しいほうだぞ」
「嫌われるのには慣れているが……」
「慣れないでください、そんなことに!」
というか、ルードの場合嫌われるというか恐れられている感じがする。おれの言葉にルードが戸惑ったように視線を揺らしたが、そのことに気付いた新人さんってどのくらい居るだろうか。
「ともかく、全員傷は回復したな? 今日の訓練は以上とするが、各々今日のノルマをこなすように」
ルードがそう言うと新人さんたちは「えー……」と悲し気にユニゾンした。
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